更新日: 2024.06.29 働き方
年金を「月5万円」ほど受給し、会社員の夫の扶養に入っています。生活費のためパートを始めたいのですが、収入がいくらまでなら「扶養のまま」でいられるでしょうか?
本記事では、60歳以上の妻が夫の被扶養者となる収入の範囲について説明します。
扶養範囲の収入は?
妻が夫(会社員)の社会保険の被扶養者になれるのは、収入がいくらまでの場合でしょうか。
妻が60歳以上の場合
扶養される人(妻)が60歳以上の場合は、次の両方を満たしたときに、被扶養者として認められます。
●妻の年収が180万円未満
●妻の年収が夫の年収の2分の1未満
妻の年収が夫の年収の2分の1未満でない場合は、原則として被扶養者にはなれません。しかし、妻の年収が180万円未満で、かつ夫の年収を上回らず、主に夫の収入で生活しているときは、被扶養者と認められる場合があります。
「180万円」の範囲は?
妻の「収入」にはパート収入だけでなく、失業給付など社会保険の給付金や年金なども含まれます。不動産所得や配当所得なども、収入にカウントされます。
また、この年代になると、民間保険の個人年金を受け取る人もいるでしょう。個人年金は、一時金で受け取る場合は「180万円」にカウントされませんが、継続的に年金で受け取る場合は、扶養を判定する際の収入に加算されます。
年金をもらいながらパートで働くと
月6万円の年金を受給しながら、パートで働く場合を考えてみましょう。
パート収入はいくらまで?
年金が月5万円ということは、1年で60万円です。扶養の範囲である180万円から年金収入を差し引くと120万円ですから、パート収入やほかの収入が年120万円未満の場合は、社会保険の扶養のままでいられることになります。
なお、パート収入には通勤手当や残業手当、賞与なども含まれます。毎月の時給だけではないことに、注意しましょう。
「年収180万円」はいつからいつまで
被扶養者の年収は「そのときから将来に向かっての1年間」で考えます。
そのため、パートを始めた当初は「年収180万円」の範囲に収まっていても、年の途中で雇用契約内容が変わり、時給や勤務時間が大幅に増えると、それ以降は扶養から外れることもあります。
また、現在受給している年金が特別支給の老齢厚生年金の場合は、65歳から老齢基礎年金が加わって収入が増えるため、被扶養者でなくなることもあるでしょう。
パート収入が月8万8000円以上になると
また次のすべてに当てはまるときは、妻が自分で社会保険に加入しなければなりません。
●従業員数101人以上(2024年10月からは51人以上)の会社で働いている
●1週間の所定労働時間が20時間以上
●所定労働時間の収入が月8万8000円以上
●雇用契約期間が2ヶ月以上
●学生でないこと
なお、従業員数が101人未満(2024年10月からは51人未満)の会社で働く場合でも、所定労働時間が一定以上の場合は、自分で社会保険に加入する必要があります。
まとめ
60歳以上の人が社会保険の扶養に入るには、年収を180万円未満に抑えなければなりません。この180万円には、パート収入(給与収入)や年金収入のほか、失業給付などの給付金、不動産所得や事業所得なども算入されます。なお、通勤手当や残業手当、賞与などは「180万円」にはカウントされますが「8万8000円」にはカウントされません。ちょっとややこしいですね。
出典
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士