更新日: 2024.06.19 働き方

4月入社の新卒社員が、1ヶ月で「退職代行」を利用して退職しました。私は「最低3年は働くべき」という考えなのですが、今の時代もう古いのでしょうか…?

4月入社の新卒社員が、1ヶ月で「退職代行」を利用して退職しました。私は「最低3年は働くべき」という考えなのですが、今の時代もう古いのでしょうか…?
新年度スタート後から利用件数が増えて話題となっている退職代行サービス。「会社で退職代行を使って辞めた新入社員がいると聞いた」「代行サービスを使ってすぐに辞めるなんてありえない」と感じている人もいるでしょう。
 
本記事では、退職代行を使って職場を辞める人の理由や早期退職を防ぐ対策を紹介します。採用や人材育成に力を入れたい人はぜひご覧ください。

「最低3年は働け」は時代遅れ?

かつては「最低3年は同じ会社で働いたほうがよい」とも言われていました。仕事の内容を覚え、社内での自分の役割が明確になるまでには、それくらいの時間がかかるためです。
 
しかし、現代では社員のメンタルヘルスへの影響やスキルアップといった面が重視され、3年を待たずして退職する人も多くいます。
 
平成30年版子供・若者白書でも、転職について、自分の能力や適性に合わない職場であっても「転職はすべきでない」「できる限り転職しないほうがよい」と回答したのは、全体の17.3%にとどまりました。残業やパワハラが恒常化したブラックな職場から離れることや、よりスキルを生かせる場所へ移ることは、決して悪いことではありません。
 
また、企業も新卒から3年程度で退職した人をさす「第二新卒」を積極的に採用しています。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によれば、2005年の時点ですでに調査対象の約 6 割の企業が正規従業員の採用の際に第二新卒を採用対象にし、うち9割近くの企業が第二新卒の採用経験があると回答しています。
 
また、株式会社マイナビの中途採用業務の実績調査新卒によれば、第二新卒の採用基準としてポテンシャルや意欲を重視する企業が多くなっています。
 
かつては仕事を覚えるために「最低3年働け」と言われてきました。しかし、ブラック企業に厳しい目線が注がれ、スキル重視の採用なども増えたことで「最低3年働く」ことにこだわる必要性はなくなってきています。型にはまらないキャリアを歩めるようになってきたといえるでしょう。
 

増えている若者の「退職代行」利用

若手社員が退職する際によく使われるようになったのが「退職代行」です。退職代行は本人に代わって退職の意思を伝えるサービスです。若者の退職代行の需要は増えており、日本労働産業ユニオンの調査では退職代行利用者4963人のうち、2951人が20代と若者の利用が多くなっています。
 
退職代行は連絡を業者に一任することでほぼ確実に退職できます。また上司から直接の引き留めやコミュニケーションがないため、精神的に疲れることがありません。「ハラスメントを受けていて退職を言い出せない」「退職を切り出したくても上司が忙しそうで取り合ってもらえない」といった悩みを抱える人には最適なサービスです。
 
一方で、基本的には同僚や上司に何も言わずに辞めることになります。そのため「印象が悪くなった」「残った仕事はどうするんだ」というように、よく思われない可能性があります。また、代行を依頼するには料金を支払わなければなりません。「お金を払ってでも今の職場を辞めたい」という人でなければ、使うのをためらう場合もあるでしょう。
 

企業が早期退職者を減らすには?

さまざまな会社が退職代行サービスを運営するようになり「退職代行会社から電話を受けた」「せっかく採用したのにすぐ辞められてしまった」といった経験をしたことがある企業や上司は増えているでしょう。どのようにしたら早期の退職者を減らし、社員の退職代行利用を防げるのでしょうか?
 
企業がすべき対策は多岐にわたりますが、中でも重要視したいのは「誰もが話しやすい職場環境づくり」です。
 
早期退職の主要な原因として挙げられるのが「労働環境」や「人間関係」です。
 
株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査では、若手社員の早期退職理由として「労働環境・条件がよくない」「職場の人間関係がよくない・合わない」といった項目が上位を占めました。職場での居心地や同僚との相性がよくなければ、どれだけ優秀な人材であっても短期間で精神的に追い込まれてしまいます。
 
社員を管理する立場の人は「日頃から上司とコミュニケーションの機会をとる」「社員の要望をできる限り反映させながら上手に調整する」といった工夫が重要です。社員の希望すべてを反映させるのは難しいため、人事や社員当人とよく話し合いながら良好な職場環境をつくっていきましょう。
 
一方、社員側も「どうせ話しても理解してくれない」「話をするのすら面倒」と考えていては、いつまでも理想の職場には出会えません。居心地のよい職場をつくるには社員から上司へ要望や意見を伝えることが大切です。
 

「円満退社」できる工夫づくりが重要

早期退職は新卒社員と企業・現社員との間にギャップが生まれることで起きる可能性が高いといえます。退職代行を使って辞めた社員に「なぜあいさつに来ない? 」「不信感しかない」と嘆いても解決にはなりません。
 
若者が直接退職をいい出せないのには「ひどく失望した」「引き留めや叱責など面倒なことになりそう」といった明確な理由があることも考えられます。これらが原因で若者が精神疾患などになってしまえば、彼らの今後の人生にも影響するでしょう。
 
「ブラック企業」の烙印(らくいん)を押されてしまっては、企業にとって大きなイメージダウンです。固定観念にとらわれず、企業側、退職者側がお互いわだかまりなく退社できるよう工夫をしたり考え方をシフトしたりする必要があるでしょう。
 

出典

内閣府 平成30年版子供・若者白書
独立行政法人労働政策研究・研修機構 第二新卒者の採用実態調査
株式会社マイナビ 中途採用業務の実績調査
日本労働産業ユニオン 退職代行サービスの利用実態についてのアンケート調査結果(PR TIMES)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 新人・若手の早期離職に関する実態調査
 
執筆者:石上ユウキ
FP2級、AFP

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