更新日: 2024.06.05 働き方

3月~5月に残業すると「社会保険料が上がって損」と聞きました。月に「2万円分」残業したら、手取りにどれだけ影響が出るでしょうか…?

3月~5月に残業すると「社会保険料が上がって損」と聞きました。月に「2万円分」残業したら、手取りにどれだけ影響が出るでしょうか…?
「3月~5月は残業しないほうがいい」とよく言われますが、理由を聞かれるとうまく答えられない人もいるのではないでしょうか? 3月~5月に残業をすると手取りが減るのは事実で、原因は社会保険料の決まり方にあります。
 
本記事では3月~5月に残業してしまうと、手取りが減ってしまう理由と影響を詳しく解説し、残業しないほうがお得なのかを考えていきます。

社会保険料は4月~6月の給料の平均額で決まる

厚生年金保険料、健康保険料と介護保険料などの社会保険料の金額は毎月変動するのではなく、4月~6月の給料の平均支給額に基づいて決定されます。これを標準報酬月額の定時決定といい、標準報酬月額に保険料率をかけた金額を、その年の9月から翌年8月までの1年間支払う仕組みです。
 
東京都協会けんぽに加入している35歳の会社員で、4月~6月の平均給与支給額が24万5000円で、残業がなかった場合の社会保険料を考えます。
 
まず東京都協会けんぽの保険料額表(図表1)を使って標準報酬月額を求めましょう。4月~6月の平均給与の24万5000円は図表1の23万円以上~25万円未満に当たり、標準報酬月額は24万円であることが分かります。
 
図表1

図表1

全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
 
次に標準報酬月額24万円の行を右に見て保険料を確認していきましょう。この表には「全額」と「折半」がありますが、会社員の場合は会社と折半して社会保険料を支払うので、見るべきは「折半」の数字です。
 
支払うべき社会保険料は、健康保険料1万1976円、厚生年金保険料2万1960円の合計3万3936円であることが分かります。なお、介護保険に加入するのは40歳以上であるため、今回は介護保健第2号被保険者に該当しない場合と見なします。
 
標準報酬月額を決定する支給額には、基本給だけではなく、通勤手当、役職手当や残業手当といった各種手当も含みます。残業代に関しては3月に残業した分を4月分の給与として支払う会社が多いので、3月~5月に残業しすぎると、4月~6月に支給される残業代が多くなり、9月からの1年間は多くの社会保険料が高くなってしまうのです。
 

3月~5月まで2万円ずつ残業すると社会保険料はいくら増える?

では、具体的に3月~5月に残業をして、月に平均2万円残業代をもらった場合を考えましょう。4月~6月の給与平均支給額は26万5000円となるため、標準報酬月額は26万円となります。支払う保険料は健康保険分1万2974円、厚生年金分2万3790円の合計3万6764円です。
 
残業代がないときの月々の合計金額3万3936円と比較すると月々2828円、年間3万3936円負担が増えてしまいます。
 
3ヶ月で6万円の残業代がもらえる時間だけ余計に働いたにもかかわらず、3万円以上が社会保険料で消えてしまうと考えると、少し損をした気分になるかもしれません。
 

社会保険料を多く支払うことのメリットは?

保険料の支払いが増えることは、必ずしもデメリットばかりではありません。例えば、厚生年金保険料を多く支払うことにより、将来もらえる年金の一種である「老齢厚生年金」の受給額を増やせます。
 
そのほか支払う社会保険料の金額が多いほど、病気で仕事ができないときにもらえる傷病手当金の金額が増加します。保険料を多く払うことで、むしろ得するケースがあることも知っておきましょう。
 

3月~5月の残業で手取りが減るのは事実だが悪いことばかりではない

3月~5月に残業しないほうがいいとされる理由は、4~6月の給与支給額が増加し、それを元に計算される9月から翌年8月までの社会保険料が増えてしまうことにあります。短期的な視点で見れば社会保険料の金額を増やさないよう、3月~5月は残業を避けたほうがいいといえるでしょう。
 
ただし、社会保険料の支払いが増えることは必ずしも悪いことではありません。年金額が増えて老後の家計が助かるかもしれませんし、病気で傷病手当をもらうなど、いざというときに得られるメリットは決して小さくないはずです。
 
したがって無理に残業代の調整をするのではなく、忙しいときはしっかり働く、忙しくないときは無駄な残業をせずプライベートを充実させるほうが、バランスのとれた生活を送れるでしょう。
 

出典

全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
 
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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