更新日: 2024.03.23 貯金

最終的に、「65歳まで」にいくら貯蓄があるのが安泰?「単身世帯」と「夫婦のみの世帯」で比較

最終的に、「65歳まで」にいくら貯蓄があるのが安泰?「単身世帯」と「夫婦のみの世帯」で比較
「老後資金は定年退職までに何円必要だ」という問題は、古今東西さまざまな金額で論じられることがあります。しかし、その金額は状況によって異なります。特に「単身であるか」「夫婦であるか」によって、大きく異なるようです。
 
そこで、最終的に定年時にどれくらいの貯蓄があれば安泰といえるのか、単身世帯と夫婦のみの世帯とで比較してみました。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

単身世帯はどれくらい貯蓄があれば安心?

「安泰」とひと口にいっても、その定義は個人個人によって異なるでしょう。「統計結果の平均と同じぐらいの貯蓄額があれば安泰」という方も、逆に「平均の2倍、3倍の額がなければ安泰とはいえない」と感じる方もいるかもしれません。
 
そこで「安泰」とは、統計上必要な生活費と、男女で比較したときに長いといわれている女性の平均余命を基にして「平均的な余命で老後の生活をするのに必要な額を賄えるだけの金額」と定義します。
 
総務省統計局の「家計調査(令和4年)」によれば、65歳以上の単身無職世帯において、生活費に毎月2万580円もの赤字が生じています。また、厚生労働省の「令和4年簡易生命表の概況」によれば、令和4年度の女性の平均余命はおよそ87歳です。65歳から「老後の生活」が始まるとすると、22年間続きます。
 
すると、老後の生活で不足する生活費の合計額は、およそ543万円となります。そのため、65歳で定年退職すると考えると、統計上は年金収入などに加えて543万円あれば最低限「安泰」だといえそうです。
 

夫婦のみの世帯の場合は? 単身世帯と比較すると、どれくらい違いが出る?

単身世帯の場合のように、夫婦のみの世帯についてもどうなるか考えてみましょう。
 
同じく総務省統計局の「家計調査(令和4年)」によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯には、毎月2万2270円もの不足が生じています。仮に老後の生活が22年間続くと考えると、総額はおよそ588万円となります。そのため、夫婦のみの世帯の場合は、少なくとも588万円あれば、統計上は「安泰」といえそうです。
 
単身世帯の場合は不足額を補うのに必要な金額が543万円だったことと比較すると、夫婦のみの世帯との差は45万円程度であり、さほど大きな差はついていません。
 
その理由はさまざまなものが考えられますが、主に収入が夫婦それぞれに発生することが挙げられます。夫婦それぞれが年金や就労による収入を得られることから、支出が増えてもそれを2人の収入で多少なりとも賄えている、ということです。
 
また、夫婦で生活したからといって、生活にかかるお金など全ての支出が2倍になるわけでもありません。そういった理由から統計上は、夫婦のみの世帯と単身者世帯とでは、年金などの不足を補うための金額に意外と差がつかないのです。
 

自分にとっての「安泰」は何円?

ここまで見てきた金額は、あくまでも統計上の金額です。実際には世帯ごとのライフスタイルによって、「安泰な生活」に必要な貯蓄額は大きく異なることが想定されます。
 
参考までに、公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、老後の最低日常生活費の平均額は23万2000円となっています。全体の27.5%が「20万円から25万円未満」と、おおむね統計と同程度の金額を上げていますが、次いで多いのが「30万円から40万円未満」が必要であるという層で、全体の18.8%です。これは先の統計からは大きく外れています。
 
こういったデータの存在も踏まえると、定年退職時にいくらあれば「安泰」といえるのかは世帯によって大きく異なるため、自身の世帯に合わせて考えていくことが大切であると分かります。
 

まとめ

定年退職時に貯蓄がいくらあれば「安泰」といえるかは、世帯によって異なります。統計上のデータを参考にする限り、夫婦のみの世帯で588万円、単身者世帯で543万円あれば、「安泰」といえそうですが、必ずしもそうとは限りません。
 
詳しく知りたいときは、統計を参考にしつつ、実際の世帯の様子にそれを当てはめ、考えていくことをおすすめします。
 

出典

公益財団法人生命保険文化センター 2022(令和4)年度 生活保障に関する調査
総務省統計局 2022年(令和4年)家計の概要
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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