更新日: 2024.03.17 働き方
2024年春に適用される「時間外労働の上限規制」ってどのような規制?
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
特定行政書士、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士相談センターの相談員として、相続等の相談業務や会社設立、許認可申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
時間外労働の上限とは
まず、労働時間は、労働基準法で1日8時間、週40時間までという原則が決められています。これを法定労働時間といいます。よって、これを超えて働くことを時間外労働(法定時間外労働)といい、この時間外労働の上限を超えて労働者を働かせる場合は、表1の手続きが必要となります。
【表1】
また、これまで適用猶予の規制における例外の事業や業務は下記のとおりで、2024年4月以降の猶予後の取り扱いと比較すると表2のようになります。
【表2】
そのほかの注意点は?
最近は副業を認めている企業も多くなっています。副業の労働時間をどう算定するかという問題ですが、その場合は、両方の事業場の労働時間を通算することと定められています(労働基準法第38条)。
例えば、副業あるいはダブルワークで同じ月の中でA社とB社の2社で勤務した場合には、時間外労働と休日労働の合計で、単月で100時間未満、複数月平均で80時間以内となるように、労働時間を把握しておく必要があります。
また、出向している場合、出向元と出向先のどちらの36協定が適用されるかという問題も発生してきます。これに関しては、出向元である使用者との雇用関係を維持しつつも、出向先との間にも雇用関係を発生させる「在籍出向」のケースであっても、出向者は一般的に出向先の指揮命令を受け、かつ出向先で就業することとなります。
よって、特段の取り決めがない限り、出向者には出向先の36協定が適用されます。また、副業やダブルワークの場合と同様に、同月中に出向元と出向先の両社に勤務する労働者は、両社の労働時間を通算して上限時間内となるようにする必要があります。
雇用者も被雇用者だけでなく発注者等も考えるべき問題です
労働時間の問題は労使だけで解決できるとは限りません。発注者等の無理難題によってやむを得ず長時間労働になっているケースも多々あります。国民全員が相手の立場を考えることによって、この問題が解決する部分は大きいのではないでしょうか。
出典
厚生労働省 時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務
厚生労働省 労働基準法
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表