更新日: 2024.02.28 働き方

半年後に転職することになりましたが、「有給休暇」も「引き継ぎ」も残っています! 引き継ぎを行うと有給休暇を使い切れないのですが、労働者の権利なので優先してよいでしょうか?

半年後に転職することになりましたが、「有給休暇」も「引き継ぎ」も残っています! 引き継ぎを行うと有給休暇を使い切れないのですが、労働者の権利なので優先してよいでしょうか?
半年後の退職が決まったとき、まだ有給休暇が残っていれば退職日までに消化しておきたいと考えるのが一般的です。とはいえ、自分の業務を後任に引き継ぐのも退職を控えた人の役割でもあります。引き継ぎもあって消化すべき有給休暇も残っている場合、有給休暇を優先しても問題はないのでしょうか。
 
今回は、転職で辞める際に引き継ぎより有給休暇の取得を優先してもよいかどうかについて解説していきます。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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有給休暇の取得は労働者の権利

タイトルにもあるように、有給休暇を取得するのは労働者の権利です。そして、使用者は労働者に有給休暇を取らせるという義務を負っています。そのため、退職が決まった時点で残っている有給休暇があれば、退職日までに消化するのは一般的なことです。
 
有給休暇は、入社してから半年経過した時点で週所定労働日数に応じた日数が付与されます。労働者のすべてが対象で、パート勤務でも正社員でも平等に付与されます。
 
有給休暇をどのような理由で使うかは、原則として労働者の自由です。また、有給休暇を取った労働者に対して不利益な扱いをすることは労働基準法附則第136条によって禁じられています。つまり、退職を前に有給休暇を消化しても使用者は反対できません。今回のように引き継ぎがある場合でも、そのことを理由に有給休暇を使わせないことは原則としてできません。
 

就業規則で規定されている場合はどうなるのか?

就業規則には、必ず記載しておかなければならない事項があります。退職に関する事項もその一つです。退職時の業務引き継ぎについては、就業規則でどのように決められているかがポイントになります。ただし、有給休暇を取得せずに引き継ぎを優先させるような内容だった場合、それは無効になる可能性が高いでしょう。
 
なぜなら、労働基準法第92条によって「就業規則は、法令や労働協約に反してはならない」と定められているためです。有給休暇を使わせないこと自体が違法であり、取得することで退職日を伸ばしたり退職させなかったりすることがあれば不利益な扱いに該当します。
 
過去には、IT会社が元社員に対して「引き継ぎをしなかったのは不当行為」として1270万円の賠償請求をした事例があります。ところが、横浜地方裁判所が平29年3月30日に出したのは「賠償は無効である」という判決でした。
 

相談しながらうまく調整することも必要

有給休暇を取得するのは、労働者の権利です。退職日までに残った有給休暇を消化するのは一般的なことですし、優先するのは悪いことではありません。しかし、辞める会社とはいえ、できるだけ円満な状態で退職しておくのも大切なことです。
 
有給休暇が十分残った状態で会社を辞めるときは、早い段階で日程を調整する必要があります。少しでも引き継ぎを進められるようなスケジュールを組んでおけば、会社の印象もそのことで悪くはならないでしょう。
 

有給休暇消化と引き継ぎをバランスよく考えて気持ち良く転職しよう

有給休暇を消化するのは労働者の権利です。退職が決まったら、放棄せずに消化しましょう。しかし、退職する会社とはできるだけトラブルにならないよう配慮しておくことも大切です。引き継ぎが残っているときは上司などに相談し、有給休暇取得に理解を示してもらう必要があります。有給休暇消化を優先しつつ引き継ぎにも気を配るのが賢明といえます。
 

出典

厚生労働省 年次有給休暇休暇の付与日数は法律で決まっています
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 就業規則を作成しましょう
東京労務管理総合研究所 判例 退職時の引継ぎ不十分 賠償無効(2018年5月号より抜粋)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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