更新日: 2024.02.08 働き方
多忙な友人が「有給休暇買い取ってくれ~」なんて言っていますが、実際のところ可能なのでしょうか?
この記事では、有給休暇制度の趣旨や買い取りが違法とみなされる理由、違法にならない例外のケースなどについて解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。
有給休暇の買い取りは原則として違法
有給休暇は、労働基準法第39条で従業員に付与するよう企業に義務づけている休暇制度です。企業は、条件を満たす従業員に対し継続勤務日数に応じて一定の有給休暇を付与しなければなりません。条件とは以下の2つです。
・雇用した日から6ヶ月以上継続勤務している
・全労働日の8割以上出勤している
有給休暇制度は、従業員の心身の疲れをリフレッシュさせ、ゆとりある生活を実現するためとの趣旨のもと設定されています。法律上義務付けられている有給休暇日数は、継続勤務して6ヶ月経った時点で10日です。雇い入れから1年6ヶ月目に11日、2年6ヶ月目に12日と増加します。
また、福利厚生として6ヶ月未満の従業員に有給休暇を付与したり、法定日数以上の日数を付与したりしても問題はありません。従業員から有給休暇を買い取ることは、原則として違法行為となります。従業員に金銭を支払うことで休みを与えない行為は、「心身の疲労回復やゆとりある生活の実現」を趣旨とする制度に反するからです。
※有給休暇は対象者の場合、年に5日取得する必要があります。
ただし、有給休暇を買い取っても問題がないケースも存在します。
有給休暇買い取りが違法にならないケース
企業が従業員の有給休暇を買い取っても問題にならないのは、以下の3つのケースです。
・法定日数を超える有給休暇のみ買い取る
・期限が切れた有給休暇を買い取る
・退職時に残った有給休暇を買い取る
企業によっては、法定日数以上の有給休暇を付与しているところもあります。その場合、法定日数を超える日数に関しては、買い取りをしても問題はありません。法定日数が確保できていれば、制度の趣旨に違反しないためです。
有給休暇の権利は2年で消滅します。例えば、1年目に2日分の有給休暇が消化できなかった場合、2年目に繰り越すことは可能ですが、それでも使い切れなかった場合は消滅します。その消滅した有給休暇を企業が買い取っても従業員に不利益をもたらすことはないため、法的に問題になりません。
退職の際、有給休暇をすべて消化できず残っている場合も多いでしょう。その分を企業が買い取ることも、問題はありません。辞めていく従業員にとって、残った有給休暇の買い取りが不利益になることはないからです。
有給休暇の買い取りは義務ではない
有給休暇の買い取りは、「法定日数以上の分」「期限が切れた分」「退職時に残った分」に関しては違法にあたりません。とはいえ、違法にならないだけで企業の義務でもない点に注意が必要です。従業員から違法にならない有給休暇の買い取りを請求された場合、企業は了承することも拒否することもできます。
有給休暇の買い取りを希望する場合は、まずは就業規則を確認しましょう。有給休暇の買い取りに関する記載があれば、買い上げてもらえる可能性が高いです。また、就業規則に記載がなくても、従業員からの要求があれば個別に判断して対応する企業もあるので、上司に相談してみるとよいでしょう。
有給休暇の買い取りを希望する場合は就業規則の確認を
有給休暇の買い取りは、原則として違法です。ただし、法定日数分以上の有給休暇を付与している企業が超えた分のみ買い取ったり、2年の期限が切れて消滅した分や退職時に残った分を買い取ったりしても違法にあたりません。
ただし、義務でもないため、違法にあたらない有給休暇を買い取ってもらえるかは企業によって異なります。有給休暇の買い取りを希望する場合、まずは就業規則を確認し、記載がない場合は上司に相談してみるとよいでしょう。
出典
e-Gov 法令検索「昭和二十二年法律第四十九号」
厚生労働省「【リーフレットシリーズ労基法39条】」
厚生労働省「年次有給休暇制度について」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー