更新日: 2024.01.26 働き方
パートで商社の「経理事務」をしています。同じ仕事なのに、同僚の「派遣」の人のほうが「400円」も時給が高いと知り不公平に感じています…なぜ派遣の待遇のほうが良いのでしょうか?
本記事では、派遣労働者の賃金の決定方法や派遣・直接雇用それぞれのメリットについて解説します。
派遣労働者の時給はなぜ高い?
派遣労働者の時給は、通常のパート労働者の時給より高めだといわれています。それは本当でしょうか?
派遣労働者の時給はどのくらい?
日本人材派遣協会が実施した2021年度の派遣社員Webアンケート調査結果によると、図表1のとおり、オフィス系(デスクワーク中心)の派遣労働者の時給平均は1500円~1750円未満が41.4%と最も多く、続いて1250円~1500円未満が30.7%という結果でした。
図表1
一般社団法人 日本人材派遣協会 派遣社員の賃金と派遣料金
これは、パート労働者の平均時給1367円(厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査)に比べると、やはり高めの金額です。なぜ派遣労働者の時給は高いのでしょうか。
派遣労働者の賃金の決定方法
派遣労働者の賃金は、派遣先の労働者の待遇を考慮した「派遣先均等・均衡方式」、または派遣元の労使協定による「労使協定方式」により決定されます。厚生労働省のデータによると、約9割の事業所が労使協定方式を採用しているようです。
労使協定方式では、派遣元事業所と派遣元の過半数組合(または派遣社員を含む労働者の過半数代表者)の話し合いにより労使協定を結び、派遣労働者の待遇を取り決めます。この場合、派遣労働者の賃金は、厚生労働省が毎年公表する「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」以上にしなければなりません。
基準となる一般労働者の賃金は「基本給・賞与・手当等」「通勤手当」「退職金」ごとに、それぞれ算出方法が定められています。例えば通勤手当については最低基準額が72円/1時間とされています。通勤手当の支給がない場合や上限が設定されている場合は、この額が確保されるよう派遣労働者の賃金を決めなければなりません。
その結果、派遣労働者に通勤手当が支給されない場合は通勤手当分72円(2024年度)を、派遣元に退職金制度がない場合は、基本給や賞与等の5%相当額を、それぞれ時給に加算することになります。このように賃金に通勤手当分や退職金分などが含まれることが、派遣労働者の時給が高くなる一因です。
また「繁忙期の短期間だけ人手が欲しい」「企業が求めるスキルを持つ人材が欲しい」など、派遣先のニーズに応える働き方であることも、派遣労働者の時給が高い理由です。
派遣で働くほうが得?
それでは時給の高い派遣労働者として働く方が、通常のパートで働くより得なのでしょうか? それぞれのメリットをみていきましょう。
派遣で働くメリット
派遣労働者として働くメリットには、給与以外にも次のようなことが挙げられます。
●就業期間や経験を活かした仕事を選んで働ける
●中小企業から大企業まで、様々な会社での業務を経験できる可能性がある
●契約内容以外の仕事は基本的に発生しない
こうしたメリットの反面、派遣という働き方には「裁量の大きな仕事は任せてもらえない」「雇用が不安定」などのデメリットがあります。
直接雇用のパートとして働くメリット
一方、直接雇用で働くメリットは以下のとおりです。
●1つの会社で長く働くことが可能
●会社によっては賞与などの支給がある
●勤務期間が長くなるにつれ、重要な仕事を任せてもらえることもある
直接雇用のデメリットとしては、残業や休日出勤、部署や勤務地の異動の可能性がある点などが挙げられます。
まとめ
派遣労働者の時給が高いのは、賞与や通勤手当、退職手当などが時給に含まれていることが一因です。しかし直接雇用のパートなら期間に縛られずに働けることを考えると、単純に時給だけで損得は判定できません。
派遣と直接雇用のパートには、それぞれメリットがあります。長い職業人生の中、自分を取り巻く状況や働く目的が変わることは多々あるため、両方の特徴を知ったうえでその都度、働き方を選んでいくとよいでしょう。
出典
一般社団法人 日本人材派遣協会 派遣社員の賃金と派遣料金
厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査の概況
厚生労働省 労働者派遣法第30条の4第1項第2号イに定める同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額に係る通知について
厚生労働省 令和6年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士