更新日: 2024.01.14 働き方

会社で始業前に「トイレ掃除」をしなければなりません。この時間に給料が払われないのはおかしくないですか? 拒否もできず悩んでます…

会社で始業前に「トイレ掃除」をしなければなりません。この時間に給料が払われないのはおかしくないですか? 拒否もできず悩んでます…
世の中にはさまざまな会社があります。一般的な常識から逸脱していても、そこで働く人にとっては普通だという会社独自の慣例や風習が根付いている企業もあるでしょう。
 
中には、業務開始前のトイレ掃除が慣例化されており、ふとした時に「あれ? この時間って労働時間ではないのか?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。本記事では労働時間の定義を確認したうえで、始業開始前のトイレ掃除が労働時間に該当するかどうかについて解説しています。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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法律上の労働時間の定義

会社は従業員が働いた時間、つまり労働時間に対して賃金を支払わなければなりません。とはいえ「働いた時間」については曖昧だと感じることも多いのではないでしょうか。会社の制服に着替える時間は? 研修を受けている時間は? なにか指示があるかもしれないと待機している時間は? などについて、労働時間と思う人もいれば、そうではないと思う人もいるはずです。
 
厚生労働省の資料によると、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」です。そして、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に該当するとされています。
 
この基準に基づき、始業開始前のトイレ掃除が労働時間になるのかどうか見ていきましょう。
 

始業前のトイレ掃除は労働時間になるのかどうか

始業前のトイレ掃除が労働時間になるケースは、まずはトイレ掃除が使用者によって義務付けられているか否かによって変わります。例えば始業時刻が8時であるにもかかわらず、明確に「7時30分には会社に来て、トイレ掃除をすること」と指示されている場合、7時30分から8時までの30分間は労働時間になるといえます。
 
また、仮に明確に指示されていなくても、暗黙のルールとして拒否できないような状況に置かれているときは、労働時間に該当します。例えば、始業時間前のトイレ掃除をやらなければ仕事を教えてもらえなかったり、客観的に見て強制だとみなされたりする場合は、労働時間となる可能性が高いでしょう。
 
反対に、例えば従業員が綺麗好きで自ら進んで業務開始前の時間にトイレ掃除をしている場合には、労働時間とはみなされない可能性が高いと思われます。労働時間とみなされるのはあくまで会社の明示または黙示の指示がある場合であり、始業前におこなう全ての作業が労働時間に当たるわけではない点には注意が必要です。
 
なお、仮に労働契約や就業契約などでどのような定めがあったとしても、労働時間に該当するかどうかは、その定めにかかわらず労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものとされています(三菱重工業長崎造船所事件(最高裁一小 平12.3.9判決)参照)。
 

まとめ

始業開始前のトイレ掃除が労働時間になるかどうかは、社会通念上や実態を踏まえ、使用者の指揮命令下に置かれているかどうかが基準です。もしも今、始業前にトイレ掃除をしており、それが労働時間に該当しているのに給料が支払われていない場合は、人事部門などへの相談を検討しましょう。
 

出典

厚生労働省 労働時間の考え方:「研修・教育訓練」等の取扱い
全国労働基準関係団体連合会 労働基準判例検索-全情報 三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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