更新日: 2024.01.06 働き方
退職前に「有休消化」をしたら嫌な顔をされましたが、労働者の権利ではないのですか?
退職前に有給休暇が残っている場合に、スムーズに消化するにはどうすればいいのかを考えてみました。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
退職前の有給休暇の消化は違法ではない
有給休暇(年次有給休暇)を取得することは労働者に認められた権利であるため、退職する前に残っている有給休暇をすべて使用しても、法的にはまったく問題ありません。
有給休暇を消化することで上司から嫌な顔をされたとしても、ほかの従業員の前であからさまに罵倒されるとか、精神的な苦痛を受けるなどのパワハラに該当するようなレベルでもない限りは、会社に対して訴訟を起こすことは難しいでしょう。
有給休暇の取得日に対して支払われる賃金の計算方法は、会社の就業規則によって異なります。一例として正社員ならば、1日当たりの所定労働時間を勤務した場合と同様の金額になることが想定されます。
例えば、1日8時間の所定労働時間で、賃金が1万6000円相当賃金であれば、有給休暇として取得した日数ついては、1日当たり1万6000円が支払われることになります。
なぜ労働者の権利を行使して嫌な顔をされてしまうのか
退職前に有給休暇を消化して嫌な顔をされてしまうことには、いくつか理由が考えられます。
例えば、有給休暇を取得するタイミングについて、会社と共有ができていなかったケースが考えられます。退職日の目前になって「明日から有給休暇を取るので出社しません」といきなり伝えた場合は、法的には問題はなくても、会社側としては困惑することもあるでしょう。
また、業務の引き継ぎができていない状態や繁忙期に有給休暇を消化する場合も、会社側からは迷惑と思われる可能性があります。
退職にあたって、有給休暇を円滑に消化したいということであれば、当然の権利だからと強行するのではなく、以下のようなポイントを押さえておくといいでしょう。
●業務に支障がないように引き継ぎを行っておく
●なるべく繁忙期は避けるなど、計画的に有給休暇を取得する
●有給休暇の消化について会社と話し合い、理解を得る
有給休暇の消化を理由とする賞与の減額は認められるのか
退職前に有給休暇を消化した場合に、賞与の支給額が下がることもあるようです。
例えば、賞与が支給される12月中は会社に在籍しているものの、有給休暇を消化することで、月のうち1回も出社せずに賞与を受け取るという場合では、有給休暇の取得に対して、会社側が支給する賞与を本来の金額よりも下げたりすることが、時折、問題となっていまます。
こうした対応については、有給休暇の取得のみをもって賞与を不支給、または不支給に近い金額とすることまでは許されないと考えられます。なぜなら、賞与には過去の実績に対する報奨金という意味合いのほかにも、利益の分配といった側面もあるからです。
そもそも、労働基準法附則第136条によって、有給休暇の取得に対して労働者に不利益を与えてはいけないことになっています。その点も踏まえると、有給休暇の取得を理由とした賞与の不支給や大幅なカットは、原則として許されるわけではなさそうです。
まとめ
有給休暇の取得は労働者にとって当然の権利であり、退職前に残っている有給休暇を消化しても、原則として不利益を受けることはありません。
ただし、タイミングなどによっては、会社から嫌な顔をされてしまうこともあります。権利だからと行使するのではなく、有給休暇の消化にあたっては、会社への事前の相談や業務の引き継ぎなどをしっかりと行っておくべきでしょう。
出典
厚生労働省 よくある質問 私の会社では有給休暇を取得すると賞与の査定にあたってマイナスに評価されてしまいます。会社は有休を取得しなかっただけ多く働いたのだから当然と言っていますが、これは法律上問題ないのでしょうか。
執筆者:柘植輝
行政書士