更新日: 2024.01.03 働き方
上司に有休消化を「常識がない」と言われました。20日分あまっているのですが、諦めるしかありませんか?「買い取り」もダメなのでしょうか?
しかし、上司から「そんな長期の有休消化は常識がない」と言われてしまうと、有休を使うことを諦めてしまう人もいるかもしれません。これは本当に常識がない行為なのでしょうか。
本記事では、有給休暇の消化を会社が拒否できるものなのか、円満に有給休暇を使い切るための方法について解説します。
有給休暇の消化率は7年連続上昇中
まず、有給休暇を消化して退職することは、常識がない行為とはいえません。厚生労働省がおこなっている「令和4年就労条件総合調査の概況」によると、有給の取得率は平成27年から7年連続で上昇しており、最も取得率が低かった約47%から令和3年は60%近くになっており過去最高です。
働き方改革による効果もあり、社会全体が有給休暇の消化を推進している状況ともいえます。ではそもそも有給休暇はどんなときに与えられるのか、条件を見ていきましょう。
要件を満たしていれば会社は有給消化を拒否できない
有給休暇は正確には年次有給休暇といい、労働基準法で認められた権利で、以下の2つの要件を全て満たしていれば必ず付与されます。
●雇用されてから6ヶ月継続勤務していること
●全労働日の8割以上出勤していること
この条件を満たしていれば、正社員かパートかは関係なく付与されます。付与される日数は勤続年数によって変わってきます。詳細は図表1の通りです。
図表1
厚生労働省 年次年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています より筆者作成
図表1のように、雇用されて半年以上の場合は10日、6年半以上であれば20日が年間で付与されることになります。有給休暇の時効は2年ですので、最大で40日持つことができます。
これは労働者の権利であり、基本的にはいつでも使うことができる制度です。
会社が認めないのは労働基準法違反
有給休暇を使うことは権利であり、退職が決まっているからといって会社が拒否することはできません。会社には「時季変更権」という権利があり、これは社員が指定した日に有休を取ると、会社の正常な運営が妨げられる場合に、別の時季に変更できるというものです。
しかし本事案では、この権利を主張することはできません。退職が決まって、退職前に20日使いたい場合などは、それ以降の時期に設定することができないことから会社は時季変更権を使うことはできないのです。有給休暇を使いたいと申し出て、会社が拒否した場合は労働基準法の違反となります。
有給休暇の消化を拒否されたらどうしたら良い?
上司から「常識がない」と言われ有給休暇を使うことを拒否された場合は、会社の人事部など上層部に相談することが望ましいでしょう。直属の上司から「常識がない」と言われたときは、さらに上の役職者に相談してみることが大切です。
しかし、ブラック企業のようにコンプライアンスに問題がある場合は、上層部でも取り合ってくれない可能性があります。その場合は、労働基準監督署に相談に行くことをおすすめします。
有給休暇を買い取ってもらえるか相談する
消化しきれない有給休暇を買い取ってもらえるか相談してみましょう。前提として、本来は有給休暇の買い取りは労働基準法に違反すると考えられており、過去の判例でも示されています。
買い上げが違法とされる背景には、有給休暇の目的が、労働者の心身の休養を促し、継続して意欲的に働けるようにすることにあります。有給休暇の買い上げを認めると、休養する機会を奪うことへの懸念があるからです。
つまり、本事案のように退職が決まっている状態で、余っている有給休暇を会社が買い上げをしても、労働者の休養の機会を奪う心配はなく、違法ではないと考えられています。
ただし、買い取りに関して法律で明言されているわけではないため、必ず会社が買い取りを認めてくれるかどうかはわかりません。就業規則等を確認したり、会社に個別の対応をしてもらえるか確認したりしてみましょう。
まとめ
退職時に余った有休を消化することは決して常識外れな行為ではなく、労働者の権利です。
言いづらいから消化せずに退職すると、有休は消滅してしまいます。気持ちよく退職するためには、数ヶ月前から計画的に消化したり、後任への引き継ぎをしっかりとおこなったりするとよいでしょう。スムーズに消化ができ、会社との買い取りの交渉もうまく進めることができるかもしれません。
出典
厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況
厚生労働省 年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
執筆者:渡邉志帆
FP2級