更新日: 2024.01.03 働き方
妻がパートを始めましたが、給与が「現金手渡し」と聞いて驚きました。あやしいと感じてしまうのですが、辞めさせるべきでしょうか?「脱税」などに関わってしまわないか心配です…
本記事では、給与が現金手渡しになっている割合や、法律上問題がないかなどについて解説します。
現金手渡しの割合
「今どき給与が現金手渡しの会社なんてあるの?」と疑問に感じる人もいるかもしれません。KDDI株式会社が1000人を対象に行った「『さよなら現金』意識調査2018」の結果によると、2018年当時、約10.8%の人が給料を現金手渡しで受け取っています。
居住地域別に「現金手渡し」の割合をみると、中国・四国地方の人が20.0%と最も高く、次いで九州・沖縄地方の人が16.7%、北陸・甲信越地方の人は15.6%となっています。一方、関東地方の人は、給料を現金手渡しで受け取っている人の割合が7.2%と最も低くなっています。
また、給料の受け取り方法として最も多いのは銀行振込で、全体の89.5%でした。しかし中国・四国地方では77.8%、九州・沖縄地方では83.3%、北陸・甲信越地方では87.5%にとどまっています。
調査は約5年前に行われ、その後コロナ禍を経た現在ではこの数値よりは現金手渡しの割合が減っている可能性は高いですが、給与現金手渡しの人が一定数いることが分かります。
現金手渡しは違法ではない
結論から申し上げると、給与を現金で渡すことは違法ではありません。むしろ法律では「現金で渡すこと」が原則とされています。
労働基準法第24条によると、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とされています。もう少し具体的に挙げると次のとおりです。
(1)通貨で
(2)直接労働者に
(3)全額を
(4)毎月1回以上
(5)一定の期日を定めて
これら5つの条件を満たして、給与を支払う必要があります。つまり原則として給与は通貨、つまり現金で支払うことが基本なのです。しかし前述の調査内容でも分かるように、給与を現金手渡しにしている会社は多くなく、ほとんどの会社が銀行振込という方法を選択しています。
労働基準法施行規則第7条では、「労働者の同意」を得た上であれば、労働者が指定した振込口座に給与を支払うことが認められています。安全面や利便性を考慮すると、現金手渡しよりも銀行口座振込の方が利便性は高いため、銀行口座への振込にしている会社が多いのでしょう。
源泉徴収されているか必ず確認を
給与が現金手渡しで支払われている場合は、所得税が源泉徴収されているかを必ず確認しましょう。給与には所得税がかかるためほとんどの会社が所得税を差し引いたうえで支給しているはずですが、源泉徴収を行わないまま支給する会社もあります。その場合は自分で確定申告をし、所得税を確定し、支払わなければなりません。
まとめ
給与が現金手渡しだからといって、勤務先を怪しむ必要はありません。むしろ、労働基準法には現金で支払うことが原則とされています。利便性の観点から、給与の支払いは銀行振込にしている会社が多いので、現金手渡しと聞くと怪しく感じるかもしれませんが、法的には全く問題ありません。
ただし所得税の源泉徴収がされているかは必ず確認しておきましょう。源泉徴収が行われずに給与が支給されている場合は、別途自分で確定申告をしなければなりません。確定申告をしないまま放置すると、無申告と判断される危険がありますので注意しましょう。
出典
KDDI株式会社 『「さよなら現金」意識調査2018』
e-Gov法令検索 労働基準法
厚生労働省 賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。
厚生労働省 労働基準法施行規則
執筆者:山田麻耶
FP2級