更新日: 2023.12.10 働き方
65歳以降も「年金受給」しながら働きたいのですが、パート収入が月に10万円を超えても問題ないですか……?
そこで「パートで月収10万円以上稼ぎたい」という方の話を例に、月に10万円を超えるパートをしても年金に影響はないのか考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
在職老齢年金との関係性
最初に思いつくのは、在職老齢年金の存在です。在職老齢年金とは、老齢厚生年金と給与の合計額が月に48万円を超えると超えた金額の半分が年金額より支給停止される、という仕組みです。
これについては、フルタイムでパートをするような状況でもない限り気にする必要はないでしょう。
厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、老齢厚生年金の受給月額は、平均14万6000円程度となっています。パートであれば、時給1000円でフルタイムにて働いたとしても月収16万円(1日の実労働8時間、月に20日就労するとして試算)です。
老齢厚生年金と給与の合計は30万6000円程度となり、48万円を超えることはありません。基本的にパートで働く場合は、年金について気にする必要はないでしょう。
所得税や住民税が増える
パートで得た収入は給与所得に当たります。そのため、パート収入が年間103万円を超えてしまうと、所得税が発生してしまいます。加えて、子どもの扶養(いわゆる税制上の扶養)に入っている場合、その扶養から抜けてしまい、子どもの税金が増えてしまうことにもなります。
そのため、扶養に入りつづけたい場合、パート収入の一つの目安は年間103万円です。月額に換算すると、8万5833円です。
また、配偶者の扶養に入り、配偶者控除の適用を受ける場合、年金の額が年間110万円を超えていると、公的年金等控除額と呼ばれる控除の範囲を超えてしまい、その分パート収入によって稼ぐことのできる額が小さくなります。この点は少々複雑ですので、詳細は最寄りの税務署へ相談してください。
なお、年収を103万円以下に抑えていたとしても、住民税は発生する可能性があります。東京都中野区の例でいえば、年収100万円以下であれば住民税がかからないようになっています。
ただし、住民税の非課税となるラインは自治体によって異なることもあるようです。必ず住んでいる自治体に確認してください。「自身に所得税や住民税を極力発生させないように」と考えるのであれば、パートでの収入は年間100万円以下に抑えておくべきでしょう。
いずれにせよ毎月10万円以上稼ぐと、自身や、扶養に入れてくれている配偶者または子の所得税や住民税が増えることになる、という点に気を付けてください。
社会保険の扶養にも注意
税金(税制上の扶養)とは別に、「社会保険の扶養」も存在しています。社会保険の扶養に入るには、年金を含めた収入が180万円未満でなければなりません。また、社会保険の扶養に入れてくれている方と同居している場合、その方の収入の半分未満でなければなりません。別居の場合は、その方から受け取る仕送り額未満の収入であることが必要です。
仮に老齢基礎年金を年間で合計78万円程度受け取った場合、パートで月10万円を超えるほど稼いでいると、年間で収入が180万円を超えてしまい、社会保険の扶養から抜けてしまいます。
また最近は、社会保険の適用範囲の拡大もありました。その他の条件にもよりますが、パートで月8万8000円以上稼ぐと、年金額にかかわらず社会保険の扶養から抜けなければならないこともあります。パートで毎月10万円を超えるほど稼ぐと、社会保険の扶養に入りつづけるのは難しいでしょう。
まとめ
65歳以降も年金を受給し、税金や社会保険料を抑えながら働きたい場合は、基本的にパートの給与を月8万8000円未満に抑えておくべきでしょう。月10万円を超えて稼ぐと、自身に所得税や住民税、社会保険料が発生するだけでなく、扶養から外れて扶養者の税金が上がってしまうこともあるからです。
もし、何円まで働くべきかと悩んだときは、扶養の範囲で働きたいか、それともより多く稼ぎたいのか、どちらか希望を明確にした上で考えましょう。
出典
日本年金機構 さ行 在職老齢年金
厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
厚生労働省 配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま
中野区 パート収入がいくらまでなら、住民税がかかりませんか?
執筆者:柘植輝
行政書士