更新日: 2023.12.07 働き方
退職願を出すと「ボーナスが減らされる」って本当? 減額は仕方ない? 違法ではないのかも解説
退職する人のボーナスは減額されることがある?
実際に、退職の意思を会社に伝えると、ボーナスが減額されてしまうことがあります。このことは法律違反にならないのでしょうか?
ボーナス支給は義務ではない
雇用している従業員に給与を支払うのは、会社の義務です。それに対し、ボーナス(賞与)の支払いに法律上の義務はありません。ボーナスを全く出さなくても違法ではないのです。ただし就業規則や労働契約でボーナスについて定めた場合は、その規則通りに支払う必要があります。
法律上の義務がないため、ボーナスについては原則として会社が任意で決められます。「支給回数を年1回にするか2回にするか」「支給日をいつにするか」など、会社が自由に取り決めてよいのです。このことは、ボーナスの支給条件や計算方法についても同様です。
ボーナスの支給条件と退職日
「支給日に在籍していること(支給日在籍要件)」を、ボーナスの支給条件にしている会社もあります。つまりボーナス支給日の前日まで真面目に勤務していても、支給日時点で退職している人にはボーナスを出さないということです。なお勤務先の会社に支給日在籍要件があるか否かは、就業規則を調べればわかります。
支給日在籍要件がある会社でも「退職願を出したが、まだ退職していない人」は、支給日時点で在籍さえしていればボーナスは受け取れます。では、ボーナスの額はどうなるのでしょうか?
ボーナスの性質と減額
結論からいうと「退職予定者のボーナスは、減額されても、それ自体は違法にならない」とされています。ボーナスの性質には「賃金の後払い」「会社利益の従業員への分配」そして「従業員の将来への期待」などが挙げられます。退職予定者は他の従業員に比べ「将来への期待」が薄いため、ある程度の減額は仕方がないということでしょう。
退職願を出した人のボーナスは減額されても仕方がない?
以前、退職予定者のボーナス減額を巡る有名な裁判がありました。その裁判では、退職予定者に支払われたボーナスが他の従業員より著しく低額だったことが争われましたが、結果は「将来に対する期待の程度に差があるため、退職予定者とそうでない者とのボーナスの額に差を設けること自体は不合理ではない」というものでした。
このことからも、退職予定者のボーナスがある程度減額されてしまうのは、それ自体は違法でないといえるでしょう。なお、この裁判では、減額が不合理でないとしつつも減額割合は8割までが妥当とされました。
まとめ
退職を考えている人が「なるべく有利にボーナスをもらってから退職したい」と思うのは自然なことです。そしてボーナスを減額されないためには、ボーナスを受け取った後で退職願を出すことは、確かに有効でしょう。
しかし退職するときは、後任者への引き継ぎなどもあるため、会社の就業規則にのっとり、退職願の提出をあまり先延ばしにしないことも大切です。
出典
全国労働基準関係団体連合会 労働基準判例検索-全情報
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士