更新日: 2023.12.06 働き方

ボーナス支給前に「退職する」と伝えたら「それならボーナスは支給しない」と言われました。これって違法ですよね? これまで懸命に働いてきたのですが…

ボーナス支給前に「退職する」と伝えたら「それならボーナスは支給しない」と言われました。これって違法ですよね? これまで懸命に働いてきたのですが…
会社員として勤務している場合、ボーナスが支給されることもあるでしょう。毎月の給与とは別に受け取れるお金は、やはりうれしいものですよね。
 
しかし会社を退職したいと思っている場合、ボーナスの支給日よりも前にその意向を伝えると、金額が減らされたり支給されなかったりするケースがあります。本記事では、法律上のボーナスの定義や、退職を理由とする不支給などが許されるのかどうかを解説します。

そもそもボーナスとは?

ボーナスは日本語では「賞与」と呼ばれます。労働基準法の通達によると、賞与は次のように定義されています。
 
「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであつて、その支給額が予め確定されてゐないものを云ふこと。定期的に支給され、且その支給額が確定してゐるものは、名称の如何にかゝはらず、これを賞与とはみなさないこと」
 
つまり次の2つの要件を満たすものが賞与、いわゆるボーナスと呼ばれるものです。
 

(1)定期または臨時で支給され、働く人の勤務成績に応じて支給される
(2)支給額があらかじめ確定していない

 
夏と冬にボーナスを支給する会社が多いので「年に2回必ずもらえるもの」という印象を持つ人もいるかもしれませんが、ボーナスの支給時期や金額、支給するかどうかも会社によってさまざまです。
 

ボーナスの不支給や減額は違法ではない

毎月の給与に関しては、最低賃金法で「最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない」と定められています。もし会社が従業員に最低賃金未満の給与を支払った場合、違法となります。
 
一方でボーナスの最低支給金額については法律で定められていないため、会社にはボーナスを支給する義務はありません。そのためボーナスが不支給になったり減額されたりしても、原則として法律上は問題ないといえます。
 
ボーナスの支給条件は、会社側が就業規則で自由に定めることができます。仮に会社のボーナスの算定基準に「将来への期待値を含む」ことが具体的に定められている場合、退職の意向を伝えることで「会社への貢献が望めない」と判断され、ボーナスが減額になる可能性もあります。
 

退職によるボーナスの大幅カットが違法になった事例も

退職を理由にボーナスが不支給になったり減額されたりしても、原則として法律上は問題になりません。
 
しかし、過去には退職による大幅なボーナスの減額が違法だと認められた事例もあります。退職を理由にボーナスを約8割減額されたとして従業員と会社が裁判で争った結果、約2割の減額が適正という判決が下されました。
 
約8割という大幅な減額を認めなかった一方で、「将来に対する期待の程度の差に応じて、退職予定者と非退職予定者の賞与額に差を設けること自体は、不合理ではない」としています。
 
退職予定者であれば将来への期待値が下がるため、ある程度の減額はやむを得ないと国が判断したということですね。
 

就業規則を確認してから退職の意向を伝えるのが無難

ボーナスの支給条件は会社が自由に決められるものです。ボーナスの支給は当たり前ではないことや、未来への期待を込めた支給であることを考えると、退職を伝えることでボーナスが減額・不支給になるケースも十分あり得ます。退職を考えている場合、まずは会社の就業規則をしっかりと確認してから退職の意向を伝えるようにしましょう。
 
ただ、過去には退職を理由としたボーナスの大幅な減額が認められなかった事例もあります。退職のみを理由にボーナスが大幅にカットされた場合などは、弁護士などに相談するのも1つの手段です。
 

出典

厚生労働省 労働基準法の施行に関する件

e-Gov法令検索 最低賃金法

 
執筆者:山田麻耶
FP2級

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