更新日: 2023.12.01 働き方
入社時にあった「退職金制度」が、いつのまにか廃止になっていました。これって不当ではありませんか? 継続してもらうことはできないのでしょうか?
本記事では、退職金制度の現況や退職金制度を見直す会社の割合について統計を見ていきます。また退職金制度の廃止は可能かなどについて説明します。
退職金制度がある会社はどのくらい?
2023年現在、退職金制度のある会社はどのくらいあるのでしょうか?
退職金制度がある小企業は7割
厚生労働省による「令和5年就労条件総合調査」を見てみましょう。
図表1
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況
図表1のとおり74.9%の会社に、退職年金制度または退職一時金制度があります。企業規模別では、1000人以上規模の会社は90.1%に退職金制度がありますが、30人以上99人以下の会社では70.1%です。また退職金の形態も、企業規模が小さくなるほど「一時金のみ」の割合が増えています。
退職金制度を見直す会社は
次に、図表2で過去3年間に退職年金制度の見直しをした会社・今後3年間に見直しを予定している会社の割合を見ていきましょう。
図表2
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況
過去3年間に退職金年金制度の見直しをした会社が、全体の4%あります。またこれから3年間に見直しを予定している会社は3.8%です。
さらに、図表3の退職一時金の見直しについての統計も見てみましょう。
図表3
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況
過去3年間に退職一時金の見直しをした会社は全体の7.9%です。また今後3年以内に見直しを予定している会社が6.7%あります。そして今後3年間に退職一時金制度の廃止・脱退も視野に入れている会社が6.6%あります。
退職金制度の廃止はあり得る?
従業員の中には「退職金制度があるから、この会社を選んで入社した」という人もいるはずです。それにもかかわらず、退職金制度を完全になくすことはできるのでしょうか。
退職金制度の廃止は可能
退職金制度の廃止はできないことではありません。しかし労働条件の不利益変更になるため、会社が一方的に、突然廃止や縮小をするわけにはいきません。不利益変更をするには、原則として個々の労働者の同意が必要になるのです。
ただしやむを得ない事情があるときに限り、就業規則を変更することで、不利益変更が可能となります。労働基準監督署への届出や従業員への周知などが適正に行われ、合法的に変更された就業規則は、その規則が適用される従業員全員に影響が及びます。
そのため、たとえ反対する従業員がいたとしても、退職金制度は廃止されることになります。
もしもの場合は話し合いを
会社の経営状態にもよりますが、退職金のような重要な制度をなくす際には、何らかの措置が講じられることがあります。例えば「退職金制度を廃止するが、その代わり毎月の給与や賞与を増やす」などです。
もし勤務している会社で退職金制度廃止の話が出てきたときは、会社側と話し合いをしてもよいのではないでしょうか。
まとめ
「退職金」といっても、総額数千万円になるような退職年金から10万円くらいの退職慰労金まで、それぞれの企業によって内容はさまざまです。しかしどのような制度であれ、いままであったものが廃止になれば、自身の資金計画に狂いが生じてしまうでしょう。
世の中は常に動いていますから、会社の制度や自身の貯蓄・保険の状況などは、時折チェックするようにしましょう。
出典
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況 退職給付(一時金・年金)制度
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士