更新日: 2023.11.30 働き方

始業は9時からですが、上司に「朝礼は8時50分から」と言われています。1日10分ではありますが、これって「タダ働き」ではありませんか? 残業代の対象になるのでしょうか?

始業は9時からですが、上司に「朝礼は8時50分から」と言われています。1日10分ではありますが、これって「タダ働き」ではありませんか? 残業代の対象になるのでしょうか?
会社員にとって朝の10分は貴重です。しかし、始業時間が9時であるのに8時50分から朝礼があるなど、始業時間前に朝礼が開始されるとなると、その分早く出勤しなければなりません。この場合の朝礼は単なる慣習であり、労働にはあたらないのでしょうか?
 
本記事では朝礼が法的に労働とみなされるのか、その判断基準について解説します。

朝礼が義務づけられているかがポイント


労働とみなされるには、朝礼が義務づけられているかどうかがポイントです。「労働時間」とは、使用者の指揮命令下で、明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間と定義されています。
 
つまり、会社が朝礼を義務としている場合は、労働時間とみなされるということです。では、義務としているかどうかはどう判断されるのでしょうか。
 

義務と判断されるケース


朝礼が義務と判断されるケースには以下のようなケースが考えられるでしょう。
 

・就業規則や社内のルールブックなどに朝礼の参加が明確に指示されている場合
・上司からメールなどで参加を促すような通知がある場合
・口頭で何度も参加の指示を受けている場合

 
このような場合は客観的に見て、文書や口頭で指示があると分かるため、朝礼の参加が義務づけられていると判断されます。
 

義務ではないと判断されるケース


例えば、朝礼への参加は任意であると言われていたり、特段指示や命令はされていないが、早く来た人だけで開催されていたりする場合などは、義務づけられているとは言えないでしょう。
 
古くからの慣習や、暗黙の了解で行われていて「なんとなく行かないといけない」と思ってもこれらの場合、基本的には義務ではないと判断して問題ありません。
 

労働時間と判断されれば残業手当の支給対象となる

朝礼が義務であれば、その時間は労働時間と判断され、労働時間をオーバーする分については会社側は残業手当を支払う義務があります。
 
残業手当は就業時間後の労働に対して発生するイメージが強いですが、始業前でも規定の労働時間を超えて働いているのであれば支給されます。
 
では、始業前の10分間の朝礼の残業代は、いくらになるのでしょうか。厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査 令和5年9月分結果速報等」の資料にある、一般労働者の1ヶ月あたりの平均残業代と平均残業時間(図表1)を基に計算します。
 
図表1

所定外給与 2万6421円
所定外労働時間 13.7時間

厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和5年9月分結果速報等より筆者作成
 
図表1より、1時間当たりの単価は約1929円、さらに6分の1にすることで10分当たりの単価が約322円と算出できます。
 
1ヶ月の出勤日数が20日と仮定すると、朝礼分の残業代は以下の算式で求められます。
約322円×20日=約6440円
 
10分間であっても、1ヶ月トータルすれば3時間以上になり、これがタダ働きになることを不満に思うことは自然なことかもしれません。
 

会社に相談して対応を検討してもらおう

始業前の朝礼は会社と社員とで認識が違うこともあるため、もやもやした気持ちを抱えたまま過ごすより一度相談してみることが大切です。
 
10分早く来た分10分早く退社できるようにする、朝礼の頻度を減らすなど、お互いにとってより良い解決策が見つかるかもしれません。自身の権利を正しく知り、適切に主張することで、より良い職場環境を築けるようになるでしょう。
 

出典

厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和5年9月分結果速報等 を公表します
 
執筆者:渡邉志帆
FP2級

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