「給与が固定残業代込みの会社で働くと損」友人はそう言いますが、本当ですか?
配信日: 2023.11.13
そこで、固定残業代込みの給与形態の会社で働くことが損であるのか、考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
固定残業の法的性質は?
固定残業代とは、実際の残業時間が基礎として定められた時間以下であっても、一律で支払われる残業代のことをいいます。
例えば 「固定残業代として60時間分の残業代8万円を支給」 というような給与形態であれば、残業時間が実際には0時間であっても、満額である60時間分の残業代8万円が支給される、という具合です。
なお、固定残業時間が実際の残業時間を超えていた場合は、その超過分を別途、支給しなければなりません。例えば、60時間分の固定残業代が8万円支給されている場合において、1ヶ月に90時間の残業をしたという場合、超過する30時間分にあたる4万円分が追加支給され、その月は合計12万円の残業代が支給されることになります。
固定残業代込みの給与形態で働くと損をする理由は?
「給与が固定残業代込みの会社で働くと損」 といわれるのには、いくつか理由があります。
1つは 「同じ給与額で比べた場合、時間当たりの実質賃金が低い」 という点が挙げられます。
例えば、固定残業代なしで月給24万円 (時給1500円で1日8時間、月20時間労働として換算) のAさんと、固定残業代20時間分込みで月給25万9000円のBさん (時給1400円で1日8時間、月20時間労働として換算) とでは、後者のほうが給与額自体は高くとも、1時間当たりの労働時間はAさんのほうが高いくなります。
また、一般的に賞与は、残業代や固定残業代の分をのぞいた基本給を基準にして算定されます。例えば、1ヶ月分の賞与が出ると仮定すると、先のAさんは24万円の賞与が支給されますが、Bさんの場合は22万4000円となるわけです。
加えて、固定残業代は 「企業の残業代の計算を簡略化する」 という意味でも用いられています。そのため、例えば固定残業時間が20時間と設定されている場合、毎月20時間近い残業が発生することが常態化している可能性があります。
ほかにも、固定残業代をめぐるトラブルは、厚生労働省が注意喚起をするほど多くなっています。そういった理由から 「給与が固定残業代込みの会社で働くと損」 といわれることがあるのです。
固定残業代込みの給与形態で働くことにも、一定のメリットがある
絶対に、というわけではありませんが、固定残業代込みの給与形態で働くことによって、得をすることもあります。例えば、固定残業時間が40時間ある場合において、仕事が早く終わり、残業時間が40時間より短くなれば、固定残業代の満額を得ることができます。
また、固定残業代は常に一定額で支給されることから、収入の増減が起こりづらく、安定するといっていいでしょう。
このように、固定残業代込みの給与形態で働くことも、状況次第ではメリットとなることがあります。
まとめ
給与が固定残業代込みの会社で働くことは、必ずしも損をするわけではありません。場合によっては得をすることもあります。
そのような給与形態のもとで働いたことを後悔しないためには、固定残業代についてしっかり理解し、会社で実際にどのように運用されているかを確認することが大切です。
出典
厚生労働省 固定残業代 を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。
執筆者:柘植輝
行政書士