うちの会社、「ホワイト」すぎて退職したい!3年勤めたから「退職金」は受け取れますよね?
配信日: 2023.11.10
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
ホワイトすぎることを理由に退職すると、後悔する可能性もある
まず前提として、勤務先が 「ホワイトすぎる」 ことを理由に退職すると後悔してしまう可能性があります。世の中には、いわゆるブラック企業に勤め、苦労をする声があふれています。もし、勤務先がホワイト企業だと自覚しているのであれば、今後、転職すれば、待遇が悪化する可能性も覚悟したうえでの退職が必要となるでしょう。
退職したい理由が 「ホワイトすぎて自分の成長が見込めない」 ということであれば、会社の内外で自己成長につながる活動を行ってみて、それでも足りないと感じてからでも遅くはないでしょう。
退職金制度の存在は絶対ではない
「会社を退職すれば、必ず退職金を受けとれる」 と思っている方もいるかもしれません。しかし、現実にはそうではありません。退職金が支給されるかどうかは、会社によって異なります。
厚生労働省 「平成30年就労条件総合調査」 によれば、退職給付 (一時金・年金) がない企業は、集計対象企業全体の19.5%となっています。つまり2割近い会社で退職金が支給されておらず、退職金は絶対に支給されるわけではない、ということです。
また、一般的に退職金は、勤続年数によって支給の有無や金額が変動します。3年程度、勤めただけでは期待しているような金額が得られない可能性もあります。そもそも3年だけでは、必要となる勤続年数が不足しているため、支給されない企業もあります。
厚生労働省の調査 によれば、「ホワイトすぎて退職する」など、自らの意思にもとづいて退職する 「自己都合退職」 の場合、退職一時金の受けとりに必要な最低勤続年数が「3年」とされている企業は146社中74社となっています。つまり3年勤務したことで退職金をもらえるとは限らないことになります。
退職金についての規定は、就業規則や賃金規程などで確認することができます。退職前には必ずそれらを確認して、支給の有無を知っておきましょう。
3年勤めた場合の退職金の額は?
3年勤めて退職金が支給されたとしてもその額は、想像より少ない、と感じる方もいるでしょう。自己都合となればなおさらです。一般的に自己都合での退職は、会社都合での退職に比べて、支給される退職金の額が小さくなるからです。
厚生労働省の 「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」 によれば、3年勤続した場合において、会社都合退職による退職金の平均額は69万円です(25歳大卒総合職の場合)。それをふまえると、自己都合退職の場合、支給される退職金の額は60万円以下となることも充分に考えられます。
支給される額については就業規則などで確認することができるため、自分がどれくらいの金額を受けとることができるのか、事前に確認すべきでしょう。
退職金の税金については気にする必要なし
退職金を受けとるにあたって気になるのは税金についてです。この点については支給される退職金が、先述の統計上のモデルケースに近しい(あるいは下回る)金額であれば、気にする必要はありません。
勤続年数20年以下の方が受けとる退職金には、40万円×勤続年数(1年未満の端数は1日でも1年とみなす)の退職所得控除が受けられます。
しかし、先にみてきたとおり、勤続3年で受けとれる退職金は、会社都合の場合でも平均69万円です。自己都合退職であれば、それより少なくなることが想定され、控除額の範囲内におさまると考えられるため、税金については気にする必要がないといえます。
まとめ
「ホワイトすぎて転職したい」 と思っても、即日、退職するのはおすすめできません。3年勤続しても、必ずしも退職金が支給されるとは限らないからです。また、支給される額は69万円以下になると予想されるため、大きな額とはなりえないでしょう。
せっかくのホワイト企業を、一時の考えで退職すると、後悔する原因にもなりかねません。「ホワイトすぎる」 と感じたら、いきなり退職するといった行動には移さず、まずは社内外で成長のための行動をとってみてください。ホワイトすぎる環境なのであれば、成長のためのお金や時間の捻出(ねんしゅつ)は不可能ではないはずです。
出典
厚生労働省 中央労働委員会 令和3年退職金、年金及び定年制事情調査 調査結果の概要
国税庁 退職金と税 退職金にかかる税金
厚生労働省 平成30年就労条件総合調査 結果の概況 3 退職給付(一時金・年金)制度
執筆者:柘植輝
行政書士