更新日: 2023.10.24 働き方
「年収130万円の壁」を超えても全額手取りに!? でも2025年には働く人のほとんどが「社会保険」に加入する必要があるって本当? 国の思惑とは?
本記事ではなくなった年収の壁の内容と、その先にある国の思惑についても解説します。
執筆者:八木友之()
なくなった年収の壁は社会保険の106万円と130万円
年収の壁は大きく税金と社会保険に分かれます。2023年10月よりなくなった年収の壁は、社会保険の壁である年収106万円と130万円である点にまず注意してください。税金における年収の壁である、年収103万円、150万円、201万円はまだ存在しています。
年収106万円または年収130万円を超えてしまうと、配偶者の社会保険の扶養に入れなくなるため、パート労働者自身で社会保険に加入しなければならなくなります。すると、年収の壁を超えて働いた分より社会保険料が上回る現象が起こるため、社会保険加入前よりも手取りが少なくなってしまうのです。
「頑張って働いても結局手取り収入が減るのであれば、働く時間を調整して扶養のままでいよう」と考える人が多くなるのは当然なのかもしれません。
【図表1】
厚生労働省 「年収の壁・支援強化パッケージ」について
ただ、今の日本は少子高齢化による労働者不足問題が深刻化しています。そこで政府は、年収の壁を超えても社会保険料の負担がないようにし、年収の壁を超えないよう調整している人により働いてもらおうと考えたのです。
年収106万円と130万円への具体的な対策とは
まず年収106万円の壁に対しては、会社へ最大50万円の助成金が支給されます。会社がパート労働者へ、社会保険料を補える金額を手当などのかたちで支払うことが要件です。
パート労働者は年収の壁を超えれば社会保険に加入しなければならないものの、手当によって社会保険料は補われるので実質の負担は0円となります。年収130万円の壁に対しては、「一時的な収入増」であることを会社が証明すれば、最大2年間扶養のままでいられることになりました。
この内容を理解せず、これまで同様年収の壁を超えないよう働き続けると、社会保険の負担なく得られたであろう収入を逃してしまうことになります。
ここで注意しなければならないのは、いずれも会社の協力が必要であるということです。会社が助成金は不要と判断すれば手当は支払われず、社会保険料はそのまま負担となるでしょう。また年収130万円を超えた場合も会社が証明をしなければ、扶養のままでいることはできません。
年収の壁を超えるのか否かの判断は、自身の会社が対応しているのかを事前に確認してからが鉄則になります。
年収の壁をなくした国の思惑とは
社会保険の年収の壁をなくしたのは、労働力確保のためです。ただ、その先にも思惑があると考えられます。
年金制度は2025年に大きな改正があるといわれています。その際には、労働者のほぼ全員が社会保険へ加入しなければならなくなる可能性が出てきました。
政府は今回の対策によって、これからの2年間で年収の壁を気にせずに働くことが普通になればという考えがあるのかもしれません。その状態で2年後に社会保険の改正を行えば、より多くの社会保険料を徴収できるでしょう。国民の収入が上がれば税収アップにも繋がります。
今回の年収の壁対策は「ばらまきだ」との意見もありますが、先で回収する算段があるうえでの一時的な対策といえるかもしれません。
まとめ
2023年10月より社会保険料の負担なく年収の壁を超えることができるようになりました。
ただ、勤め先の会社の対応次第な面があるので、誰でも大丈夫というわけにはいかない点に注意しなければなりません。まずは会社の対応を確認してみましょう。
出典
厚生労働省 「年収の壁・支援強化パッケージ」について
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士