更新日: 2023.10.02 働き方
インボイスで副業収入が減るかも… 取引先との値下げ交渉は受け入れるべき?
いずれにしても「手取りが減る可能性がある」ことから、個人事業主の方は適格請求書発行事業者に登録するべきか、慎重に判断しましょう。本記事では、インボイス制度について詳しく説明していきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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適格請求書発行事業者にならない場合は報酬が値下げされるかも
インボイス制度とは、簡潔にいうと「事業主に、きちんと消費税を納めさせる」ための制度です。インボイス制度が始まると、仕入税額控除を行うためには課税事業者から適格請求書(インボイス)を発行してもらう必要があります。適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者としての登録を行い、消費税の課税事業主にならなければなりません。
インボイスは複雑な制度となっていますが、要点をまとめると下記のようになります。
・インボイスに登録する:消費税の課税事業者となり、消費税の納付義務が発生する(手取りが減る)
・インボイスに登録しない:取引先にインボイスを発行できず、取引先の消費税負担が増える。取引先の売り上げが減るため、その分値下げ交渉を受ける可能性がある
インボイス制度により考えられる収入減
例えば、以下の条件で副業WEBライター(免税事業者)を行っている人が、インボイス制度によりどの程度の収入減が起こるか考えてみましょう。
・毎月単価1万円の記事を10本請け負っている
・報酬10万円に加えて1万円の消費税を受け取っている
インボイスに登録する場合
インボイスに登録した場合は課税事業者になるため、取引先から受け取った消費税を納付しなければなりません。
インボイス登録前は免税事業者として、報酬と1万円の消費税を合わせて「11万円」の収入でした。しかし、インボイス登録後は取引先から受け取っている消費税を納付する必要があるため、手取り収入は「10万円」となります。つまり、インボイスに登録したとき、想定される収入減は「1万円」です。
インボイスに登録しない場合
インボイスに登録しない場合は免税事業者のままですから、消費税を納付する必要はありません。
ただし、適格請求書を発行できないことで取引先が仕入税額控除を受けられず、取引先の売り上げが減ってしまう事態が想定されます。その結果、仕入税額控除が受けられない分(消費税1万円)の報酬に関して、値下げ交渉を受けるかもしれません。
また、最悪なケースとして取引先が「免税事業者とは取引しない」という方針に切り替わり、仕事の依頼がゼロになってしまうことが挙げられます。この場合、副業収入がゼロになってしまうことから、取引先の意向はきちんと確認することが重要です。
違法な値下げ交渉には注意
「インボイスの登録はしない」という判断をした場合、取引先から報酬の値下げ交渉を受ける可能性があります。また、インボイスに登録して課税事業者となった後も、取引先と報酬について交渉することもあるでしょう。
以下のような交渉・行為は違法な可能性があるため、安易に応じないように注意しましょう。
・免税事業者であることを理由にして消費税分を支払わない交渉(下請法違反)
・課税事業者になったにもかかわらず、免税事業者であることを前提に行われた単価からの交渉に応じず単価を据え置いて発注する(下請法違反の恐れ)
・課税事業者への転換を迫り、取引価格を一方的に引き下げる行為(独占禁止法の抵触する恐れ)
・課税事業者にならなければ取引を打ち切るなど一方的に通告する行為(独占禁止法の抵触する恐れ)
仕事を発注する側は立場的に弱いことから、法律で保護されていることが分かります。上記のような交渉や行為を受けたら、公正取引委員会での相談も視野に入れるといいでしょう。
まとめ
インボイス制度が始まると、取引先が免税事業者であるケースを除き、登録してもしなくても収入に影響が出ます。場合によっては、取引先から報酬に関する値下げ交渉を受ける可能性があります。交渉の内容に関しては、文面などできちんと保管しておきましょう。
また、インボイスをめぐって不当な交渉や行為を受けたら、公正取引委員会で相談することを検討してみてください。
出典
国税庁 インボイス制度の概要
経済産業省 中小企業庁 インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー