更新日: 2023.09.30 働き方

月給23万円ですが、45時間分の「みなし残業代」が含まれています。「最低賃金」を考えると違法ではないでしょうか?

月給23万円ですが、45時間分の「みなし残業代」が含まれています。「最低賃金」を考えると違法ではないでしょうか?
2023年7月、厚生労働省の審議会は、最低賃金を全国平均の時給換算で41円引き上げると発表しました。過去最大の上げ幅であり、10月から初めて最低賃金の全国平均は1000円を超えました。
 
時給で給料が支払われていれば、自分の給料と最低賃金との比較は容易ですが、会社員など月給制で給料が支払われている場合、簡単に比較できません。本記事では、給料が最低賃金を下回っていないかどうか、確認する方法を紹介します。

最低賃金とは

最低賃金とは、使用者が労働者に対して支払わなければならない最下限の賃金です。最低賃金制度に基づいており、国が最低賃金を地域ごとに定め、毎年10月に改定されています。例えば東京都の場合、2023年10月からの最低賃金は1113円です。
 
もし給料が最低賃金を下回っていた場合、労働者は最低賃金額との差額を請求できます。
 

月給制における最低賃金との比較方法

月給制で給料が支給されている労働者が最低賃金との比較を行う場合、月給の金額を時給換算に直す必要があります。
 
まず会社が定める1日の労働時間を確認しましょう。8時間と定めている会社が多いですが、7.5時間や7時間と定めている会社もあります。
 
次に年間休日日数を確認してください。1年は約52週なので、週休2日制の年間休日は104日となります。多くの企業では、そこに年末年始や祝日(年間16日)などが加わります。それらを合わせると年間休日が120日前後(2021年の平均は115.3日)です。
 
1年は365日ですので、そこから年間休日120日を引くと、勤務日数は245日となります。これを12ヶ月で割ると約20日です。つまり、就業日数は月平均で20日となります。
 
「1日の労働時間(8時間)×月の平均就業日数(20日)」という計算式によって、ひと月あたりの就業時間(160時間)が計算できます。
 
東京都で月給が23万円の場合を例に挙げて計算してみましょう。23万円÷160時間=1438円となり、最低賃金を上回っているので違法ではありません。
 
2023年時点に東京都で働いている月の就業時間160時間の労働者の月給は、最低賃金1113円×160時間=17万8080円を越えていなければ違法となります。
 

みなし残業代とは

では、先ほど取り上げた例で、月給にみなし残業代が45時間分含まれていた場合はどうなるでしょうか。
 
「みなし残業代」とは、みなし残業制度を取り入れている企業が労働者に対して、実際に労働した時間にかかわらず、あらかじめ想定した残業時間分を支給する残業代のことです。
 
つまり、固定で支払われている月給の中に、あらかじめ残業代が含まれていることになります。みなし残業制度を導入すると、社員一人ひとりの残業代を計算する業務が不要となり、事務作業を効率化できます。
 
また、みなし残業制度を導入していない場合、仕事が遅くて残業が増えてしまう社員ほど、残業代で収入が増えるという不条理が発生します。しかし、みなし残業制度を導入すれば残業時間が増えても収入は増えません。また、残業時間が少なかったとしてもみなし残業代が減ることはないのです。
 
その結果、社員には早く業務を終了しようという意欲が生まれ、モチベーションアップにつながります。このようなメリットがあるため、みなし残業制度を導入する企業が増えています。
 

大切なのは月給総額ではなくて基本給

みなし残業制度を導入している場合、毎月の支給額は基本給とみなし残業代とに分けられます。月給を時給換算する場合には、このうち基本給の金額のみを用いて計算しなければなりません。
 
ここで忘れてはならないことは、残業代の時給は2割5分増しとなることです。単純に月給23万円をみなし労働時間(160時間+45時間)で割っただけですと、時給換算で約1122円となり最低賃金を上回っていることになります。
 
今回のケースのように、月給の中に45時間分のみなし残業代が含まれている場合、45時間分の時給は2割5分増しで計算しなければなりません。

※計算式

160時間÷(160時間+45時間×1.25)=74%
(45時間×1.25)÷ (160時間+45時間×1.25)=26%

計算した結果、月給総額23万円のうち、約74%(約17万円)分が基本給であり、約26%(約6万円)分がみなし残業代となります。
 
この数値をもとに時給換算すると、基本給17万円÷ 160時間=約1063円です。これは、東京都の最低賃金である1113円を下回っており、法律違反となります。
 

自分の給料を1度確かめてみよう

今回取り上げた例では一見すると最低賃金を上回っているかと思われましたが、みなし残業が含まれていることを考慮し、正確に計算すると下回っており、違法状態でした。
 
法律を順守した制限ぎりぎりのラインで給料が設定されている場合、最低賃金の金額が変われば、違法になってしまうことが発生する可能性があります。自分の給料について、1度しっかり確かめてみた方が良いでしょう。
 

出典

厚生労働省 最低賃金制度とは
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
厚生労働省 令和4年就労条件総合調査の概況
 
執筆者:老田宗夫
キャリアコンサルタント

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集