更新日: 2023.06.22 働き方
就職先で「新人は2時間前に出社して、先輩のために掃除や準備をするもの」と言われています。これって普通ですか? 残業代は出るのでしょうか?
本記事では、始業前の出社を求められたときに残業代は発生するのか、そもそも違法ではないのか、解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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使用者の「指揮命令下」に置かれていると残業扱いになる
「始業時間の2時間くらい前に来て資料の準備やオフィスの掃除をするのが普通」といった発言は、従業員が使用者の指揮命令下に置かれているといえるかが焦点となります。もし使用者の指揮命令下に置かれていたとなると、労働時間とみなされるので始業前に2時間働いたことになります。
従業員の働きすぎを防止するため労働基準法では労働時間の原則が定められていて、32条により企業は「1日8時間、週40時間」の法定労働時間の範囲内で所定労働時間を設定しています。企業によっては6時間や7時間のところもありますが「法定労働時間=所定労働時間」としているパターンが多いのではないでしょうか。
今回も、所定労働時間が8時間の場合、始業2時間前に出社すると合計1日10時間働く計算になります。法定労働時間を超えるため時間外労働は残業代(割増賃金)が発生します。
「残業=終業後も働くこと」というイメージがあるかもしれませんが、時間帯問わず所定労働時間を超えるかどうかがポイントです。
会社命令かどうかの判断基準
ではどのような状態であれば、使用者の指揮命令下に置かれていて会社命令によるものと判断されるのでしょうか。
最高裁判所は過去の判例で、「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)32条の労働時間に該当する。」としています。
「就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを」となっているので、今回のように始業前に出社して資料の準備やオフィスの掃除を行うことは労働時間にあたるといえるでしょう。
明確な指示がなかったとしても、自分以外の部署メンバー全員が始業前に出社している、上司が毎日2時間早く出社していて断りにくい雰囲気になっている、給与や人事考課に影響が出るような場合は、事実上強制されているといえるかもしれません。
上司や先輩に会社命令かどうか確認する
使用者の指揮命令下に置かれているかどうか明確にするためにも、直接上司や先輩に「これは通常の業務で労働時間に含まれると判断してよろしいでしょうか」などと確認してみましょう。「その通り」などと言われたら労働時間とみなされます。
「そうではない」と言われたら理由を聞き、納得できる説明がない場合は役員や人事部の担当者に確認してもよいかもしれません。念のため雇用契約書や就業規則も用意して所定労働時間や残業規定がどうなっているか確認することをおすすめします。
そこまでする必要があるのかと思われるかもしれませんが、言った本人は深く考えておらず、場合によっては冗談半分で言っている可能性もあります。勤務時間や残業の有無は給料に関係する大事な部分なので、曖昧な状態はできる限り改善しましょう。
まとめ
今回は「新人は始業2時間前に来て掃除や準備するのが普通」と言われたら従わなければならないのか、残業代は発生するのか、解説しました。
早朝出社を求めること自体は違法ではありません。ただし、労働時間とみなすには、使用者の指揮命令下に置かれている必要があります。あいまいな場合は上司や先輩に確認しましょう。また、実際には強制力がなく、自分の勉強のために早く出社している状態の場合は労働時間に含まれない可能性があるので注意しましょう。
出典
厚生労働省 労働時間・休日
裁判所 裁判例結果詳細 最高裁判所判例集 平成7(オ)2029 賃金請求事件
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー