更新日: 2022.12.28 働き方

サービス残業がつらい……どこに相談すればよい?

サービス残業がつらい……どこに相談すればよい?
同僚が遅くまで働いているから、上司に指示を受けたから、誰よりも早く仕事を覚えたいから……さまざまな理由でサービス残業をしてしまっている方がいるかもしれません。
 
そもそも「残業」とはどのように計算されているのか、勤め先でサービス残業が横行していてつらい時の相談先などを解説します。

サービス残業とは

サービス残業とはどういったことをいうのでしょうか。ふと言でいうと、残業をしたのに残業代を支払ってもらえないことをいいます。
 
サービス残業の要因として大きく3つのことが考えられます。
 

1.人件費削減

仕事の量に対して人員が不足しているのに会社が人件費を削るため、新しく人の募集をしない場合は、社員の1人当たりの仕事量が増えます。
 

2. 企業の社風

その企業において、サービス残業をするのが当たり前という雰囲気があるというケースがあります。例えば、遅くまで仕事をしていているのは労働者側の能力がないからとか、自分の仕事が早く終わっていても他の社員が残業しているので、帰りづらい雰囲気がある、などということです。
 

3. 働き方改革

2019年4月に「働き方改革関連法」が施工され、時間外労働(休日労働を含まず)の上限は、原則として1ヶ月45時間、年間360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできなくなりました。しかし、業務量は変わらないので、仕事は終わらず、形ばかり法令に沿う形で退社はするけれど、実際は家に持ち帰って、残業代をつけないで仕事を続ける人がいます。
 
さらに、新型コロナ感染症の影響で、テレワークを導入する会社が増え、勤務時間と勤務外時間の境界線があやふやになっています。昼休みを取らずに仕事を続けたり、定時後も残業代を請求しないで仕事を続けたりする人がいます。
 
なお、サービス残業は、定時後だけではなく、定時前も含まれます。
 

残業代の計算方法

ところで、残業代はどのように計算されるのでしょうか。
 
残業には、「法定時間外労働」と「法定時間内残業」があります。
 
「法定時間外労働」は、労働基準法第32条で「法定内労働」と定められている「週40時間、1日8時間」を超えたときに発生し、企業は割増賃金で支払う義務があります。 
 
一方「法定時間内残業」は、「週40時間、1日8時間」には満たないものの、会社の定めた所定労働時間(定時)をオーバーしたときに支払われます。企業は1時間当たりの賃金で支払えばよく、割増賃金は法定義務ではありませんが、会社によっては、独自に割増賃金を設定している場合があります。
 
「法定時間外労働」の割増賃金の計算方法は、以下のとおりです。
 
1時間あたりの賃金×割増率(1.25※1)×残業時間
 
月給でもらっている人の場合、1時間あたりの賃金の計算方法は、以下のとおりです。
 
(月給-諸経費※2 ) ÷ (1日の所定労働時間(定時))×月平均所定労働日数※3
 
例えば、月給45万円をもらっている人で諸経費が5万円、1日の所定労働時間が8時間、月平均所定労働日数が、20日の人の場合、1時間当たりの賃金は、(45万円-5万円)÷(8時間×20日)で2500円です。残業代(法定時間外労働)が発生した場合は、1時間につき、2500円×1.25※1で、3125円になります。
 

サービス残業の相談先

サービス残業がつらいときは、1人で悩まないでください。相談することで、これまでの残業代を支払ってもらえたり、職場環境が改善されたりする可能性があります。
 
相談窓口は、

・労働基準監督署
・総合労働相談コーナー
・労働条件相談ほっとライン
・法テラス

などがあり、無料で相談にのってくれます。
 
弁護士会では有料で法律相談センターを設置していますが、15分程度であれば無料電話相談もあります。また、社内通報窓口や労働組合がある企業であれば、状況によっては、まずこちらに相談されてもよいかもしれません。
 
サービス残業の相談に行く前に、サービス残業をしている証拠を集めておくと相談がスムーズです。証拠として有効なものとしては、タイムカードや日報などの社内記録、パソコンのログオフ・ログオンの記録、勤務時間を詳細に記録したノートなどがあります。
 

まとめ

残業代を支払うのは、経営者の義務であり、支給されるのは労働者の権利です。自分の仕事が遅いから、他の人もしているからという理由で、サービス残業をすることを当たり前に思わないでください。そして1人で悩まず、友人や家族と話をしたり、専門の相談窓口で相談したりしましょう。
 
(※1)
残業が午後10時~翌日の午前5時の時間帯は、深夜労働となり、その時間帯分の残業代の割増率は、×1.25で、法定時間外労働と合算すると×1.5となります。また休日に働いた場合の割増率は、×1.35です。休日労働では、8時間を越えて働いても時間外労働の法定時間外労働の1.25は加算されません。
 
(※2)
諸経費は、家族手当、通勤手当、住宅手当、単身赴任手当、子女教育手当などがあります。
 
(※3)
月平均所定労働日数の計算は、以下の方法によります。
(1) 年間所定労働日数を算出する。365日(うるう年のときは、366日) - 年間休日(所定休日日数)
(2) 年間所定労働日数÷12ヶ月 所定労働休日は、就業規則や労働契約で企業が決めた日です。
 
たとえば、年間休日が125日の場合の月平均所定労働日数の計算方法は、(1) 365日 - 125日 =240日 (2) 240日÷12ヶ月=20日となります。
 
 
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者

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