更新日: 2022.09.24 働き方
「参事官だから3時間睡眠!?」内閣法制局の残業時間はどうして多くなるのか
執筆者:辻本剛士()
内閣法制局職員の超過勤務時間
内閣法制局に限らず、中央府省庁で働く国家公務員の多くが超過勤務していることが問題になっており、2021年3月に当時の菅政権が「人事管理運営方針」を決定しました。各府省庁職員の勤務時間の把握を求めています。
また、2021年3月19日に参議院議員から政府に対して「官僚の働き方に関する質問主意書」が提出され、これに対する政府からの答弁書によると、2020年12月から2021年2月の3ヶ月間で超過勤務時間が月80時間を超え100時間未満の職員が約3500人、月100時間以上の職員は約3000人いる状況でした。その中で内閣法制局の「月80時間を超え100時間未満の超過勤務職員の人数」や「月100時間以上の超過勤務職員の人数」は図表1のとおりです。
図表1
出典:参議院 第204回国会(常会) 官僚の働き方に関する質問に対する答弁書 より筆者作成
内閣法制局職員の定員は79名となりますので、約10%近くの人が超過勤務状態となっています。なお最も多い府省庁は、厚生労働省の1092人で、新型コロナウイルス感染症の対応によるものから人数が多い傾向となっています。
内閣法制局の残業
内閣法制局は、政府が提出する法律案を審査する役割があります。特に1月から始まる通常国会の会期直前から会期中に通常国会で審議する法律案は、100本前後あり、その審査を一挙に行うため、この時期は午前9時30分登庁、午前2時退庁という過酷な勤務が連日続きます。通常国会で審議する法律案となるため、審査する期間も短い上、拙速な審査も許されません。
実際の審査実務は、内閣法制局の各部に配置されている参事官が担当します。忙しいときになると「3時間」しか睡眠が取れないから「参事官」、また国会閉会中になると仕事時間が「3時間」しかないから「参事官」といわれており、特に通常国会会期中になると多忙を極め、徹夜仕事に堪えられるかが参事官の資質の一つにもなっています。
内閣法制局の残業は財務省主計局の残業とも酷似しており、財務省主計局も予算編成期間の9月から12月の期間は残業が続き、財務省にある仮眠室に寝泊まりして作業を行うことや休日を返上して資料と向き合うことも多いです。
内閣法制局の残業時間を減らすには
内閣法制局は中央省庁の中でも極端な事例ですが、中央省庁全体で超過勤務が現実に起きています。超過勤務の問題を解決させるには、政府が民間企業に実施している働き方改革だけではなく、残業させるような慣習の撤廃や、一つひとつの仕事を精査する必要があるでしょう。
特に残業させるような慣習については、徹夜仕事に堪えることが資質とされるような文化があれば、見直しが必要です。また、人数に対して仕事量が多いこともあるため、その業務が本当に必要な業務なのかを精査するべきでしょう。働きやすい環境を整備しなければ新しく入る公務員も少なくなり、入ってもすぐに辞めてしまいます。
出典
内閣法制局 内閣法制局の概要
内閣官房 令和3年度における人事管理運営方針について
参議院 第204回国会(常会) 官僚の働き方に関する質問に対する答弁書
西川伸一 『立法の中枢 知られざる官庁内閣法制局』(五月書房、2000)
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士