更新日: 2022.08.31 働き方
残業は原則拒否不可。それでも拒否できる6つのケースとは?
原則として、会社は残業を命じることはできませんが、一定の条件を満たせば命じることができます。この場合、従業員の側から残業を拒否することは原則できません。
それでも、従業員が残業を拒否できる6つのケースを解説しましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
1.法的に必要な条件を満たしていない場合
会社は、原則として従業員に残業を命じることはできません(労働基準法32条)。また、毎週少なくとも1回は休日を与えないといけません(労働基準法35条)。
これらに反した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります(労働基準法第119条)。
2つの条件を満たせば残業を命じられる
それでも実際に残業をしている人がいるのは、例外規定が設けられているためです。
以下の2つの条件を満たせば、会社は従業員に残業を命じることができます。
・36協定を締結している
・雇用契約書や就業規則などに根拠がある
これらの条件のうち、1つでも不十分な点があれば残業を拒否できます。
なお、仮にこれらの条件を満たしていた場合でも、残業を命じることができる限度時間は、原則として毎月45時間までです。
繁忙期に入るなど、業務量の大幅な増加がある場合であっても、月100時間を超えることはできません。
2.体調を崩した場合
体調を崩した場合は残業を拒否できます。会社は、従業員を雇用するにあたって安全配慮義務を負うためです(労働契約法第5条)。
体調を崩した場合にまで残業をさせるのは、生命、身体などの安全を確保できないため、安全配慮義務違反になると考えましょう。
3.残業の必要性が低い場合
本来、残業はしてはいけないもので、あくまで一定の条件を満たした場合に例外的に行えるものです。
翌日以降でも構わない業務を、その日のうちに行うように命じられた場合、必要性を欠く可能性があるため断りましょう。
4.妊娠中または出産から1年未満の場合
妊娠中や、出産から1年未満の女性を残業させるのは、れっきとした法律違反です(労働基準法66条)。堂々と断りましょう。
断っても残業を強要された場合は、労働基準監督署か労働問題に強い弁護士に相談し、対応を仰いでください。
マタハラももちろんNG
なお、近年「マタハラ」が問題になっています。残業と直接の関係はありませんが、重要な問題なので触れておきましょう。
マタハラ=マタニティーハラスメントとは、妊娠や出産をきっかけに、働く女性が不当な扱いを受けることです。具体的には、以下のような扱いなどが考えられます。
・解雇される
・契約の更新を見送る
・正社員からアルバイトに降格させられる
・自宅待機を強要される
・減給、賞与の引き下げ
・嫌がらせ
・昇格、昇進の際の不当な評価
これらのマタハラも、れっきとした法律違反です(男女雇用機会均等法9条)。
5.育児や介護をしなくてはいけない場合
小さい子どもを育てていたり、病気などの家族を介護しなくてはいけなかったりする場合も、残業は拒否できます。
ただし、残業そのものを拒否できるケースと、一定時間以上の残業を拒否できるケースとに分かれます。
残業そのものを拒否できるケース
3歳に満たない子どもを養育している場合は、残業そのものを拒否できます(育児介護休業法第16条の8)。
ただし、事業の正常の運営を妨げる場合や、以下のいずれかに当てはまる場合は、拒否できないので注意しましょう。
・引き続き雇用された期間が1年未満の場合
・請求できないことに関して合理的な理由があると認められる場合
一定時間以上の残業を拒否できるケース
以下のいずれかに当てはまる場合は、月24時間、年間150時間を超える残業をさせることはできません(育児・介護休業法第17条、第18条)。
・小学校入学前の子どもを養育している
・要介護状態にある家族を介護している
6.サービス残業を命じられた場合
法律上、会社が労働者に残業をさせた場合、残業代を支払わなくてはいけません(労働基準法37条)。
サービス残業=残業代なしの残業を命じられた場合は、「残業代を支払ってもらえないなら残業はしません」ときっぱり伝えましょう。
アルバイトやパートでも扱いは同じ
残業を命じられる場合と拒否できる場合を列挙してきましたが、正社員だけに限ったことではありません。
アルバイトやパートであっても、一定の条件に当てはまれば、会社が残業を命じること自体は可能です。もちろん、一定の条件に当てはまれば、アルバイトやパートであっても残業を拒否できます。
残業拒否したらクビや処分?
「そんなことをいわれても、残業を拒否したらクビになったり、処分を受けたりするのでは?」と不安な人もいるかもしれません。
しかし、実際にクビや処分を受ける事態にまで発展するケースはまれです。
日本の法律においては、従業員をクビ=解雇したり、処分をしたりすることに対して厳しい制限が設けられています。
残業拒否も例外ではなく、実際に解雇や処分にまで発展するのは、「客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上相当」と判断される場合でしょう。
以下のケースでは、解雇や処分自体が無効になる可能性が高いです。
・正当な理由があって残業を拒否した
・ほかに指導や懲戒をされたことがない
・残業拒否を注意されて真摯(しんし)に反省している
・残業拒否により業務に支障が生じていない
解雇や処分が許されるかどうかは、個々の事情に照らし合わせて判断する必要があります。労働問題に強い弁護士に相談し、アドバイスを仰いでみましょう。
出典
e-Gov法令検索 労働基準法
e-Gov法令検索 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
e-Gov法令検索 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部