医師のオンコールとは? 気になる実態や過ごし方、報酬について解説|ファイナンシャルフィールド

医師のオンコールとは? 気になる実態や過ごし方、報酬について解説

FINANCIAL FIELD編集部

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患者さんが必要なときに適切な医療を提供するために欠かせない「オンコール」。オンコール待機中はどこまで自由にできるのか気になっている人もいるのではないでしょうか。

そこで、医師のオンコール業務の特徴や報酬、オンコール待機中の過ごし方のポイントについて解説します。オンコール待機が少ない診療科や職場も紹介しているので、医師としての働き方を見直したい人は参考にしてみてください。

医師のオンコールとは?

オンコール業務とは、夜間や休日など勤務時間外に院内または院外に待機して、電話で招集がかかったとき診療に駆けつける体制のことをいいます。

医療機関では、患者さんに必要な医療を必要なタイミングで提供する必要があります。近年では、チーム医療の重要性が注目されているものの、医療チームの指示的な立場であるのはまぎれもなく医師になります。

2次医療や3次医療を担う医療機関では、患者さんに必要な医療を提供するために、24時間365日体制が必要になります。特に夜間や休日に、患者さんに急変が起きたり、緊急搬送を受け入れたりすると、どうしても医師数が不足しやすくなるでしょう。

オンコール業務ではこういった状況に備えて医師が待機し、必要時に招集をかけて診療に参加してもらいます。オンコール業務は、患者さんの命や健康を守るために、欠かせないシステムといえるでしょう。

オンコールと宿日直の違い

オンコール業務とよく似たイメージの医師の業務に宿日直があります。宿直とオンコール業務の違いについてみていきましょう。

図表1

宿直 夜間に医師が交代して、医療機関に宿泊して診療や待機すること。いわゆる当直のこと。
頻度は週1回が目安。勤務時間例は17:00~翌8:30など。
日直 休日や祝日に医師が診療するために医療機関に待機すること。
頻度は月1回が目安。勤務時間例は9:00~18:00など。
オンコール 夜間や休日に、医師が自宅または院外に待機し、電話で招集がきたときに診療に参加すること。宅直とも呼ばれる。

筆者作成

上記のように、実際には宿日直でもオンコール業務が含まれています。しかし本記事では、混乱を避けるために、以下にならって解説します。

●オンコール業務:電話招集により医師が診療に参加すること
●オンコール:宅直など院外にいる医師が、電話による招集で診療に参加すること


オンコールで医師に求められるスキル

オンコールでは、医師が担当外の患者さんを診ることもあります。適切な診療を提供するために、医師には以下のようなスキルが求められます。

どんな患者さんでも診れる能力

医師によっては、自分の専門外の病気を診るのが得意じゃない人もいるかもしれません。オンコールで診る患者さんには、自分の診療科の病気だけではなく、複数の病気を抱えていることがほとんどです。

自分の専門の病気を深く診る能力に加えて、専門外の病気の基本的な診療が分かることが望まれます。

チーム内でのコミュニケーション力

普段自分が診ていない患者さんを診療するには、患者さんの情報をしっかり把握することが大切です。患者さんの基本的な診療情報はカルテから取得できるでしょう。

ただ必要な場合は、患者さんの主治医や医療チームにも治療方針や指示を聞けるコミュニケーション能力も欠かせません。

分からないことは相談する行動力

若手の医師であれば、知識や技術が未熟であるために、治療や方針に迷うこともあるかもしれません。

オンコール業務で呼ばれるときは、緊急性が高く、素早い判断が求められることもあります。しかし適切な診療のためには、必要なときに上司に相談する丁寧さも大切です。

医師のオンコールと勤務回数の目安

医師のオンコールの回数は、診療科や医療機関によって異なります。独立行政法人労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、アンケートに回答した医療機関の88.2%が、オンコール待機の働き方を採用していました。

このうち、1ヶ月あたりのオンコール待機の勤務回数は以下のとおりです。

●月1~3回 49.4%
●月0回   29.5%
●月4~6回 14.3%


上記を見ると、医師の半数弱は月数回のオンコール待機をおこなっていることが分かります。また、オンコール待機をしていない医師が3割弱を占める一方で、1割以上の医師が週1~2回の頻度でオンコールをしていることが分かります。

診療科別のオンコールの割合

オンコールの頻度は診療科によってもばらつきがあります。独立行政法人労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によれば、オンコールの回数が多い診療科は以下のとおりです。

●脳神経外科          36.7%
●産科・婦人科         31.3%
●呼吸器科・消化器科・循環器科 30.9%
●外科             29%

 
上記を見ると、患者さんの状態が変化しやすい診療科はオンコールが多くなる傾向があります。また、産科・婦人科では少ない医師数の中で、夜間の出産に対応する必要があるため、オンコールの回数が多くなっています。

院内・院外のオンコール業務が増えると、睡眠やリフレッシュのための時間が少なくなり、医師が健康不安を抱える原因になります。医師として長いスパンで働いていくには、診療科ごとのオンコールの頻度も考慮する必要があるかもしれません。

医師のオンコールは拒否できる?

医師法では、医師には応召義務が定められています。基本的に、医師は求められた際に診療を拒否することはできません。これはオンコールも同様と考えられます。

医師のオンコールは担当制

医師のオンコールは担当制となっており、すべての休日にオンコール待機をしなければいけないというわけではありません。オンコールで呼ばれて勤め先に駆けつけるのは、自分がオンコールを担当した日になります。

しかし、自分の担当日に電話がつながらずに、招集の知らせが分からずに診療に参加できないこともあるでしょう。また当然のことながら、宿日直で院内にいる場合は、オンコール業務が目的なので、必ず診療に参加する必要があります。

進んでオンコールに参加するケースも

医療機関や診療科にもよりますが、希望制で医師のオンコールを回しているところもあります。例えば、画像の読影をおこなう放射腺科では、若手の医師は希望すればオンコールに参加することができます。

特にオンコールでは緊急患者の症例を診れるので、自分の専門分野のスキルアップにつながります。自己研鑽をしたい医師の中には、率先してオンコールに参加している人もいるようです。

オンコール待機中の医師の過ごし方

院外でのオンコール待機の条件は、医療機関によって取り決めがされています。多くの病院では以下のような条件を提示しています。

●招集後に、30分以内に到着できること
●医療機関から半径5km以内にいる
●すぐに診療に参加できる状態であること


上記のポイントを踏まえて、オンコール待機中の過ごし方についてみていきましょう。

規則内であれば行動制限はない

宅直のオンコール待機では、規則内の範囲であれば自由に行動できます。オンコール待機中は夜間や休日中でもあるので、以下のように過ごす人が多くみられます。

図表2

休日のオンコール待機 ・趣味の活動をおこなう
・近場に外出する(外食など)
夜間のオンコール待機 ・仮眠を取る
・自宅で待機する

筆者が作成

休日や夜間にオンコール待機をするときは、家族や恋人、友人などと過ごすこともできます。ただ電話で招集の知らせがきたときには、早めに医療機関へ駆けつけなければなりません。一緒にいた相手からすれば、予定をすっぽかされたと思われてしまうこともあるでしょう。

オンコールの担当日に、自分以外の誰かと過ごす予定があるときは、あらかじめ医療機関へ駆けつける可能性があることを伝えておくのがおすすめです。

また、オンコールで呼ばれることにより、予定や計画が途中でキャンセルになることもあります。大事な予定は、オンコール待機のない日に入れるようにしましょう。

オンコール待機で避けた方が良い行動・場所

オンコールでは、電話で呼ばれたら早めに駆けつける必要があります。宅直のオンコール待機は、宿直よりもある程度の自由がありますが、待機する場所や行動には、ある程度の配慮が必要です。

例えば、オンコール担当日には、飲酒は避けた方がよいでしょう。アルコールの作用により、判断力の低下や医療手技の誤りを招く恐れがあります。何より、ほろ酔い状態で医療機関に行けば、患者さんやスタッフの信頼を損なってしまいます。

また、オンコール待機中に美容室で過ごすのも避けた方がよいでしょう。施術中にオンコールで呼び出される可能性もあります。

常勤の勤務先以外にもアルバイトを掛け持ちしている人は、オンコール待機とバイトの勤務日が重ならないように注意が必要です。常勤先の医療機関からオンコールが来ても、バイト先の診療を投げ出すわけにはいきません。

オンコール待機をするときは、いつでも出勤できるような場所と行動を取るように心がける必要があります。

オンコールにともなう医師の手当・報酬

オンコール業務でもらえる報酬には手当があります。多くの病院では、オンコール業務の手当は以下のように定めています。

図表3

オンコール業務の種類 勤務時間の考えた方 もらえる手当・報酬
宿日直のオンコール業務 勤務時間としてカウントされる 超過勤務手当または宿直手当・夜勤手当・休日手当
院外のオンコール業務 勤務時間としてカウントされない オンコール手当・夜勤手当・休日手当
筆者が作成

あくまで一例ですが、オンコール業務にともなう手当や報酬の目安は以下です。

●宿日直のオンコール業務:宿日直手当として1回1万千円
●宅直のオンコール業務:1回7千円
●非常勤医師のオンコール業務:1回4万円


上記を見ると、宿日直はオンコール待機中も労働時間とみなされるため、1回分の手当てが高い傾向があります。一方、自由度がある宅直のオンコール業務では、1回分の手当てが低めになります。

また非常勤医師の場合では、医療機関の医師数を確保するために、院内・院外の待機にかかわらず、オンコール業務の手当てが高額になります。

なお管理職に付いている医師では、管理職手当が出るため、オンコール手当を支給していない病院もあります。オンコール待機でどのくらいもらえるかを知るには、勤務先の医療機関の規定を確認してみましょう。

医師のオンコールにともなう労働問題

オンコール(宅直)を労働時間として捉えるかどうかは議論がされています。通常、労働時間を数えるには雇用主の指揮監督下にある必要があります。そのため、院外や自宅でのオンコール待機は、労働時間をみなさることはありません。

一方、宿日直により院内でオンコール待機をする場合には、手待ち時間になるため、労働時間とみなされます。

業務内容と報酬がミスマッチ

オンコールでは重症患者や急変患者の呼び出しや、緊急検査や手術があり、激務である傾向があります。その一方で、多くの医療機関では、オンコールは手当のみ支払うため、実質的な報酬が少ない特徴があります。

また、オンコールにより医療機関への呼び出しがなくても、病棟から医師へ診療の指示を仰ぐこともあるでしょう。いわゆる「オンコール問題」は、医師の労働負担の要因として考えられています。

オンコール問題を考えるきっかけとなった事件

院内・院外にかかわらず、医師のオンコール業務に関しては法律により取り決めがされているわけではありません。そのため、慣習的に医師のオンコール業務は労働時間とみなされず、手当が支払われていました。

一方で、「奈良病院事件」により、オンコール業務の労働時間が議論のきっかけとなっています。

図表4

奈良病院事件とは

奈良県立病院に勤務する産婦人科医らが、県にオンコール業務による割り増し賃金の支払いを求め、以下の判決が下された。

●宿直のオンコール業務は、待機時間も労働時間とみなされる
●宅直のオンコール業務は、医師間の取り決めであり、労働時間とみなされない


全国労働基準関係団体連合会 全事例を基に作成

働き方改革で見直される医師のオンコール

近年、医師の過剰な労働時間が社会問題として注目されるようになりました。日本は先進国の中でも、患者1人あたりの医師数が少ない国です。オンコール業務で患者さんに必要な医療を届けるためには、どうしても医師の負担を増やさなければなりません。

これまで多くの病院では主治医制が取られていましたが、オンコール制へ移行する施設も増えています。

オンコールのある働き方のメリット

オンコールは医師の労働負担やプライベート時間犠牲など、デメリットばかりスポットが当たりがちです。しかし、オンコールにはいくつかのメリットもあります。オンコールのある働き方のメリットについてみていきましょう。

仕事のオン・オフがはっきりする

これまで多くの病院では、主治医制が取られていました。主治医制では、自分の患者さんに異変が起これば、担当医が対応しなければなりません。病院から呼ばれることはなくても、患者さんの診療指示を伝える必要も度々あります。

オンコール制を取れば、自分の担当日以外は他の医師に自分の患者さんを診てもらうことができます。オンコールの担当日でなければ、基本的に病棟から電話がかかってこないので、ゆっくり休日を過ごせるでしょう。

プライベートの予定が立てやすくなる

主治医制では、休日であればいつでも・どこでも病院から連絡が来る可能性があります。特に、研修医のように若い医師では一番に電話で相談されるでしょう。

オンコール制では、自分の担当日以外に診療に駆けつける必要もなければ、病院から連絡が来ることもありません。診療のない休日も、自分の好きなように予定を立てられます。

休日に趣味や家族との時間をきちんと取りたい人や、アルバイトに励みたい人は、主治医制ではなくオンコール制を取っている病院で働くのが適しています。

女性医師が仕事を続けやすい

女性は結婚後に、出産・育児によりフルタイムの仕事の継続が難しい特徴があります。特に、医師の仕事は労働時間が長く、仕事復帰が難しいでしょう。

オンコール制では、待機中の労働時間があいまいになりやすい一方で、勤務日とそうでない日を明確にしやすくなります。小さい子どもを抱える女医も、主治医制よりもオンコール制のある方が医師の仕事を続けやすいメリットがあります。

オンコールが少ない職場と医師の働き方

医師のオンコールにはデメリットやメリットがある中で、オンコールが全くない医療機関で働きたいと考える医師もいるかもしれません。診療科や医療機関の選び方によっては、オンコールを少なくすることができます。

ここでは、医師のオンコール業務が少ない診療科や職場の特徴についてみていきましょう。

内科系の診療科

内科のように、患者さんの病態が比較的落ち着いている診療科では、オンコール待機が少ない傾向があります。

ただ同じ内科系でも精神科では、夜間や休日にも強制入院や措置入院の手続きで呼ばれることがあります。内科の中でもオンコール待機が多いので注意が必要です。

クリニックや診療所

病床のないクリニックや診療所は一般外来が中心となるので、オンコール業務が少ない傾向があります。一部のクリニックでは、夜間や休日に急患の対応もしています。ただ規模が小さいため、医療処置も応急処置や病院への搬送が主な業務になります。

なお、訪問診療をおこなっているクリニックや診療所では、オンコール業務が発生する可能性があります。特に、終末期の患者さんの診療では、急変やお看取りのために患者さんの自宅に駆け付ける必要があります。

若手医師が多い病院

大学病院や総合病院では、患者さんの急変や病棟業務によりオンコールで呼ばれることが多くなります。しかし規模の大きい病院では、医師の序列ができていることがほとんどです。

オンコール業務は、研修医のような若手の医師が対応するので、ある程度経験年数を積んだ医師であれば、直接電話がかからない方が多いでしょう。ただ、緊急オペなど高いスキルの必要な診療では、ベテラン医師が呼ばれることもあります。

非常勤医師

非常勤医師とは常勤医師以外の医師のことで、パートタイム医師やフリーランスの医師を指します。常勤医師と掛け持ちするアルバイトではなく、パートタイムやフリーランスにすれば、オンコール業務が免除になることがあります。

ただ医師が非常勤で働くときは、業務内容をよく確認した上で求人を選びましょう。応募先の仕事内容の中には、病院のオンコール待機を募集していることもあります。

ただ非常勤医師のオンコール待機は手当が高額であるため、アルバイトで効率的に稼ぎたい医師にはおすすめです。

医師のオンコールの負担が大きい場合は転職もあり

診療科や医療機関によっては、医師本人の工夫だけではオンコール業務を減らせないことがあるでしょう。休日や夜間のオンコールで辛い思いをしている人は、転職を検討するのも1つの選択肢です。

近年、医師の働き方が多様化し、さまざまな環境で医師として仕事を続けることができます。医療機関の中にはオンコールがない・または少ない診療科や施設もあります。オンコールの負担を軽くしたい人は、新しい職場で働いてみるのもよいでしょう。

出典

独立行政法人労働政策研究・研修機構 勤務医の就労実態と意識に関する調査
全国労働基準関係団体連合会 全事例

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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