更新日: 2019.09.09 その他資産運用
債券投資におけるリスクとは? 投資方針はどうあるべきか?
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。
債券投資のリスク
債券投資のリスクには主に次のものがあります。
(1)価格変動リスク
(2)信用リスク
(3)流動性リスク
(4)カントリーリスク
(5)為替リスク
まず、それぞれのリスクについて、一つひとつ解説してみたいと思います。
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価格変動リスク
債券の価格変動リスクとは、既発債の市場価格が、市場金利の変動に応じて変わることを言います。通常、債券の価格は金利と逆の動きをすると言われています。
金利低下→債券価格上昇、金利上昇→債券価格低下。
債券価格100円、利率4%の債券の場合
市場金利が4%から5%に上昇すると、4%の債券よりも5%の預金の方が利率が良くなるため、債券を処分して銀行預金に乗り換える人が増え、債券価格は下落する。
逆に市場金利が4%から3%に下落すると、3%の銀行預金よりも4%の債券の方が利率が良くなり、債券を買う人が増えて債券の価格が上がる。
信用リスク
信用リスクとは、債券の発行体が破綻または財務状態が悪化することによって、債権の回収ができない状態に陥る危険性を言います。信用度の高い債券ほど、債券価格が高く、利率は低くなります。逆に信用度の低い債券は、債券価格は安く、利率は高くなります。
信用リスクを調べるための手段の一つとしてS&P(スタンダード&プアーズ)、Moody’s (ムーディーズ)などの格付会社による信用格付けを調べる方法があります。信用格付けは債券の発行体の財務状況や収益性等を総合的に調査して決定されます。
流動性リスク
流動性リスクとは、市場で取引高が少なくなることにより、債券を換金しようとしても換金できなくなる、希望の価格で売却できなくなる可能性を言います。
流動性リスクが発生する原因としては、大暴落や戦争や自然災害等の異常事態により取引が極端に制限される場合、または、市場性のあまりない債券に対し購入者がつかず通常の取引ができなくなる場合が挙げられます。
カントリーリスク
「国の信用リスク」を言います。外国の資産に投資する場合、その国特有の事情による市場動向の変化により、正常な取引ができなくなったり制限されたりすることがあります。
具体的には、制度変更、外資規制など国の政策によるものや、政治不安、社会不安、インフレ、債務不履行、ストライキ、テロ、紛争、内乱、革命、自然災害などによるものが挙げられます。
為替リスク
為替リスクとは、為替相場の変動によるリスクを言います。これは外貨建て資産または負債の保有者が為替相場の変動(下落・上昇)によって為替差損・差益を被る可能性です。
米ドル、ユーロ、日本円など、いわゆるハード・カレンシーの為替リスクと途上国通貨、いわゆるソフト・カレンシーの為替リスクでは、その性格が違うことも考慮に入れる必要があります。
ハード・カレンシーでは急激な変動は起こりにくいのに対し、ソフト・カレンシーの場合は、脆弱な財務状態やカントリーリスク等により、急激な為替変動をもたらす可能性があります。
まとめ
債券投資のリスクとその特徴をまとめると次の通りとなります。
(1)債券は元本確保商品と元本変動商品の両者の性質を兼ね備えた商品である。
償還日まで待てば発行通貨ベースでの利率・運用益は確保できるが、既発債を市場で売買する場合、価格は変動する。既発債の市場価格は、市場金利、償還日までの期間等によって変動する。
(2)国債の場合はカントリーリスク、社債等の場合は発行体の信用リスクがあるので、国であれ企業であれ、それぞれの信用リスクをきちんと評価する必要がある。
(3)外貨債券に投資する場合、為替リスクを常に考慮する必要がある。ソフト・カレンシーの場合はさらにリスクが高い。
債券投資における方針は次の通りと言うことができます。
(1)金利の高低だけで投資の是非を判断するのではなく、発行体の信用リスク(国債の場合はカントリーリスク)と為替リスクを見極めながら投資商品を決める。
(2)償還日まで待てば、発行通貨建てでの利回りが保証される点をリスクヘッジとして、為替と債券価格の変動に応じて運用益を得ることを考える。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー