更新日: 2020.06.02 控除

103万円の壁に変化はある? 配偶者控除の改正ポイント

執筆者 : 柘植輝

103万円の壁に変化はある? 配偶者控除の改正ポイント
「配偶者控除」は、納税者に控除対象配偶者がいる場合に、一定額の控除を受けられる制度です。最近改正されたのをご存知でしょうか? 今回は、配偶者控除・配偶者特別控除の概要と改正点について紹介します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

配偶者控除とは?

配偶者控除とは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に、一定の金額の所得控除が受けられる制度のことです。この控除対象配偶者となる人は以下の要件を満たしていなければなりません。
 
(1)民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人を除く)
(2)納税者と生計を一にしていること
(3)年間の合計所得金額が38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと

 
ただし、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1000万円を超える場合は、控除を受けられません。
 
ここで、配偶者控除を受ける場合の例を示します。令和元年分について、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が500万円で、配偶者が一般の控除対象配偶者の場合、控除額は38万円になります。

配偶者特別控除とは?

配偶者特別控除とは、配偶者の所得金額が38万円(令和2年分以降は48万円)を超えていて配偶者控除を受けられない場合に、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除を受けられる制度です。
 
配偶者特別控除を受けるための要件は、配偶者控除を受けるための要件とほぼ同じですが、以下の点に注意が必要です。
 
<配偶者特別控除の注意点>
・合計所得金額が38万円超123万円以下(令和2年分以降は48万円を超え133万円以下)であること
・配偶者が配偶者特別控除を適用していないこと
 
ただし、配偶者特別控除も配偶者控除と同じく、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1000万円を超える場合は、控除を受けられません。

いつから改正?

配偶者控除と配偶者特別控除の配偶者の所得要件が変わったと、ニュースなどで知った方も多いと思います。注意しなければならないのは、新しい所得要件は、令和2年分の所得から適用されるということです。

今までの制度との変更点はどこ?

配偶者控除と配偶者特別控除の控除対象配偶者の年間の合計所得金額は以下に変更となりました。
 
<配偶者控除の主な変更点>
・配偶者の所得要件が10万円増え、「48万円以下」になります。
 
<配偶者特別控除の主な変更点>
 ・配偶者の合計所得金額の要件が「48万円超133万円以下」になります。

103万円の壁が変化する?

配偶者控除には、よく耳にする103万円の壁というものが存在します。配偶者の年間の合計所得金額が給与のみの場合、その給与収入が103万円を超えると、配偶者控除を受けることができません。
 
この要件に変わりはません。配偶者控除の給与収入額の要件「103万円」に、変更はないからです。なお、この「103万円の壁」については、さまざまな視点で考えてみることも、おすすめします。
 
たしかに、一般のご家庭にとって38万円の控除額は大きいかもしれません。しかし「103万円を超えるほどは働かない」という選択肢は、妻(または夫)の将来のキャリアや夫婦の生活設計にとって本当に得策なのでしょうか。
 
今は38万円の控除額を失うことは大きいけれど、「キャリアを絶つことのリスク」「働く意欲の持続」についても十分に検討するのも考え方かもしれません。
 
数年後は103万円の壁を乗り越えている可能性もあるからです。103万円という控除額だけで考えるのではなく、ご夫婦の生活やキャリアについての考え方などを含めて、ロングスパンで見る目を持つことも大切です。

まとめ

今回の配偶者控除・配偶者特別控除の改正を機に配偶者控除・配偶者特別控除に関する知識を国税庁のサイトを見るなどして深め、これからの家計の負担を減らせるようにしておきましょう。
 
[出典]国税庁「家族と税」
 
執筆者:柘植輝
行政書士