更新日: 2020.04.06 控除

禁煙治療も医療費控除の対象になる? 医療費控除の対象とは?

禁煙治療も医療費控除の対象になる? 医療費控除の対象とは?
確定申告の時期になりました。医療費控除の中で、「これも対象? 」という、意外と知られていない項目があります。禁煙治療もその一つです。今回は、医療費控除において、禁煙治療を中心にした、その他の見落としがちな項目を確認していきます。
 
井上美鈴

執筆者:井上美鈴(いのうえみすず)

ファイナンシャル・プランナー,ライフシンフォニア 代表

~シングルマザー・子育て世代にお金の話をわかりやすく伝えるFP~
家計管理・公的制度の紹介・教育費や老後資金の貯め方・奨学金・投資などすぐに役立つお金の話」を分かりやすく伝えるFP。
 
漠然としたお金の不安を感じる時間をなくし、「子育てという限られた貴重な時間」や「自分自身が望む豊かな時間」を大事にしてもらいたいという思いで活動している。
 
離婚後3年で教育資金を貯めた、自らのシングルマザー体験が強み。
 
金融機関(証券会社・銀行)・公立学校事務員・派遣会社コーディネーター等のさまざまな仕事を経験。現在、大学生の子どもを育てるシングルマザー。
https://lifesinfonia.com

医療費控除の対象になるもの

医療費控除は、前年(1月1日から12月31日)に、家族の分も含めて、支払った医療費の合計が10万円、または、その年の総所得金額等が200万円未満の人はその5%の金額以上であれば、確定申告をすることで納めた税金が還付される制度です。
 
この際、医療費を合計できる家族とは、生計を一にしていることが条件ですが、家族の中の誰が申告するかということや、扶養の状況、所得は問われません。なので、1番節税になる人の名前で申告するとよいでしょう。
 
注意しなければいけないのは、病院に行き診療や治療を受けたからといって、すべてが医療費控除の対象になるわけではありません。
 
次の表で、対象となる医療費を確認していきましょう。


(※1)より一部引用
 
医師などの送迎費用や、6ヶ月以上寝たきりの方のおむつ代(医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要)、療養上の世話をしてもらうために依頼した人に支払う世話の対価(原則として親族以外の家政婦等人的役務の提供を業とする者)も対象です。
 
また、通院の際の交通費(電車・バスの公共機関)、公共機関を利用できない場合や急を要する場合のタクシー代、レーシック手術、医師の治療を必要とするメガネ・コンタクト購入(白内障・緑内障など)、不妊治療も対象になります。対象にならないと思い、見落としている項目もあるのではないでしょうか。
 
また、対象になりそうでならないものは、インフルエンザの予防接種や、病気が見つからなかったときの健康診断や人間ドックの費用、通院に自家用車を利用した時のガソリン代、近視・遠視のコンタクトやメガネの購入費、美容のための歯の矯正、病気予防で購入したサプリメント、入院時の自己都合の差額ベッド代です。申請する際はよく確認しましょう。

禁煙治療も医療費控除の対象っていうのは本当?

上の表に明記されていないため分かりづらいのですが、禁煙治療を受けた場合の医療費が、医療費控除の対象になるというのはご存知でしょうか?
 
ここでいう禁煙治療とは、医師の指導のもとで実行されるものです(※2)。自由診療(全額自己負担)で受けた禁煙治療費も、「医師による治療」とみなされ医療費控除の対象になります。
 
ただし、自主的に禁煙しようとニコチンガムなどの禁煙補助薬を薬局などで購入した場合は、医療費控除の対象になりません。その場合は、医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)を検討すると良いでしょう。
 
なお、医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできませんので、どちらかを選択する必要があります。
 
2018年のたばこ税や2019年の消費税の増税、オリンピックに向けての街やオフィスでの禁煙化の動きから、ここ数年で禁煙をされた方も多いのではないでしょうか。禁煙治療を受けられた方は、医療費の計算の際にはしっかりと加えてください。
 
2020年・2021年もたばこ税が増税される見通しです。禁煙は健康面だけでなく、たばこ代の負担がなくなり、たばこ税のほか、医療費控除を受けることで所得税、住民税の「節税」にもなり、良いことづくしです。
 
また、余談ですが、お住まいの市区町村や加入している健康保険で禁煙治療に対して補助金を支給しているケースもあります。こちらも併せて確認してみてください。

その他の控除対象

上記の禁煙治療のように、医療費控除には、健康増進のための対象項目が他にもあります。

スポーツクラブ・フィットネスクラブ利用料

厚生労働省の認定した、全国に343ヵ所ある運動型健康増進施設での施設利用費(月会費)が医療費控除の対象になります(※3)。糖尿病、高血圧、脂質異常症、虚血性心疾患等の疾患があるなど、医師により運動をする必要があると判断され「運動療法処方箋」があることが条件です。

温泉療法の利用費と交通費

医師が発行する「温泉療法指示書」があり、厚生労働省が定める一定条件の基準を満たした全国22カ所ある温泉利用型健康増進施設(※4)、または全国27カ所ある温泉利用プログラム型健康増進施設(※5)で、温泉療養および運動療法を行った場合は、施設利用料と指導料、施設までの往復交通費が控除の対象になります。

今まで申告していなかったら?

このように、意外なものが医療費控除の対象になります。確認してしっかり確定申告しましょう。ただし、単なる美容や予防、疲労回復のための費用は対象外ですので注意してください。
 
また、うっかり医療費控除を申告していなかった場合は、5年前までさかのぼることができます。税務署に行き、過去に確定申告をしている場合は更生申告、確定申告自体をしていない場合は還付申告をするとよいでしょう。
 
出典
(※1)国税庁 「医療費控除を受けられる方へ」
(※2)厚生労働省 e-ヘルスネット「禁煙治療ってどんなもの?」
(※3)公益財団法人 日本健康スポーツ連盟 厚生労働大臣認定健康増進施設(運動型)一覧表(令和2年1月25日現在)
(※4)厚生労働省 温泉利用型健康増進施設一覧(令和元年7月1日現在)
(※5)厚生労働省 温泉利用プログラム型健康増進施設
 
参考 たばこ税等に関する資料
 
執筆者:井上美鈴
ファイナンシャル・プランナー,ライフシンフォニア 代表


 

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