更新日: 2020.03.12 控除

医療費控除とどっちがお得? セルフメディケーション制度を知ろう!

執筆者 : 田久保誠

医療費控除とどっちがお得? セルフメディケーション制度を知ろう!
確定申告の時期がやってきました。今回は、2017年よりはじまった「セルフメディケーション税制」について詳しく見てみましょう。
田久保誠

執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)

田久保誠行政書士事務所代表

特定行政書士、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員

行政書士相談センターの相談員として、相続等の相談業務や会社設立、許認可申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。

セルフメディケーション税制の現状

2017年にスタートしたセルフメディケーション税制ですが、5年間の期間限定の制度ですので、利用できるのはあと2年です。
 
2019年の日本一般用医薬品連合会/日本OTC医薬品協会の調査によると、制度の認知度は71%ですが、2018年の利用実績は約2万6000人にとどまっており、全確定申告者における制度利用者は0.12%にとどまっています。

セルフメディケーション税制の利用条件、医薬品の範囲

セルフメディケーション税制は、「健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の取組をしていること」が前提であり、具体的には、
 
(1)保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
(2)市町村が健康増進事業として行う健康診査
(3)予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
(4)勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
(5)特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
(6)市町村が健康増進事業として実施するがん検診
 
のうち1つ以上を受けていることが必要です。
 
医療費控除は原則として、病院での診療代や処方された薬代などの年間の医療費が世帯で10万円を超えた場合が対象ですが、セルフメディケーション税制は毎年1月から12月までの1年間に対象のスイッチOTC医薬品を1万2000円以上購入した場合に、所得税と住民税の控除が受けられる医療費控除の制度ですので、あまり病院に行かないという人ほど、この制度を利用することにメリットがあります。
 
つまり、医療機関を受診した場合だけでなく、市販薬でセルフケアした場合も、領収書・レシートを保管するようにしましょう。ドラッグストア等で購入した医薬品のどれがセルフメディケーション税制の対象なのかは、レシートの対象商品に他の商品と区別できるように明示されています。
 
次の5点が記載されていることを確認してください(手書きの領収証も同様です)。
(1)商品名
(2)金額
(3)商品によってはロゴで記されている場合もあります


(4)販売店名
(5)購入日
 
対象となるスイッチOTC医薬品とは、要指導医薬品と一般用医薬品の中で、通常医師が処方する医療用医薬品から転用された特定の市販薬のことで、2020年1月28日現在対象医薬品は1787品目です。
 
その種類は、目薬、湿布、軟膏、解熱剤、せき止め薬など広範囲にわたります。病院に行くほどではなく、薬を購入して対処しようと考えた時、数ある市販品の中から対象商品を選ぶことでセルフメディケーション税制を利用できます。
 
セルフメディケーション税制の対象商品は、厚生労働省のホームページで確認できます。また、対象商品は数カ月に一度更新されていますので、購入時のリストに入っていなくても、確定申告までに追加されていたら対象となりますので、領収書はすべて取っておくのが賢明です。

セルフメディケーション税制の申告方法

セルフメディケーション税制の適用を受けるためには、下記の書類の提出が必要です。
 
(1)セルフメディケーション税制を適用し計算した確定申告書
(2)セルフメディケーション税制の明細書
(3)一定の取組を行ったことを明らかにする書類(提示によることもできます)
 
もし、記入方法等が分からなければ、所管の税務署の相談窓口へ出向き、アドバイスを受けながら作成・提出すると良いでしょう。
 
申告時に領収書の添付または提示の必要ありません。ただし、明細書の記入内容の確認のため、確定申告期限等から5年間、税務署から領収書の提示または提出を求められる場合がありますので、領収書はご自宅等で保管してください。(令和元年分の確定申告までは、領収書の添付または提示することもできます)。

医療費控除と比較して有利なほうを利用しましょう

前述のとおり、医療機関でかかった医療費と医療費控除の対象となる市販薬の購入費等を合算して10万円を超える場合は、通常の医療費控除が受けられます。
 
しかし、医療費控除とセルフメディケーション税制は同時に申告できないため、どちらの制度を利用するかは控除額を計算して、「より有利なほう」を選ぶようにしましょう。
 
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表