更新日: 2020.04.06 その他税金
パートタイム主婦(主夫)にかかる税金と「103万円の壁」その1
103万円の壁の節税メリットを考える場合、パートタイム主婦自身の収入に課税されるか否かということと、世帯主(本稿では扶養者である夫)が配偶者控除または配偶者特別控除を受けられるかの2点を分けて考える必要があります。
その1では、パートタイム主婦自身の収入への課税について見ていきましょう。なお、パートタイム主婦という言葉を使っていますが、状況に応じて「パートタイム主夫」(扶養者は妻)と読み替えていただければと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。
パートタイム主婦の収入に課税される分岐点は?
パートタイム主婦の収入に所得税がかかるかどうかの分岐点は、給与収入103万円を超えるかどうかです。給与収入から給与所得控除(55万円)と基礎控除(48万円)を引き、残った金額(給与収入103万円超)に所得税がかかります。
例えば給与収入103万円の場合は、以下の通り課税所得は0円となります。
給与収入 103万円
給与所得控除 △55万円
基礎控除 △48万円
課税所得金額 0円
(注)上記の控除額については、2020年から適用される数値を使っています。2019年以前は給与所得控除額 65万円、基礎控除額38万円となりますが、課税所得金額は変わりません。
収入が103万円を超えると、その超過した課税所得金額に対して5%の所得税がかかります。また住民税の場合は控除額が異なり、給与収入が100万円を超えると、超過金額に対して10%の住民税が課税されることになります。
ここでは120万円の給与収入を例に、税額を計算してみます。
<給与収入120万円の場合の所得税額>
課税所得 120万円-55万円-48万円=17万円
所得税額 17万円×5%=8500円
<給与収入120万円の場合の住民税額>
課税所得 120万円-55万円-45万円=20万円
住民税額 20万円×10%=2万円
支払税額合計は、所得税8500円+住民税2万円 =2万8500円 となります。
以上をふまえ、103万円から120万円に収入が増した結果を計算してみましょう。
先ほども申し上げた通り、住民税は収入100万円を超えたらかかるため、103万円の時点で(103万円-100万円)×10%=3000円を納付しています。ここでは税金の増加額を算出するため、3000円は差し引きます。
収入増 120万円-103万円=17万円
税金増 2万8500円-3000円=2万5500円
税金を考慮した場合の純増額は17万円-2万5500円=14万4500円となり、その分手取りが増えたということになります。
まとめ
パートタイム主婦が働いて税金が課せられるかどうかの分岐点は、所得税では103万円、住民税では100万円です。必ずしもその分岐点を超えたら、パートタイム主婦の方にとって「損」というわけではありません。税金は超過分のみかかりますので、税金を払ったとしても手取りは増加するからです。
ということは、「103万円の壁」は世帯主の収入に対して、節税メリットがあると言えそうです。その2では扶養者の節税メリットを検証してみたいと思います。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー