扶養家族ってどこまでの親族?そもそも扶養って?基本をおさらい

配信日: 2019.12.24

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扶養家族ってどこまでの親族?そもそも扶養って?基本をおさらい
扶養には、配偶者や親、子どもなどの家族を入れることができますが、扶養に入れることのメリット・デメリットがあります。あわせて、親を扶養に入れる際のデメリット、条件、手続き方法もご紹介したいと思います。
大堀貴子

執筆者:大堀貴子(おおほり たかこ)

CFP(R)認定者 第Ⅰ種証券外務員

2008年南山大学法学部法律学科卒業後、大手証券会社で、営業として勤務。主人のタイ赴任がきまり、退社。3年間の在タイ中、2人をタイで出産、子育てする。本帰国後、日本で3人目を出産。現在、3人の子育てと長女の国立小学校受験に奮闘中。子供への早期教育の多額の出費、住宅ローン、子供の学資資金、また老後資金準備のため、いろいろな制度を使って、資産運用をしています。実際の経験を踏まえた、お金に関する、役立つ情報を発信していきたいと思います。

扶養とは? 2つの扶養「税法上の扶養」「社会保険上の扶養」のメリット・デメリット

「税法上の扶養」とは、納税者が家族を扶養している場合、所得税の控除対象となる扶養家族の人数や年齢により、一定金額を課税所得から控除することができることをいいます。
 
この控除をすることで、所得税と住民税を減らすことができます。そして、控除することによるデメリットも特にありません。
 
一方、「社会保険上の扶養」とは、会社員・公務員の扶養者の厚生年金保険(配偶者のみ)と健康保険の扶養に入ることです。社会保険上の扶養に入ると国民年金保険料と健康保険料、介護保険料を自分で支払う必要がありません。(65歳以上から介護保険料が年金から天引きとなってしまい支払う必要があります)。
 
国民年金保険の扶養に入れられるのは配偶者のみのため、以後「健康保険上の扶養」とします。なお、自営業の方は扶養に入れることはできません。
 
親が自分で健康保険料を支払う場合、例えば、年金収入年間176万円(厚生年金)の父と年金収入78万円の母の世帯なら、(会社員だった父と専業主婦だった母を想定)、世帯あたり月額6900円(東京都世田谷区、年間8万2800円)を親が支払うことになります。扶養に入れると、この保険料の支払いが不要になります。

扶養の範囲

では、どこまでの家族を扶養家族として扶養に入れることができるのでしょうか?また、扶養にいれた場合はいくらまで控除を受けられるのでしょうか?
 
■税法上の扶養
・扶養親族
(1)配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の婚族)または都道府県知事から養育を委託された里子や市町村長から養護を委託された老人
 
6親等内の血族及び3親等内の婚族とは、例えば本人の従兄弟・伯叔父母、父母、配偶者の父母、曾祖父母などが含まれます。配偶者の従兄弟や伯叔父母は含まれません。
 
(2)納税者と生計を一にしていること(別居でもOKだが控除額は異なる)
 
(3)合計所得金額が38万円以下(令和2年以降は48万円以下)またはパート・アルバイトなどの給与収入のみは103万円以下
 
(4)青色申告者の専業専従者として一度も給与の支払いを受けてないことまたは白色申告者の専業専従者でないこと
 
<扶養控除額の金額>

70歳以上の扶養親族は、同居しているかどうかで控除額が異なりますが、入院等で別居している場合も同居とみなすことができます。
 
・配偶者控除
配偶者控除は、納税者の配偶者のみに適用される控除で、控除額が優遇されています。
控除を受けるには、納税者本人の合計所得金額が1000万円以下である必要があります。
 
(1)法律上の配偶者(事実婚等は不可)
(2)納税者と生計を一つにしていること(別居でもOK)
(3)合計所得金額が38万円以下(令和2年以降は48万円以下)またはパート・アルバイトなど給与収入のみの場合は103万円以下
(4)青色申告者の専業専従者として一度も給与の支払いを受けてないことまたは白色申告者の専業専従者でないこと
 
<配偶者控除額の金額>

 
・配偶者特別控除額
配偶者控除が受けられず、合計所得が38万円超123万円以下(令和2年以降48万円超133万円以下)の方は、配偶者特別控除を受けることができます。

 
■健康保険上の扶養(協会けんぽの場合)
税制上の扶養と異なり、事実婚の妻も対象になるのが特徴です。
扶養家族は以下のいずれかを満たす人となります。
 
(1) 父母、祖父母などの被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
 
(2) (1)以外の被保険者の収入により生計を維持されている三親等以内の親族、配偶者または事実婚上の妻の父母と子ども
 
なお、(1)はの人は被保険者と別居でも対象となりますが、(2)の人については被保険者との同居が条件となります。
 
扶養に入るためには、収入基準も満たす必要があります。
 
・同一世帯の場合、年間収入が130万円未満(※)かつ被保険者の年間収入の2分の1未満
・同一世帯でない場合、年間収入が130万円未満(※)かつ被保険者からの援助による収入額より少ない収入
※60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある場合は年間収入が180万円未満
 
年間収入は、過去の収入ではなく、扶養に入れる日以降の年間の見込み収入額です。また、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金、出産手当金も含まれます。
 
給与所得等の収入なら月額10万8333円以下、雇用保険の受給者なら日額3611円以下であることの条件も満たす必要があります。なお、会社の健康保険組合により異なる可能性があるため、自分の会社の健保に確認しましょう。

扶養に入れるための手続き方法

家族を扶養に入れることになった場合、会社員であれば会社への届け出が必要になります。
 
■税制上の扶養
扶養に入れる年の最初に給与支払を受ける日の前日までに、会社に届け出る必要があります。
 
会社から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を受け取り、必要事項を記載して提出します。【主たる給与から控除を受ける】の欄に扶養する者の名前、個人番号、住所、収入額等を記載します。
 
また、70歳以上の親族を扶養に入れる場合は【□老人扶養親族】にチェックし、さらに同居なら【□同居老親等】にチェックします。
 
<必要書類>
・勤労学生控除を受ける場合は、勤労学生に該当する旨の証明できる書類
・海外にいる親族は、「戸籍附票の写し」または「パスポートの写し」「外国政府発行の住所の記載がある書類」
・海外にいる親族は送金関係書類
 
■健康保険上の扶養(協会けんぽの場合)
扶養する者を追加するとき、会社経由で書類を提出します。
 
<必要書類>
被保険者と扶養する者双方のマイナンバーが届けに記載され、会社が相違ないことを確認している場合は、以下の種類は不要です。
 
・扶養する者の戸籍謄本または戸籍抄本(被保険者との続柄が分かるもの)
・住民票の写し(コピー不可・個人番号の記載のないもの)
 
<収入基準判定のための必要書類>
税制上の扶養に入っている場合は会社が証明すれば、以下の書類は不要です。また、16歳未満も不要です。
 
・退職したことにより収入要件を満たす場合
「退職証明書」または「雇用保険被保険者離職票のコピー」
・雇用保険失業給付受給中の場合または雇用保険失業給付の受給終了により収入要件を満たす場合
「雇用保険受給資格証のコピー」
 
・年金受給中の場合
現在の年金受給額が分かる「年金額の改定通知書等のコピー」
 
・自営業による収入、不動産収入がある場合
直近の「確定申告書コピー」
 
・上記以外の収入がある場合
課税(非課税)証明書
 
・障害年金、遺族年金、傷病手当金、出産手当金、失業給付等の非課税対象となる収入がある場合
「受取金額の分かる通知書等のコピー」
 
<別居している場合の必要書類>
16歳未満または16歳以上の学生は、以下の書類は不要です。
 
・仕送りが振込の場合
「預金通帳等の写し」
・送金の場合
「現金書留の控え(写し)」
 
<事実婚の場合>
・双方の戸籍謄本または戸籍抄本
・被保険者世帯全員の住民票(コピー不可、個人番号の記載がないもの)
 
戸籍謄本(抄本)、住民票は発行から90日以内のものを提出するようにしましょう。

親を扶養に入れるべきか?

税制上の扶養は、扶養に入れることで所得税・住民税が減りかつデメリットがないため、条件を満たしているならば扶養に入れた方が良いでしょう。
 
一方、健康保険上の扶養については、高齢になるほど医療費が高額になる可能性が高いため、「毎月の親の健康保険料」か「親の収入での高額療養費制度の毎月の上限額」をてんびんにかけて判断する必要があります。
 
「高額療養費制度」は、健康保険で入院など医療費が高額になったときに、負担限度額以上のお金が還付される仕組みです。扶養者の収入によって限度額が決まっており、扶養者の年収が高いほど自己負担限度額が大きくなります。
 
そのため、特に年収が高い方は親を扶養に入れる際は注意が必要です。親が高額医療にかかった際、75歳未満の収入の少ない親が被保険者になっている方は負担限度額が小さくなっていますので、自分の扶養に入ると負担限度額が引き上がってしまうからです。
 
なお、75歳以上になると自動的に「後期高齢者医療保険制度」に加入し、健康保険の扶養には入れなくなります。
 
<高額療養費 自己負担限度額(協会けんぽ)>

 
例えば、70歳未満で年金収入のみの標準報酬月額26万円以下の親であれば、自己負担限度額は5万7600円ですが、標準報酬月額53万円の方が親を扶養に入れて親に高額医療費がかかった場合、自己負担の限度額は16万7400円以上となります。

 
【出典】
国税庁「No.1191 配偶者控除」
国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
世田谷区「保険料の計算方法」
 
執筆者:大堀貴子
CFP(R)認定者 第Ⅰ種証券外務員

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