更新日: 2019.11.29 その他税金
学生はいくらまで稼いでよいか? 税務上のメリット・デメリットを考える際のポイント
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。
「勤労学生の税務問題」は、二つの観点から考える
「勤労学生の税務問題」は、二つの観点から考える必要があります。一つは学生自身の税務問題、もう一つは学生の親の税務問題です。最終的な判断はこの二つの観点を比較して、総合的に行う必要があります。
学生自身の問題
1.勤労学生のアルバイトの年収が103万円を超えると所得税がかかります(103万円の壁)。例えば、103万円の壁を超過すると、超過分が課税所得となり所得税が課税されます。ここまでは従来からいわれているパートタイム主婦・主夫の103万円の壁と全く同じものです。
<103万を超えた場合の例>
年収 110万円
給与所得控除 △65万円
基礎控除 △38万円
課税所得 7万円
2.ところが学生の場合、「勤労学生」の条件に当てはまり勤労学生控除を申請すると、勤労学生控除27万円を受けることができ、103万円+27万円=130万円の年収までなら、学生自身には所得税はかかりません。
※学生自身の所得への住民税の課税・非課税については、所得税の場合と数字が若干異なります。
※「勤労学生」の条件は、特定の学校の学生・生徒であることおよび合計所得金額が65万円以下=給与年収130万円以下ということですが、詳細は国税庁ホームページ「タックスアンサー No.1175 勤労学生控除」をご確認ください。
親の問題
学生自身としては、「勤労学生」であると認められれば、給与年収が130万円までなら所得税は課税されません。ただしこの場合、もう一つの観点、親の税務問題からも考えてみる必要があります。
1.子である学生の年収が103万円以下の場合
親の扶養家族となっている学生なら、特定扶養親族控除63万円の対象(その学生の年齢が19歳以上23歳未満である場合)になるので、その分税金が安くなります(学生の年齢が16歳以上19歳未満または23歳以上の場合は一般扶養家族控除38万円が受けられます)。
2.子である学生の年収が103万円超の場合
親は子に関する一般扶養控除または特定親族扶養控除を受けられなくなるので、その分課税所得が増えます。特定親族扶養控除の対象であった場合、下表に示す通り、課税所得が63万円増えるので、所得税10%・住民税10%とした場合、親のほうは10.8万円の増税になってしまいます。
所得税:63万円(特定扶養親族控除)×10%(税率)=6万3000円(増税分)
住民税:45万円(特定扶養親族控除)×10%(税率)=4万5000円(増税分)
増税分計 10万8000円
※所得税と住民税では、特定扶養親族控除額が異なるので、上記のような計算になります。
まとめ
子である学生が「勤労学生」の申請をして、収入を103万円から130万円まで増やすと収入は27万円増え、親の税金が10.8万円増えます。
親子全体で考えれば、
27万円(子の収入増)-10.8万円(親の税金増)=16.2万円(全体の収入増)
なので、子が130万円まで稼いだほうが親子全体ではプラスになるということになります。
ただし親の所得により税率が変わるので、個別にきちんと計算してどちらが有利なのかを見極める必要があります。
物事を単純化して問題の本質を理解していただくために、主に所得税の観点から考えてみました。住民税も考慮した場合、住民税の非課税限度額、所得控除額が異なるため、大筋に変化はありませんが、上記の数字が多少異なることを申し添えます。
【出典】
国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除
国税庁 タックスアンサー No.1175 勤労学生控除
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー