更新日: 2019.08.27 その他税金
【住民税の計算】不動産の譲渡や株式譲渡等があった場合は、どうなる
一方で自営業の方等における住民税は、毎年6月に一括納付するか、毎年6月・8月・10月・翌年1月の年4回に分けて納付することになるでしょう。いずれにしても、住民税について多くの方が「徴収・納付時期がずいぶん遅れてやってくるので、わかりにくい」とい感じているようです。
執筆者:星田直太(ほしだ なおた)
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
一般企業勤務を経て、30代から税務会計の世界に入り、税理士とCFPの資格を取得。
税理士法人勤務時には法人税務顧問、ベンチャー支援、事業再生、相続・事業承継といった多様な業務に従事。公的機関での勤務も経験した後、2014年に独立。現在は西新宿に税理士事務所を開業している。
中小企業向けの講演多数。他の専門家とも多く提携しており、ワンストップでお客様のお悩みに対応できる体制を構築している。
そもそも「住民税」とは何か
住民税は、道府県民税と市町村民税を合わせたものの一般的な呼称です。なお、納税者が東京都内23区にお住まいの場合、都民税と特別区民税を合わせたものです。
住民税の性格は、自治体が提供する行政サービスに対する負担であるものとされます。利益を受ける程度に応じて課税するものを「応益税」といいますが、住民税はその代表的なものです。
なお、負担能力に応じて課税するものは「応能税」といいます。住民税は所得の額に応じて税額が高くなりますので(税率は一定です。詳しくは後述)、応能税としての側面もあるといえるでしょう。
住民税の計算方法
「均等割」と「所得割」の合計額が、住民税の額です。
(1)均等割
地域社会の費用を、その住民等に広く均等に負担してもらうという趣旨のものです。道府県民税と市町村民税、それぞれに設定があります。
東京都練馬区を例にとると、都民税1500円+特別区民税3500円=合計5000円となります。
平成25年度までは、都民税と特別区民税の額がそれぞれ500円低く、合計4000円でした。平成26年度から令和5年度までの10年間は、防災・減災事業の財源確保のために、税額が合計1000円引き上げされています。
自治体によっては均等割の額が異なる場合もあります。神奈川県横浜市では、県民税1800円+市民税4400円=合計6200円です。これは、県民税に「水源環境保全税」として300円、市民税に「横浜みどり税」として900円を上乗せしているためです。
ただし、この措置は時限的なものとされています。皆さんも、お住まいの自治体の均等割がいくらなのかを確認してみても良いかもしれません。
(2)所得割
個人の所得金額に応じて負担する税金です。計算対象期間は1月1日~12月31日で、所得の計算方法は国税である所得税に似ていますが、特に一部の所得控除の額が異なる(例えば、国税における基礎控除は38万円ですが、住民税では33万円)ことが特徴的です。
税率は、原則として都民税4%・特別区民税6%となり、合計10%です(東京都練馬区の場合)。なお、神奈川県横浜市の合計税率は10.025%となるなど、自治体によって異なる場合もあります。
(3)住民税非課税
前年中の所得金額が一定額以下の場合等に、住民税が非課税となります。詳細は、お住まいの自治体のWEBサイト等で確認してみてください。
不動産の譲渡や株式譲渡等があった場合
土地や建物といった不動産を譲渡して所得が生じた場合、税務署へ確定申告をして所得税が課されることになりますが、このときに住民税も計算されます。ただし、先ほど述べた所得割の計算とは区分・分離して、別に計算されます(便宜上「分離課税」といいます)。
一方で上場株式等に係る譲渡や配当については、証券会社等による源泉徴収を選択している場合、住民税が特別徴収(天引き控除)されます。なお、特別控除ではなく、分離課税の確定申告を選択することもできますが、この場合の申告は所得税(国税)とあわせて行います。
ここで注意したいのは、国民健康保険料や扶養控除等への影響です。不動産を譲渡して所得が生じた場合や、上場株式等に係る譲渡・配当について確定申告を選択した場合は、国民健康保険料の計算や扶養控除等の判定に影響を与えます。
計算方法がそれぞれ異なりますので、詳しくはお住まいの自治体等へ確認してみると良いでしょう。
税制を知ることの重要性
税金は、法律によらなければ、我々国民に対して課されることはないというルールがあります。自分の税金は自分たちで決める、というルールですね。
住民税の場合は、地方税法という法律によって定められていますが、さらには地方自治・自主財源確保による要請から、条例によって自治体独自の税を定める場合もあります。静岡県熱海市の「別荘等所有税」はその一例です。
我々国民が税制について理解をしていなければ、当然ながら税制へのチェック機能が働かないことになります。税金が給与から天引きされている(源泉徴収や特別徴収)場合、納税者は「納税している」という意識を抱きにくいものです。
税に対するリテラシーを高めるためには、一人ひとりが積極的に税制に関する情報を収集し、考えることが重要なのかもしれませんね。
執筆者:星田直太
税理士、ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))