更新日: 2019.07.04 確定申告
「確定申告を忘れたら所得税も住民税も戻ってこない」これって本当?嘘?
そんなことはありません。今からでも、間に合うのです。これから、確定申告をしても所得税だけでなく住民税も戻ってきます。今回はそのやり方を紹介したいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。
還付請求の考え方とその方法
確定申告というのは、翌年の3月15日までにしなくてはいけないものだと思っていませんか? 確定申告にもいろいろな種類があります。
自営業の方が昨年の収入を申告する、株式の売買で利益を出した人がその所得を申告する、給与所得者の方が医療費控除等の追加の所得控除を申告して還付請求をする等々いくつかのものがあります。
確定申告の期限が決められているのは、それに基づき前年の税金を納めなくてはならない自営業者のような方の場合です。
給与所得者はすでに源泉徴収で税金を納めているので、大体の場合は税金の還付申告です。そして還付申告には1年ごとの期限はなく、その年の翌年1月1日から5年間、提出することができるのです。
また、確定申告をしたが納める税金が多過ぎた、または、還付請求が少な過ぎたという場合でも、原則として還付申告書を提出した日から5年以内であれば、確定申告の間違いを修正する「更正の請求」という処置が取れます。
ですから、昨年度の分どころか、5年前の分まで還付請求をすることができるのです。それぞれ、国税庁のHPの確定申告書等作成コーナーのページから、年度ごとに書類作成をすることが可能です。
今からでも、還付申告をしてみよう。
年度末の忙しさから解放された方は、過去の申告をじっくり見直して、還付申告をきちんとしたかを確認して、以前の年度の確定申告や更正の請求をされてみてはいかがでしょうか?
申告忘れの実例としては次のようなものが考えられます。
中途退職で年末調整を受けずに源泉徴収税が納め過ぎになっているとき、一定要件のマイホーム取得などをして住宅ローンがあるとき、医療費控除、ふるさと納税、生命保険料控除、地震保険料控除、iDeCoの掛け金の控除、大学生の子どものために支払った国民年金保険料等の申告をしていないか、不足があった場合等々。
年末調整はしたけれど、確定申告はしていない場合は、確定申告書を改めて作成してください。
確定申告はしたけれど、大きな医療費が抜けていたとか、年末に大きな生命保険に入ったけど申告をしていなかった等の場合は「更正の請求」として、該当年度の書類を作成してください。
ただし、どの場合も、それに関連する領収書を添付する必要があるので、それらを探し出す必要があります(確定申告をe-Taxで行う場合は必ずしも添付する必要はありませんが、5年間は自分で保管し、税務署の要請があれば提出する必要があります)。
住宅借入金等の年末残高の証明書、かかった病院の領収書、ふるさと納税をした市町村からの証明書、生命保険料や年金保険料に関する控除証明書等が必要になります。中には改めて発行してもらうことで知るものもあるので、申告漏れを発見した時点で関係先に確認してみましょう。
これらを拾い出して、申告すればかなりの金額が戻ってくる可能性があるのです。
所得税の還付だけでない還付申告のメリット
還付申告をすると戻ってくるのは所得税だけではありません。税金の徴収の仕方や時期が異なるので目立たないのですが、住民税も減額されるのです。それでは、皆さんがどのくらいの税金を支払い、どのくらいの税金が還付されるか計算してみましょう。
年収600万円の4人家族の家庭(夫、専業主婦、子ども2人-15歳以下)が支払っている所得税と住民税の金額はほぼ次の通りです(前提条件に応じて、標準的な各種控除<社会保険料控除、配偶者控除、生命保険料控除等>を反映して計算しました)。
年収 600万円
所得税 住民税
課税所得*1 260万円 272万円
税額*2 16.3万円 27.4万円
*1 所得税と住民税では、所得控除額が微妙に異なるので、課税所得は住民税の方が少し大きくなります。
*2 所得税の税率は、最低税率5%からの累進税率で、課税所得260万円では最高税率は10%。住民税は所得金額にかかわらず、所得割額は一律10%。(さらに、調整控除と均等割額がわずかに加算されます)よって、税額は住民税の方が大きくなります。
所得税、住民税の支払い方法と還付時期は次のようになります。
1.所得税
(1)支払い方法と時期
給与受領と同時に暫定額で支払い(源泉徴収)、その後の年末調整や確定申告で最終税額を確定する。それに基づき、その年の12月分の給与または翌年の4-5月に税金が、還付される。
(2)還付時期
還付申告または更正の請求をしてから1~1.5ヶ月後
2.住民税
(1)支払い方法と時期
前年分の給与所得に基づき算定された税額に基づき、その年の翌年の6月から翌々年の5月分の給与から引き去られる。所得税が収入と同時に支払うのに対し、住民税は1年半も後払いになる。
(2)還付時期
国税庁から市税事務所が還付申告または更正の請求に関する通知を受けてから1~2ヶ月後還付の場合、所得税は最高税率が適用され、住民税は一律ですから、両者とも10%です。
この場合、所得税と住民税の還付額は、同じになるので、実際の節税メリットは所得税だけの場合の倍になります。
例えば、ある年度で10万円分所得控除額が増えたとしたら、還付税額は、次の通りになります。
所得税 10万円×10%=1万円
住民税 10万円×10%=1万円
税還付(減額)額計 2万円
まとめ
過去5年にさかのぼって申告漏れをチェックして申告し直せば、上記の金額の何倍かになる可能性もあります。皆さん、この機会に還付申告を考えてみませんか?
国税庁タックスアンサー:No.2030 還付申告
国税庁[手続名]所得税及び復興特別所得税の更正の請求手続
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー