更新日: 2019.06.22 ふるさと納税

6月から新制度スタート!~ふるさと納税に関して自治体が“3分類”された状況とは?(後編)

6月から新制度スタート!~ふるさと納税に関して自治体が“3分類”された状況とは?(後編)
前編に続いて、ふるさと納税の新制度において自治体が[×:指定されず、△:短縮期間で指定、〇:通常期間で指定]の3つに分かれた状況について、考えてみましょう。
 
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

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集めた寄附金額の多寡だけではないようにも見える指定結果。 総務省が対応を問題視した受入額10億円以上の12自治体で見てみると……

前回でも触れた「ふるさと納税に関する現況調査結果」(2018年7月 総務省公表。末尾※1参照)には、10ページ目に「(参考)総務大臣通知を踏まえた市区町村の対応状況(3)<返礼割合3割超の返礼品及び地場産品以外の返礼品をいずれも送付している市区町村で、平成30年8月までに見直す意向がなく、平成29年度受入額が10億円以上の市区町村>」も掲載されています。
 
この12自治体の明細ほかと今回の指定結果(末尾※2参照)を組み合わせて作成したのが、次の表です。
 

 
こちらの集計結果でも、受入額上位で「〇(通常期間で指定)」になったところも多く、必ずしも2017年度に集めた金額の多寡だけで指定が判断されているわけではないことが確認できます。
 
一方、前編の20自治体(受入額上位)と今回の12自治体の両方のランキングでまったくの圏外(受入額2.0億円)だった高野町が「×(指定されず)」になっていることは、やや意外な印象も受けます。
 
2018年度の全自治体の受入額等は、今年7月に公表される予定ですが、個別の“速報値”的な報道が気になります。
 
一部報道では受入額が約497億円に達したといわれる泉佐野市や、4~12月だけで約249億円を受け入れた小山町、そして196億円の収入を見込む高野町などで、いずれも前年の2017年度の数値とくらべて伸び率が突出しているような印象を受けます。
 
今回指定から外れた4自治体だけで、受入額は約1110億円との報道もあります。4自治体の2017年度受入額は合計で約237億円。1年で870億円以上も増やした計算です。
 
総務省は各自治体の返礼品の送付状況や見直し状況について、2018年は先ほどの7月に続いて9月、11月、12月と公表を続けています。4自治体が今回指定されなかったのは、見直し要請への対応状況などが影響したようです。
 

ふるさと納税の受入額規模を”市場”に例えると? そして、まとめ

2017年度に、ふるさと納税の受入額総額は約3653億円でしたが、2018年度は4自治体の上記の上積み額を単純に足しただけでも4000億円を大きく超えることが予想されます。
 
2018年度の様子を何かの産業に例えると、【4社で市場規模の1/4くらいを占めている】状況のようにも見えますね。2017年度の約3653億円と同じくらいの市場規模をもつ産業で、比較的身近と思われるものの例として、次が挙げられます。
 
<フィットネスクラブ>
(注)数字出典:「日経業界地図 2019年版」(日本経済新聞出版社 刊)
 [市場規模]     約3349億円(売上高)
 [上位企業]     コナミスポーツクラブ(660億円)
            セントラルスポーツ(535億円)
            ルネサンス(462億円)
 
<スナック菓子>
(注)数字出典:「日本マーケットシェア事典 2018」(矢野経済研究所 刊)
 [市場規模]     約3390億円(出荷額)
 [上位企業]     カルビー(1604億円)
            湖池屋(212億円)
            おやつカンパニー(202億円)
 
<焼酎(乙類)>
(注)数字出典:「日本マーケットシェア事典 2018」(矢野経済研究所 刊)
 [市場規模]     約3550億円(出荷額)
 [上位企業]     霧島酒造(667億円)
            三和酒類(473億円)
            オエノンホールディングス(236億円)
 
いずれも、有名な商品やサービスで知られる企業が上位を占める一方、地場ごとの中小規模プレーヤーも相当数いて、市場全体の裾野がかなり広いものといえます。こうした点は、ふるさと納税制度も似ていなくはないと思われます。
 
しかし、【昨年度は市場シェア上位にあった企業が、ある理由によって今年度は4社も市場から退出させられている】といった状況は、産業市場では想定しにくいでしょう。
 
一般の市場では、コンプライアンスや自主的なガバナンスによる節度ある競争のもとで、市場全体が拡大伸長するような状況は、歓迎すべきことだと思われます。
 
一方、結果的に、都市部の税収が地方によって奪われているという側面が否定できないのが、ふるさと納税制度。各自治体に一定の納得感がもたらされるような節度ある競争のなかで、より発展していくことを期待したいものです。
 
出典
(※)(※1)総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(平成29年度実績)」
(※2)総務省「ふるさと納税に係る総務大臣の指定について」
 
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
 

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