更新日: 2019.06.18 控除

10万円以上じゃないと、医療費控除できないの?

10万円以上じゃないと、医療費控除できないの?
給与所得者は年末調整で納税は完了します。支払った生命保険料、扶養家族等の必要な情報を会社に伝え、1年間の税額を決定します。
 
しかし、寄付金控除や医療費控除は年末調整では出来ませんので、確定申告で納め過ぎた税金を取り戻します。
 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

病院でかかったもの全部が控除の対象になるの?

医療費控除の対象となるものは、治療や治療のために医者に必要な器具、入院費用、通院費用などが対象になります。タクシーでの通院は控除の対象になりませんが、公共交通機関が利用できない場合での通院は対象になります。
 
また、自家用車のガソリン代や駐車料金は対象になりません。
 
療養上の世話人が必要な場合に、特に依頼した人に支払うものは医療費に含まれますが、親類が付き添った場合の対価は療養上必要でも認められません。
 
健康診断や特定健康診査の費用は認められませんが、結果、重大な疾病が見つかり、引き続き治療や医師の指導を受ける場合は、医療費控除の対象になります。
 
美容整形は対象になりませんし、美容のための歯科矯正も対象になりません。しかし、子どもの歯科矯正は対象になります。
 
そして、対象となるのは申告する年分の年内に払ったものだけです。例えば、平成30年分の申告は、平成30年に支払ったものだけです。未払いがあれば、実際に払った年の控除額とします。
 
※参考:国税庁HP
 

医療費にかかった金額が10万円以上必要?

医療費控除額は、支払った医療費が全額控除されるのではありません。以下の方法で計算します。
 
(1) 実際に支払った医療費の合計額から、生命保険などで補填させる金額を引きます
(2) その年分の所得金額の5%と10万円とで、少ない方の金額を出します
(3) (1)の金額から(2)の金額を差し引き、医療費控除の金額を算出します
 
所得が200万の場合、5%は10万円になります。よって、所得が200万以上の場合は(2)は10万円になります。一般的に10万円を超えないと医療費控除が出来ないと言われるのはそのためです。
 
しかし、所得が200万未満の場合は、所得の5%を超えた金額が医療費控除となります。
 
例えば、所得140万円の場合は7万円を超えた金額となります。所得が200万円の場合の医療費から差し引くのは10万円なので、同じ金額の医療費がかかっても、200万円の所得の場合より3万円多く控除出来ます。
 
所得が少ないほど控除出来る金額が大きくなります。
 

セルフメディケーション税制って何?

ところで、平成29年からセルフメディケーション税制が創設されましたが、セルフメディケーション税制とはどのようなものでしょうか。
 
国税庁のHPには、“健康の保持増進及び疾病の予防として、一定の取り組みを行っている方が、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために1万2000円以上の対象医薬品を購入した場合には、「セルフメディケーション税制」をうけることが出来る”とあります。
 
1万2000円を超えた分で最大で8万8000円までが、セルフメディケーション税制として所得控除出来ます。この制度を利用するには、控除を受けようとする年に、以下の様な「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取り組み」を行っていることが必要です。
 
・健康保険組合等が実施する健康診査【人間ドック、健診等】
・市町村が行う健康診査
・予防接種【定期接種。インフルエンザワクチンの予防接種】
・勤務先の定期健康診査
・特定健康診査(メタボ健診)、特定保健指導
・市町村が健康促進事業として実施するガン検診

 
ただ、「一定の取り組み」の費用は控除の対象にはなりません。そして、申告者が取り組めば良く、家族全員が取り組む必要はありません。
 
対象医薬品は、医師によって処方される医薬品から薬局やドラッグストアで購入出来る医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)とされています。セルフメディケーション対象のものである場合は、レシートに記載されています。
 

セルフメディケーション税制の適用を受けるには何が必要?

セルフメディケーション税制の適用を受けるには適用を受けるためには、以下の書類の提出が必要です。
 
(1)セルフメディケーション税制を適用した確定申告書
(2)セルフメディケーション税制の明細書
(3)一定の取り組みを行ったことを明らかにする書類(提示可)
・・・領収書または結果通知書(健診結果部分を黒塗り可)
 
医療費控除を適用する場合、セルフメディケーションか従来の医療費控除かどちらか一方しか選べませんが、セルフメディケーション対象の医薬品でも、通常の医療費控除を受けることを選択した場合は、医療費控除の対象になります。
 
対象の医薬品は限られますが、インフルエンザの予防接種も「一定の取り組み」とされますし、職場での健康診断も同様です。そして、対象商品は限られますが1万2000円以上で適用となります。
 
支払い金額が少なく、通常の医療費控除が出来ない場合、セルフメディケーション税制での医療費控除が出来ないかどうか、薬局のレシートをチェックしてみてはいかがでしょうか。
 
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
 

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集