更新日: 2019.06.18 控除

年金生活で家計が苦しい。「子の扶養」に入るには?

年金生活で家計が苦しい。「子の扶養」に入るには?
扶養には、税金面でのメリットと社会保険面でのメリットがあります。税金面では、子が親を扶養家族にすることで、子自身の節税になります。
 
社会保険面では、親が子どもの扶養家族になることによって、親はそれまで支払っていた国民健康保険料を払わずに済みます。それぞれ、扶養に入れるための条件を解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

所得税の扶養親族

納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを扶養控除といいます。
 
扶養親族は、所得者と生計を一にする親族で、合計所得金額が38万円以下の人をいいます。
 
給与所得だけの場合は給与の収入金額が103万円以下、公的年金等に係る雑所得だけの場合は、公的年金等の収入金額が158万円以下(年齢65歳未満の人は108万円)であれば、合計所得金額が38万円以下になります。
 
「生計を一にする」とは、必ずしも、同居を要件とするものではありません。別居の場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合も「生計を一にする」と取り扱われます。
 
「親族」は、6親等以内の血族もしくは3親等以内の姻族をいいます。
 
上記の条件を満たせば、離れて暮らしている老親も子どもの扶養に入れることができます。
 
控除額は、一般の控除対象扶養親族は38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)は63万円、老人扶養親族(70歳以上)は、同居老親等は58万円、同居老親等以外は48万円です。
 
例えば、子どもが65歳の親を一人扶養にいれることで、所得控除が38万円増えます。仮に、子どもの所得税率が5%とすると、所得税が19,000円減ることになります。
 
さらに、住民税の扶養控除33万円も増え、住民税は一律10%ですので、33,000円軽減されます。所得税と合わせて、52,000円の節税になります。
 

社会保険の被扶養者条件

健康保険組合等に加入していた人が、定年などで退職した場合、(1)任意継続被保険者(退職後2年間加入可) (2)国民健康保険の被保険者(原則75歳まで) (3)被用者保険の被扶養者(原則75歳まで)、のいずれかに加入する必要があります。
 
なお、75歳になると、これまで加入していた医療保険制度を離れ、後期高齢者医療制度に加入することとなります。また、一定の障害状態のある65歳~74歳の人も、申請すれば後期高齢者医療制度に加入することができます。
 
ここでは、(3)被用者保険の被扶養者、つまり、子どもなどが加入する健康保険組合等に加入する場合の条件について見てみます(協会けんぽの例)。
 
被扶養者になるには。年間の収入が130万円未満(60歳以上や障がい者は180万円未満)で、同居している場合は、被保険者(扶養者)の収入の原則2分の1未満でなければなりません。
 
ただし、年収130万円未満であっても、一定の加入要件を満たした場合には、被扶養者とはならず、自身で健康保険に加入することになります。
 
また、収入が被保険者(扶養者)の収入の2分の1以上の場合であっても、扶養者の年間収入を上回らず、日本年金機構が諸事情を勘案して、扶養者から扶養されていると認められるときは被扶養者となることができる場合があります。
 
別居の場合は、収入が被保険者(扶養者)からの仕送り額未満と、条件がよりかなり厳しくなっています。なお、配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の3親等内の親族は同一世帯でなければなりません。
 
子どもが加入する健康保険組合等などに加入するメリットは、国民健康保険等の保険料を負担しなくて良い点です。国民健康保険の保険料は自治体により大きく異なります。計算方法が異なるからです。自治体のホームページで計算方法を確認しておくと良いでしょう。
 
また、扶養家族が増えたからと言って子どもの健康保険の保険料が増える心配もありません。
 
一方、デメリットもあります。高齢者になると医療費が高額になるケースがあります。子どもの扶養に入ると、医療費の自己負担限度額が変わります。
 
住民税非課税であれば、自己負担限度額(70歳未満)は月額35,400円ですが、子どもの扶養に入ることにより、自己負担限度額が高くなります。
 
例えば、子どもの月収が28万円以上、53万円未満であれば自己負担限度額は8~9万円程度となります。以上、親が子どもの扶養に入るケースを見てきましたが、妻が働いていれば夫が妻の扶養に入るということも可能です。
 
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー
 

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