現在年収800万円ですが、子どものアルバイト代が「年収103万円」を超えそうです。扶養控除がなくなると手取りはどれくらい減りますか?
配信日: 2025.06.14

今後の税制改正の内容によっては収入基準が変わる可能性もあるので、よくチェックしておきましょう。今回は、令和6年度の基準において扶養控除が適用される条件や手取りへの影響などについてご紹介します。

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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
扶養控除が適用される条件とは
国税庁によると、扶養親族として扶養控除が適用される条件は以下のすべてに当てはまっているときです。
・配偶者以外の親族または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人である
・納税者と生計を一にしている
・給与収入のみなら年収103万円以下
・青色申告者の事業専従者として受け取った給与がない
・白色申告者の事業専従者ではない
・その年の12月31日時点で16歳以上
子どもがアルバイトを始めた場合、これらの条件から外れないか確認しておきましょう。例えば、子どもが年収105万円を稼いだとすると、同じ家に住んでいたとしても収入条件を満たさなくなるため、扶養控除は受けられません。
子どもの扶養控除がなくなると手取りにどう影響する?
子どもの扶養控除がなくなると、扶養していた親側の税金が高くなる可能性があります。これは、所得から引かれる金額が少なくなるためです。所得が高いほど税金も高くなります。
例えば、以下の条件で子どもが扶養を外れた場合、税金がいくらくらい変わるか計算してみましょう。
・親の年収が800万円
・賞与は考慮しない
・配偶者は専業主婦(主夫)
・控除は給与所得控除、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除のみ
・夫婦ともに東京都江東区在住の40代
・控除や社会保険料は令和6年度の基準を適用
・全国健康保険協会に加入
・子どもは16歳
まず、年収800万円のときの給与所得控除は190万円、また社会保険料は以下の通りです。
・健康保険料および介護保険料:年額47万2464円
・厚生年金保険料:年額71万3700円
・雇用保険料:年額4万8000円
・社会保険料合計:123万4164円
また、所得税の配偶者控除は38万円、住民税の配偶者控除は33万円です。これらの条件を基にすると、子どもの扶養控除の有無で税額は表1のように変わります。
表1
扶養控除有り | 扶養控除なし | |
---|---|---|
所得税の扶養控除額 | 38万円 | - |
所得税課税所得金額 (1000円未満切り捨て) |
362万5000円 | 400万5000円 |
所得税率、控除額 | 20%、42万7500円 | |
所得税額 | 29万7500円 | 37万3500円 |
住民税の扶養控除額 | 33万円 | - |
住民税課税所得金額 (1000円未満切り捨て) |
377万5000円 | 410万5000円 |
住民税所得割+均等割 | 10%+5000円 | |
住民税額 | 38万2500円 | 41万5500円 |
※筆者作成
子どもが扶養から外れることで、所得税は7万6000円、住民税は3万3000円高くなります。手取りで考えると、10万9000円減る可能性があるでしょう。
扶養控除の基準が引き上げられる可能性も
今回は令和6年度の基準で扶養を外れた場合を想定しましたが、税制改正が行われると扶養控除の収入基準が変わる可能性があります。年収103万円の基準は給与所得控除の最小値55万円と所得税の基礎控除48万円を足した金額が基とされていますが、税制改正で金額が変わるためです。
国税庁によると令和7年12月1日に施行される改正では、所得税の基礎控除が最大95万円、給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げられます。仮に両方適用された場合、所得税の課税対象となる基準は「95万円+65万円」で160万円です。
扶養控除の基準が変わることもあり得るので、よく確認しておきましょう。
扶養控除がなくなることで10万円以上手取りが減る可能性がある
令和6年度の基準では、子どもが103万円以上の年間収入を得ていると扶養から外れ、親の税額が増える可能性があります。今回のケースでは、所得税が7万6000円、住民税が3万3000円の合計10万9000円税額が高くなる結果でした。
なお、令和7年12月1日に施行される税制改正では給与所得控除や基礎控除の金額が変わるため、扶養控除の基準も変わる可能性があります。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1180 扶養控除
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
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