年収700万円の会社員ですが、今年は「医療費20万円」で医療費控除を使ったところ、あとで妻の分の「医療費30万円」を加算していないことが発覚…次の年に回せばよいですか?

配信日: 2025.06.13

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年収700万円の会社員ですが、今年は「医療費20万円」で医療費控除を使ったところ、あとで妻の分の「医療費30万円」を加算していないことが発覚…次の年に回せばよいですか?
節税目的で、医療費控除を適用して確定申告書を出した経験のある人もいるでしょう。その際、場合によっては申告した医療費が足りなかったことにあとから気づくケースもあります。もし、医療費控除の金額を少なく書いてしまったときは、あとから申告できる可能性があるので、確認しておきましょう。
 
今回は、医療費控除の適用範囲やあとから申告できるケースなどについてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

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高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

医療費控除はどこまで適用される?

医療費控除の適用範囲は、本人のほかに本人と生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費も対象です。ただし、本人が該当する配偶者や親族のために支払った医療費に限られます。
 
例えば、本人が自身の医療費20万円に加え、妻が病院に行った際の30万円も負担していたときは、合計50万円が本人の医療費負担分として控除の対象になるでしょう。しかし、妻が30万円の医療費を自分で負担していた場合は、条件を満たさなくなるため、控除対象は自身の20万円分のみとなります。
 
また、控除に加算できるのはその年の1月1日~12月31日までに実際に支払った金額のみです。例えば、12月に治療を受け、支払日が翌年1月だった場合、その治療分の金額は翌年の医療費控除の対象となります。
 
なお、国税庁によれば、医療費控除の金額は「実際に支払った医療費の合計額-保険金などによる補てん額-10万円(その年の総所得金額等が200万円未満なら総所得金額等の5%)」です。
 

あとから追加で申告は可能?

確定申告の期限が終わったあとでも、医療費控除額の訂正はできる可能性があります。医療費控除の申告忘れをすると、本来の税額より高い税金を支払っていることになり、「更正の請求」の対象となるためです。
 
更正の請求では、計算ミスや記入漏れなどで本来の税額よりも多く支払っていたときに、原則として法定申告期限から5年以内であれば、更正の請求書を税務署長へ提出することで、払い過ぎた税金が還付されます。なお、税額が間違っていた場合に利用できる制度なので、医療費控除分を追加しても税額が変わらないのであれば、請求する必要はありません。
 
また、法定申告期限内に間違えた場合であれば、確定申告書を記載しなおし、もう一度提出しましょう。国税庁によると、法定申告期限内に複数回同じ人物から確定申告書が提出された場合、本人からの特段の申し出がない限り、最新のものをその人の申告書として扱うと示しているためです。更正の請求書を提出する必要はありません。
 
ただし、医療費を翌年に繰り越すことはできない点に注意しましょう。先に説明したように、医療費控除の条件のひとつは「その年に支払った医療費であること」のためです。
 

妻の分も含めると税金はいくら安くなる?

自身の医療費20万円のほかに妻の30万円の医療費の有無で、所得税や住民税額がいくら変わるかを比較しましょう。条件は以下の通りです。

●本人の年収が700万円
●東京都江東区在住40代
●ボーナスは考慮しない
●控除は基礎控除、給与所得控除、社会保険料控除、医療費控除のみ
●医療費は保険金などによる補てんはない
●社会保険料と控除は令和6年度のもの
●全国健康保険協会に加入

まず、社会保険料は以下の通りです。

●健康保険料(介護保険料込み):年額40万9932円
●厚生年金保険料:年額64万7820円
●雇用保険料:年額4万2000円
●社会保険料合計(社会保険料控除額も同額):109万9752円

条件を基にすると、医療費が20万円のときと合計50万円のときの税額などは表1の通りです。
 
表1

医療費20万円 医療費50万円
給与所得控除 180万円
医療費控除額 10万円 40万円
所得税課税所得金額 352万円 322万円
所得税率、控除額 20%、42万7500円 10%、9万7500円
所得税額 27万6500円 22万4500円
住民税課税所得金額 357万円 327万円
住民税所得割+均等割 10%+5000円
住民税額 36万2000円 33万2000円

※筆者作成
 
結果を比較すると、妻の分も含めるか否かで所得税は5万2000円、住民税は3万円の差があります。少しでも節税をしたいのであれば、あとからでも医療費控除を計算しなおして更正の請求をした方がよいでしょう。
 

次の年に回さず更正の請求をすれば節税できる可能性がある

医療費控除は、自身だけでなく自身と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費も加算できます。あとから加算していないことに気づいたときは、確定申告の法定申告期限内なら確定申告書をもう一度提出しましょう。もし、期限を過ぎているときは、更正の請求により多く支払った分の税金を還付してもらえる可能性があります。
 
今回のケースだと、更正の請求をすれば妻の分の医療費を含めると所得税は5万2000円、住民税は3万円安くなるでしょう。
 
なお、医療費控除は申告する年の分しかまとめられません。翌年に繰り越すことはできないため、確定申告の際には漏れがないかチェックしておきましょう。
 

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.2026 確定申告を間違えたとき
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
 
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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