昇給で所得が900万円を超えました! 配偶者控除が減るそうですが、税金はいくらくらい変わるのでしょうか?
配信日: 2025.06.13

今回は、所得が900万円を超えたときの配偶者控除や、所得と配偶者控除が変わると税額がいくら増えるのかなどについてご紹介します。

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ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
所得が900万円を超えたときの配偶者控除の扱い
配偶者控除は、本人の所得によって控除の金額が決まっています。控除を受ける納税者本人の合計所得金額別の控除額は表1の通りです。なお、ここでは一般の控除対象配偶者(70歳未満の方)のケースを紹介します。
表1
納税者本人の合計所得金額 | 所得税の配偶者控除額 | 住民税の配偶者控除額 |
---|---|---|
~900万円 | 38万円 | 33万円 |
900万円超~950万円 | 26万円 | 22万円 |
950万円超~1000万円 | 13万円 | 11万円 |
※筆者作成
なお、所得とは収入から必要な経費を差し引いたあとの金額です。会社から受け取る給料は給与所得控除を差し引いて「給与所得」と呼ばれます。収入が900万円を少し超えただけでは、所得は900万円を超えないでしょう。
また、社会保険料控除は、合計所得金額から差し引くため配偶者控除には影響しません。
配偶者控除は配偶者にも条件があり、国税庁によれば、以下の基準をすべて満たしている必要があります(2025年6月現在)。
・民法で定められている配偶者(内縁関係は含まない)
・本人と生計を一にしている
・年間の合計所得金額が48万円以下、給与のみなら給与収入が103万円以下
・青色申告者の事業専従者としてその年に給与を一度も受け取っていない、または白色申告者の事業専従者でない
所得が900万円を超えると税額はいくら変わる?
収入と配偶者控除の変化により税額がどれくらい変わるかを比較しましょう。条件は以下の通りです。
・年収1050万円、1100万円、1150万円で比較
・所得は給与所得のみ
・東京都江東区在住夫婦ともに40代
・適用される控除は給与所得控除、配偶者控除、社会保険料控除、基礎控除のみ
・社会保険料や控除額は令和6年のものを使用
・全国健康保険協会に加入
・社会保険料の計算に用いる報酬月額は年収の12分の1として計算
まず、給与所得控除は収入が850万円を超えると一律で195万円です。そのため、給与所得を求めるにあたって、今回はすべての年収で195万円を差し引きます。年収別に見ると、給与所得額は以下の通りです。
・年収1050万円:給与所得855万円
・年収1100万円:給与所得905万円
・年収1150万円:給与所得955万円
各給与所得を基にしたときの、社会保険料や税額などは表2の通りです。
表2
給与所得額 | 855万円 | 905万円 | 955万円 |
---|---|---|---|
社会保険料額 (控除額も同額) |
138万8124円 | 142万5864円 | 146万3604円 |
所得税配偶者控除額 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
所得税課税所得金額 (1000円未満切り捨て) |
630万1000円 | 688万4000円 | 747万6000円 |
所得税率、控除額 | 20%、42万7500円 | 23%、63万6000円 | |
所得税額 | 83万2700円 | 94万9300円 | 108万3480円 |
住民税配偶者控除額 | 33万円 | 22万円 | 11万円 |
住民税課税所得金額 (1000円未満切り捨て) |
640万1000円 | 697万4000円 | 754万6000円 |
住民税所得割+均等割額 | 10%+5000円 | ||
住民税額 | 64万5100円 | 70万2400円 | 75万9600円 |
※筆者作成
3つの所得税と住民税を比較してみると、給与所得855万円から年収が50万円上がるごとに所得税額が11万6600円、25万780円と増加しています。また、住民税も給与所得855万円と905万円では5万7300円、955万円とは11万4500円の差があります。
所得が増えると、今回の例のように、税額に10万円以上の差がつく可能性についても、覚えておきましょう。
元の所得金額にもよるが、税額に10万円以上の差がつく可能性もある
配偶者控除の控除額は、本人の所得により3段階に分けられています。今回のケースでは、年収が上がるにつれて配偶者控除は減り、税金は10万円以上高くなりました。
所得額が900万円を超える場合は、税金負担が大きく変わる可能性があることも理解しておきましょう。
ただし、「所得=収入」ではありません。会社員の場合は額面の収入から給与所得控除を引いた金額が所得になるため、年収が900万円を少し超えただけでは、配偶者控除は減らない可能性もあるでしょう。
出典
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1191 配偶者控除
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
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