高齢の母から「固定資産税を滞納している」と連絡が…。年金が少ないようで、私が代わりに支払おうかと思っているのですが、これって“贈与税”の対象になるのでしょうか?
配信日: 2025.06.11
今回は、親の固定資産税を子どもが負担する際の税務上の扱いと、親の住まいをどう支えていくかという観点から、制度や支援のあり方について解説します。
贈与税の基本と“扶養の範囲”
贈与税とは、個人から財産を無償でもらった場合に課税される税金で、年間110万円を超えると原則として申告が必要です。しかし、民法上の扶養義務に基づいた生活費や医療費などの支援は、税務上「贈与」とみなされないケースが多くあります。
例えば、親が実際に住んでいる自宅の固定資産税を子どもが一時的に肩代わりする場合は、「生活維持のための支出」として非課税扱いになるのが一般的です。
贈与とみなされるケースに注意
ただし以下のようなケースでは、税務署に贈与と判断されるリスクがあります。
●毎年高額な税金や修繕費を子どもが負担している
●支援の目的や経緯があいまいで、記録が残されていない
税務署は「誰の利益のための支出か」を重視します。一時的・合理的な支援であれば贈与税の対象外ですが、継続的・高額な支援は慎重な判断が求められます。
子どもができる支援と“制度の活用”
「なんとか助けたい」という気持ちから、子どもがすべてを抱え込んでしまうケースもありますが、まずは親自身が活用できる制度を確認することが大切です。
例えば、
●公的な家計相談・福祉窓口
●地方自治体による住まい支援や税制優遇措置
など、地域によって利用できる制度は異なります。
また、親が元気なうちに、将来の住まいや財産管理について話し合う場をもつことも、支援の第一歩です。
生前贈与や家族信託も視野に
将来的に親が自宅を手放す予定がある場合、「生前贈与」や「家族信託」も選択肢になります。
「生前贈与」には贈与税がかかるため専門家の相談が必要ですが、信託であれば親が元気なうちに財産の管理権限を子に託し、柔軟に運用・管理することが可能です。特に認知症対策や将来の相続対策として、家族信託は注目が高まっています。
住まいをどう守るかを話し合おう
固定資産税の負担は、単なる支払いの問題ではなく、「親が暮らす住まいをどう支えるか」という暮らしの本質にかかわるテーマです。
●その家を将来どう活用していくのか?
●自分たちにとって“無理のない支え方”とは何か?
こうした話し合いは、親が元気なうちにしか進められません。
子どもにとっても無理のない範囲で、制度を活用しながら「支え方を設計する」ことが、これからの家族の安心につながります。なお、固定資産税の支払いや相続・贈与の対応に迷う場合は、早めに税理士や相続の専門家に相談することもおすすめです。家族の事情に合わせた具体的な対策が見つかるかもしれません。
出典
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:稲場晃美
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士