「住民税は場所によって金額が違う」と聞いたことがあります。この話って本当でしょうか?

配信日: 2025.06.08

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「住民税は場所によって金額が違う」と聞いたことがあります。この話って本当でしょうか?
「住民税は場所によって金額が違う」という話を聞いたことがあるでしょうか。住民税は法律に基づいて計算するため、住む場所によって税額が異なるということは考えにくいかもしれません。
 
そこで本記事では、「住民税額の計算はどのように行うのか?」「住む場所によって住民税額は異なるのか?」について解説します。具体的な都市を取り上げて住民税率を比較していますので、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

住民税額の計算はどのように行うのか?

住民税(個人住民税)は都道府県と市町村が課税する地方税であり、その年の1月1日時点で市区町村(都道府県)に住所がある方に対して課税される税金です。
 
住民税には「道府県民税」と「市町村民税」(東京都の場合は「都民税」と「特別区民税」)があり、それぞれに、所得に応じて負担する「所得割」と所得に関わらず定額を負担する「均等割」があります。
 
住民税額を計算式で表すと、以下のようになります。
 

住民税額 = 道府県民税(所得割額・均等割額)+ 市町村民税(所得割額・均等割額)
または
住民税額 = 所得割額(道府県民税・市町村民税)+ 均等割額(道府県民税・市町村民税)

 
本記事では便宜上、「住民税額 = 所得割額(道府県民税・市町村民税)+ 均等割額(道府県民税・市町村民税)」の計算式を用いて解説します。
 
地方税法では、住民税の標準税率を以下のように規定しています。
 

・道府県民税の所得割(第35条):4%(「指定都市」は2%)
・市町村民税の所得割(第314条の3):6%(「指定都市」は8%)
・道府県民税の均等割(第38条):1000円
・市町村民税の均等割(第310条):3000円

 
先述の住民税額の計算式に上記の標準税率を適用すると、以下のようになります。
 

住民税額 = 所得割額(道府県民税・市町村民税)+ 均等割額(道府県民税・市町村民税)
= 課税所得金額× 10%(※1)+ 4000円(※2)

※1 道府県民税4%+市町村民税6%、または道府県民税2%+市町村民税8%
※2 道府県民税1000円+市町村民税3000円

 
しかし、実際の課税では、この基準(標準税率)を踏まえ、都道府県や市区町村がそれぞれの判断で税率を定め、住民税額を決定しています。つまり、住む場所によって住民税額が変わることもあり得るということになります。
 

住む場所によって住民税額は異なるのか?

個人住民税の税率は、各都道府県・市区町村で公表されています。代表的な地域で個人住民税の税率をまとめると、下表のようになります。なお、令和6年度から住民税均等割と併せて森林環境税(国税)1000円が徴収されるようになりましたので、図表1に併記します。
 
図表1

所得割税率 均等割額
東京都・江戸川区 10%
・都民税   4%
・特別区民税 6%
5000円
・都民税   1000円
・特別区民税 3000円
・森林環境税 1000円
大阪府・大阪市行 10%
・府民税   2%
・市民税   8%
5300円
・府民税   1300円
・市民税   3000円
・森林環境税 1000円
愛知県・名古屋市 9.7%
・県民税   2%
・市民税   7.7%
5300円
・県民税   1500円
・市民税   2800円
・森林環境税 1000円
福岡県・福岡市 10%
・県民税   2%
・市民税   8%
5500円
・県民税   1500円
・市民税   3000円
・森林環境税 1000円
神奈川県・横浜市 10.025%
・県民税   2.025%
・市民税   8%
6200円
・県民税   1300円
・市民税   3900円
・森林環境税 1000円

※各自治体ホームページより筆者作成
 
所得割税率・均等割額以外の条件が全て同じである場合、住民税額は住んでいる地域の所得割税率・均等割額により変わります。上記に挙げた都市の所得割税率・均等割額はそれぞれ異なるため、住民税額も異なることになります。
 

まとめ

本記事では、「住民税額の計算はどのように行うのか?」「住む場所によって住民税額は異なるのか?」について解説しました。まとめると、以下のようになります。
 

・住民税額は「所得割額(道府県民税・市町村民税)+ 均等割額(道府県民税・市町村民税)」により求める
・住む場所によって所得割税率・均等割額が異なるため、住民税額は異なる

 
住民税は、各地域の行政サービスの活動費に充てる目的で、その地域に住む個人に課税されます。住民税の標準税率は地方税法に規定されていますが、行政サービスの財源を確保するという観点から、実際は都道府県や市区町村がそれぞれの判断において税率を定めています。このため、地域により住民税が異なるという状況が生じるのでしょう。
 
住民税は、地域の行政サービスに係る費用は、その地域の住民で分担しようという考え方に基づいています。ですから、単に住民税の高い・安いで「良い」「悪い」を判断するのではなく、住民税がきちんと行政サービスの維持・向上に貢献しているかをもって「良い」「悪い」を判断していただくのが良いのではないでしょうか。
 

出典

総務省 個人住民税
デジタル庁 e-GOV法令検索 地方税法
東京都江戸川区 住民税の計算方法
大阪市 税額の計算
名古屋市 個人の市民税・県民税、森林環境税、所得税
福岡市 個人市民税(住民税)
横浜市 個人の市民税・県民税について
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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