【試算】「親を扶養に入れると節税になる」って本当? 年収500万円の会社員が「67歳・別居の母」を扶養に入れた場合の節税効果を検証
配信日: 2025.06.08

社会保険の扶養には、加入できる年齢の上限や介護保険料の負担などが関係してくるため、扶養にするかどうかは慎重に判断する必要があります。
一方、税法上の扶養は、一定の要件を満たせば別居している親でも対象となり、結果として節税につながる可能性があります。条件をクリアできるのであれば、検討しておいて損はない制度といえるでしょう。
本記事では、年収500万円の会社員が、67歳の別居中の母親を扶養に入れた場合、実際にどの程度の節税効果があるのかを具体的に検証します。

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親を扶養に入れるための基本知識と条件
親の年齢や、同居しているかどうかによって、扶養控除の金額は異なります。具体的な控除額は次のとおりです。
・親が70歳未満(同居・別居問わず):38万円(一般の控除対象扶養親族)
・親が70歳以上かつ別居:48万円(老人扶養親族・同居老親等以外の者)
・親が70歳以上かつ同居:58万円(老人扶養親族・同居老親等)
なお、これらの「扶養控除の金額」は「税金が安くなる額」ではなく、課税対象となる所得から差し引かれる額(所得控除)である点に注意が必要です。
扶養控除の対象となるには、以下の4つの要件すべてを満たす必要があります。
1. 納税者本人または配偶者の親である(6親等内の血族、3親等内の姻族まで)
2. 生計を一にしている(別居でも仕送りがあれば認められる場合あり)
3. 親の年間合計所得金額が48万円以下である
4. 親が事業専従者に該当しない(青色申告者から給与を受け取っていないなど)
特に「親の年間合計所得金額が48万円以下であること」については注意が必要です。
年金や給与のほかに、株の譲渡益、個人年金、満期保険金などの収入がある場合も合算対象となります。1円でも超えると扶養控除の対象外となるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
親の年間合計所得金額が48万円以下とは?
「所得金額48万円以下」という基準は分かりづらい点もありますが、以下のように計算します。
・年金収入:158万円
・公的年金等控除:110万円
・所得金額:158万円-110万円 = 48万円 → 扶養に入れる対象
・年金収入:120万円→120万円-110万円=10万円(年金の所得)
・アルバイト収入:93万円→93万円-55万円(給与所得控除)=38万円
・合計所得:10万円+38万円=48万円→扶養の要件を満たす
※2025年分以降、給与所得控除の最低額が10万円以上引き上げられる予定です。
年収500万円の会社員が別居の母を扶養に入れた場合の節税効果
適用される控除は「一般の控除対象扶養親族」となり、控除額は38万円です。この控除により、以下のような節税効果が見込まれます(他の控除がある場合を除く単純計算です)。
・所得税(税率20%):38万円×20%=約7万6000円
・住民税(税率10%):38万円×10%=約3万8000円
→ 合計で約11万4000円の節税効果
親が70歳以上になると扶養控除の金額が増え、さらに同居しているかどうかによっても控除額に差が生じます。
そのため、親が70歳を迎えるタイミングで同居を検討することで、節税効果がさらに高まる可能性があるでしょう。
扶養控除を受ける際の注意点と手続き
母親を扶養に入れようとしても、すでに父親の扶養に入っているケースがあります。父親の配偶者控除がなくなると、父親の税額が増えてしまいます。誰の扶養に入るのが最も有利かを事前に試算し、家族でよく話し合うことが重要です。
そのうえで、扶養控除は年末調整または確定申告で申請します。会社員の場合は、年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「控除対象扶養親族」欄に記入して提出します。自営業の場合は、確定申告書に必要事項を記入して申告します。
まとめ
今回の試算では、年収500万円の会社員が67歳の母親を扶養に入れた場合、年間約11万4000円の節税効果があることが分かりました。
別居している親でも、仕送りなど一定の支援があれば扶養控除の対象となる可能性があります。
まだ活用していない人は、親の収入状況や支援の実態を確認しながら、制度の適用を検討してみるとよいでしょう。家計の節税につながる選択肢として、知っておいて損はありません。
出典
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者が家族を扶養者にするとき、被扶養者に移動があったときの手続き
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
総務省 個人住民税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー