更新日: 2019.06.26 確定申告

来年に向けておさらい。400万円以下の年金受給者は所得税の確定申告をしなくて良い?

来年に向けておさらい。400万円以下の年金受給者は所得税の確定申告をしなくて良い?
確定申告の時期が終わりました。ここで、来年度に向けておさらいしてみましょう。年末調整で納税が完了する給与所得者は、源泉徴収票に変更が無ければ申告は不要ですが、給与以外に収入がある、年末調整が過ぎてからの変更は確定申告が必要です。
 
混み合った会場に足を運び申告をしてくるのは、一日仕事になってしまいますね。自宅のPCやスマホで申告と、申告会場へ行かなくても申告出来る方法が考えられていますが、手順を確かめながら入力するのは時間がかかるものです。
 
しかし、公的年金受給者にやさしい、こんな制度もあります。
 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

公的年金等に係る確定申告不要制度

公的年金等に係る雑所得のみの収入の場合、公的年金に係る雑所得の金額から所得控除を引いた残額がある場合、所得税等の確定申告が必要になります。
 
しかし、公的年金の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得が20万円以下であれば、所得税等の確定申告の必要はありません(公的年金等に係る確定申告不要制度)。
 
年金を複数から受給されている場合は、その合計額が400万円以下である場合に適用されます。
 
ところで、公的年金等とは、
 

(1)国民年金法や厚生年金法、公務員の共済組合法などの規定による年金
(2)過去の勤務により会社などから支払われる年金
(3)外国の法令に基づく保険又は共済に関する制度で、(1)の法律の規定による社会保険や共済制度に類するもの

 
を言いますが、公的年金等に係る確定申告不要制度の対象となるのは、(1)と(2)です。(3)は源泉徴収の対象とならないので、平成27年分以降はこの制度の対象となりません。
 
つまり、通常受け取る、国民年金・厚生年金・共済年金・企業年金が対象となります。
 

公的年金等に係る雑所得以外の所得

ところで、20万円までは申告不要にできる「公的年金等に係る雑所得以外の所得」には、どんなものがあるのでしょうか。そして、その計算はどうやればいいのでしょうか。主なものは以下の通りです。
 
給与所得(給与収入やパート収入など)・・・給与収入-給与所得控除
※給与所得控除は最低でも65万円のため、給与の収入金額が85万を超える場合には所得金額は20万円を超えることになります。  
 
雑所得(個人年金や原稿料など)・・・総収入金額-必要経費
 
配当所得(株式や出資の配当など)・・・収入金額-株式などの元本取得に要した借入金の利子
 
一時所得(生命保険の満期返戻金など)・・・(総収入金額-収入を得るために要した金額-特別控除金額)×1/2
※特別控除額は最大50万円
 

確定申告をした方が良い場合、しなくてはならない場合

公的年金等に係る確定申告不要制度の適用となる場合でも、還付を受ける(源泉徴収で払いすぎた源泉所得税を返してもらう)ための確定申告をすることが出来ます。
 
公的年金の源泉徴収票に記載されている(社会保険料・配偶者・扶養・基礎)控除以外の控除、例えば医療費や生命保険料、寄付金などの控除で還付を受けるには、確定申告が必要になります。確定申告をしなければ、納め過ぎた税金を返してもらえません。
 
また、所得税等の確定申告をすれば、その情報を基に住民税が算出されるので、公的年金等に係る確定申告不要制度の適用を受ける場合であっても、住民税の申告をしておくと良い場合があります。
 
寄付金控除や雑損控除などの控除があっても、住民税の申告をしなければ源泉徴収票記載のままで住民税が計算されてしまうからです。
 
そして、公的年金等に係る確定申告不要制度の適用となっても、住民税にはその制度がありません。よって、公的年金等係る雑所得以外の所得がたとえ20万円以下でも住民税の申告はしなければなりません。所得税等の確定申告は不要でも、住民税の申告は必要になります。
 
詳しくは国税庁のHPをご覧ください。
 
執筆者:林智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
 

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