消費税8%から10%へ 旅行や交通シーンでの4つの注意点
配信日: 2019.02.13 更新日: 2020.04.06
そして、経過措置、軽減税率、増税対策のポイント還元(キャッシュレス決済した時)なども複雑に絡みます。旅行や交通機関を利用するシーンを例にとって、どのようになるのかを見てみましょう。
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
旅行や交通に関して押さえておきたい注意点(増税前の2つ)
タイミングごとに分けてキーワードで見ると、まず次の2つがあげられます。
(1)2019年3月31日までの経過措置
・【パック旅行】は2019年3月31日までに契約すれば、出発が10月1日以降であっても消費税率8%が適用されます。
※マイホーム購入など、住宅の契約日と引渡日に関する経過措置と同様です。
(2)2019年9月30日までの経過措置
・【前売りの乗車券・指定席券等】【回数券】【定期乗車券】などは、2019年9月30日までに購入(支払い完了)すれば、利用が10月1日以降であっても消費税率8%が適用されます。
・【ICカード】は、後払い方式(実際に利用して料金が引き落としされる段階で利用料金が確定する)なので、仮に2019年9月30日までにチャージしておいても、10月1日以降に利用した分の消費税率は10%となります。
・【指定席券を前売り購入】しておいた場合、もしも10月1日以降にアップグレードすると追加料金分の消費税率は10%となります。
「軽減税率」と「ポイント還元」のおさらい
増税後の注意点は、「軽減税率」と「消費税増税対策のポイント還元」に関しての2点です。まずはこの2つの制度の概要をおさらいしておきましょう。
<軽減税率>(ずっと適用)
・飲食料品や新聞など、「物品」によって(いずれも一定の要件のもとで)軽減税率8%が適用されます。
・また、同じ飲食料品の購入でも、持ち帰る場合は軽減税率が適用される一方、店内で食べると適用されないなど、「状況」によって税率が分かれます。
<ポイント還元>(9ヶ月限定)
・2018年12月21日に閣議決定された2019年度当初予算案では、消費増税対策のひとつとして、「2019年10月からオリンピック・パラリンピック前の2020年6月までの9ヶ月に限定し、中小小売業者などにおいて消費者がキャッシュレス決済を行う場合、5%(または2%)のポイント還元により支援」するために、2798億円が計上されました。
※財務省公表資料「平成31年度予算のポイント」より引用。
・当初想定は[増税後1年程度限定で増税分2%のポイント還元]でしたが、期間を短縮して還元率が一部上乗せとなりました。
・ポイント還元率5%が適用される「中小小売業者」は、中小企業基本法の定める「小売業で資本金5000万円以下または従業員(常時使用)50人以下」が予定され、同法の「サービス業で資本金5000万円以下または従業員(同)100人以下」である飲食・宿泊などのサービス業も対象となる見込みです。
旅行や交通に関して押さえておきたい注意点(増税後の2つ)
上記のおさらいを踏まえると、消費税増税後の注意点は次のようなものでしょうか。
(3)2019年10月1日以降の軽減税率
・この表のように適用/不適用が分かれます。※国税庁サイトより筆者作成
(4)2019年10月1日以降のポイント還元
・先ほどの通り【飲食・宿泊などのサービス】も「中小業者」を利用すればポイント還元率5%が適用される見込みです。予約の際に事前確認して旅先で活用するイメージでしょうか。
・「中小」旅行業者を通した場合、【パック旅行】への適用が期待される一方、【新幹線回数券】など、転売・換金可能なものへの規制も予想されます。
まとめ
以上4つの注意点のうち、今のところ不確定要素が一番多いのが、ポイント還元です(2019年1月17日時点で上記(4)に関する詳しい運用指針は未公表)。今後の動向を注視したいところです。
関連して思い浮かぶのは、2018年末に実施されたスマホ決済アプリ普及のためのキャンペーン。ご存じのように決済利用額の20%をボーナス還元(上限額あり)するもので、12月4日から2019年3月末日までの予定期間で予算総額100億円でしたが、利用が殺到したため開始からわずか10日間で予算を消化し早期終了しました。
ポイント還元のための2019年度政府予算額は約2800億円(2020年度も同水準の予算が付けばトータルで4000億円超規模)ですが、消化状況がどうなっていくのかは要チェックですね。
また、ポイント還元率が2%や、ポイント還元対象とならない大手企業などでは、対抗手段として、独自のポイント還元策を検討する動きもあります。今回のテーマである旅行や交通関連を含め、さまざまな民間企業からポイント還元策が打ち出されるかもしれません。こちらの動向もチェックしていきたいものです。
出典:財務省 平成31年度予算のポイント
国税庁 消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士