更新日: 2019.09.18 その他税金

「消費税増税前に海外高級ブランドを買うべき」これって本当?嘘?

「消費税増税前に海外高級ブランドを買うべき」これって本当?嘘?
消費増税前に買うべきものは、「高価で品質が劣化しづらく消費税のかかるもの」です。そのうちの一つは、海外高級ブランド品(バッグ、靴、服、時計、宝石など)という考えがあります。
 
海外高級ブランドは為替の影響も受けるので、日本で消費税の上がる直前直後だけを見ればそれほどの変動がないかもしれません。しかし、例えば本当に必要な時期が1年後だとすると、1年後に同じ商品は果たして消費増税分だけ高くなっているのでしょうか。
 
しかも靴やバッグ、服など、ブランド品とはいえシーズンごとの流行があるものに関しては、1年前のいわゆる「型落ち」のようなものを身に着けて、果たして本当にお得と言えるのでしょうか。
 
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

海外高級ブランド品のグローバル比較

例えば、フランスの高級宝飾品のカルティエは、世界規模で店舗を展開していますが、どの店舗で買っても、各国の現地通貨建てではほぼ同額になるように調整されています。必ずしもフランスの本店で買うのが一番安いというわけでもありません。
 
同店の場合、各国の店舗において為替レートの変動により、かつて何度か同じ商品でも現地通貨の価格を改定している経歴があります。その際は変更の数か月前から、価格が変わる旨のお知らせを出しています。
 
価格変更は上がるばかりではなく、日本では下がったこともありましたので、価格調整は本国の価格に連動して正当に行われるように取りはかられています。つまり、カルティエに関しては、消費増税があるからと早めに買ったとしても、その後価格改定により本体価格が下がる可能性もゼロではないということです。
 
では、例に挙げたカルティエが世界中の店舗で現在いくらになっているのか検証してみましょう。
 
下図はカルティエのタンク・フランセーズという腕時計の現地通貨での価格と、免税手続き後の価格を、2018年12月28日現在の為替レート(TTS:対顧客電信売り相場)で計算したものです。
 

 

海外で購入して免税手続き(VATリファンド)もできる

ヨーロッパやアジア一部地域では、免税手続きをすれば税金分が戻ってくる制度があります。ちなみにアメリカには免税手続き制度はありません。手続きに手数料がかかるので、税金分がすべて返ってくるわけではありませんが、日本で購入すれば、必ず消費税がかかるので、少なくとも免税手続きができる外国で購入すれば、税金分は取り戻せる理屈になります。
 
日本の消費税率と海外の付加価値税率に開きはありますし、実際は買ってから税金分の金額が戻ってくるまで時間が経過していることもありますが、ここでは買った時と税金が戻った時の為替レートは同一としています。
 
現在、カルティエのタンク・フランセーズという腕時計は日本での税抜き価格は359,100円、税込み価格は、332,500円です。
 
各国で免税手続後の現地通貨価格を円換算したものと比較すると、オーストラリアの333,350円が日本の税抜き価格に最も近くなりました。仮に各国の現地価格や為替レートが現状のままであれば、日本の税率が10%になった際の価格差はどの国も広がり、日本より割安度が高くなります。
 
ただし、為替レート、各国の税率、免税手数料などが変われば、結果も変わります。免税手数料によっては、必ずしも税率が高い国が税金の返金額も多いわけではないこともわかります。
 
海外で購入するには、往復の旅費や滞在費もかかりますし、免税手続きの手間や時間もかかるので、買い物のためだけに行くことは得策ではありませんが、もし休暇で海外へ行く機会がある方は、こうような方法も一つの選択肢として考えてもよいかもしれません。
 

今やシェアする時代へ

時代とともに、価値観も変わってきました。かつては所有することがステータスでもありましたが、現在は所有することよりも、利用するだけでよいという感覚を持つ人が増えてきました。
 
例えば、中古品を街中やネットオークションで購入する、あるいはブランド品を貸し出す店から必要な時だけ一時的に借りるという方法もあります。
 
高級ブランドを持つことの満足感よりも、その時々の時流に合った多様なものを身に着けたり試したりする楽しさを選択する人が増えてきているのかもしれません。
 
流行の移り変わりや人々の嗜好の変わり目のサイクルも早くなっているのかもしれません。だとすれば、海外高級ブランドであっても、じっくり試して増税になっていてもどうしても欲しいと思うようになってから買う、という考え方もあるのではないでしょうか。
 
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
 


 

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