更新日: 2019.07.02 控除
もう1つの医療費控除を活用するべき人とは?~セルフメディケーション税制
これは、平成29年度から新設された、もう1つの医療費控除です。簡単に言うと、対象となっている市販薬の購入金額が一定額を超えると、医療費控除が受けられるという税制です。
従来の医療費控除とセルフメディケーション税制の両方を行うことはできないので、どちらかを選択しなければなりません。あなたはどちらを選択したらよいのでしょうか? それを決めるためにも、その仕組みとポイントをみてみましょう。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。
目次
手軽で小ぶりな医療費控除
従来の医療費控除が年額10万円を超えないと申請できなかったのに対し、セルフメディケーション税制は年額1万2000円以上の市販薬(ただし対象となるもの)を購入すれば、医療費控除を受けることができます。
そういう意味で、従来のものに比べ「手軽な」医療費控除と言えます。ただし、従来の医療費控除の上限額が200万円なのに比べ、セルフメディケーション税制は上限額が8万8000円に定められています。その点からは「小ぶりな」医療費控除ということになります。
セルフメディケーション税制の特長
セルフメディケーション税制の特長と、申請にあたり注意すべき点はどういう点でしょうか?それを理解するためには、従来の医療費控除と比較するのがわかりやすいと思います。
健康の保持増進および、疾病予防の「取組」をしている人でないと申請できない
ここでいう「取組」とは、セルフメディケーション税制対象の年に、会社、健康保険組合、市町村などが実施する、特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診を受けている必要があるということです。また、その「取組」を行ったことを証明する書類を提出しなければいけません。
たいていの人は、これらのいずれかを受けていると思うので、問題ないと思います。
対象の医薬品とは?
対象の医薬品は医療用から転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)で、厚生労働省が認めたものです。具体的な品目については、厚生労働省のウェブサイトに記載されています。
かぜ薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬 、肩こり・腰痛・関節痛の貼付薬など、市販薬としてドラッグストアなどでよく見る商品の名前もあります。
対象薬品のレシートには、製品名の前にマーク(例えば「★」)を付すとともに、当該マークが付いている製品がセルフメディケーション税制対象OTC医薬品であるとの記載(例えば「★印はセルフメディケーション税制対象OTC医薬品」)があります。
医薬品のパッケージには、「セルフメディケーション税制 税控除対象」との識別マークが記されているものもありますが、すべてではないので注意が必要です。
領収書は捨ててはいけない
実際の確定申告には、領収書を添付する必要はありませんが、確定申告から5年以内は税務署から求められれば、提出する義務があります。自分や自分の家族の医療費がどうなっているかを確認する意味からも、領収書の保管を習慣づける必要があります。
まとめ……セルフメディケーション税制を選択する人は?
今までみてきたことを総合すると、従来の医療費控除を選択するか、セルフメディケーション税制を選択するかの判断基準は、次の通りとなります。
(1)通常の医療費が控除額の10万円※2を超えているが、対象医薬品の購入費は1万2000円を超えない人→従来の医療費控除
(2)通常の医療費が控除額の10万円※2を超えないが、対象医薬品の購入費が1万2000円を超える人→セルフメディケーション税制
(3)通常の医療費が控除額の10万円※2を超えており、かつ、対象医薬品の購入費も1万2000円を超える人→超過額が大きい方を申請
※2:10万円または、総所得金額の5%相当額のいずれか低い方の金額
今からでも、遅くありません。確定申告の準備をしましょう。
出典
厚生労働省ウェブサイト セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について
国税庁ウェブサイト No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー