更新日: 2019.01.07 控除

配偶者控除、配偶者特別控除が受けられる基準が変更になります

執筆者 : 黒木達也

配偶者控除、配偶者特別控除が受けられる基準が変更になります
配偶者控除は、生計を一にする配偶者の所得が少ない場合、税額から控除されるもので、2017年までは、配偶者の年間の所得金額が38万円以下だと、38万円の配偶者控除が受けられます。配偶者の所得金額がこれより上がったとしても、一定金額以下であれば、段階的に配偶者特別控除が受けられます。この控除を受けられる所得金額が、2018年の申告分から変更になります。
黒木達也

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

高収入の人は配偶者控除がなくなる

今回大きな変更点もあります。それは、配偶者控除が受けられる主たる生計維持者(夫の場合が多い)の年収額により、配偶者控除や配偶者特別控除が受けられなくなることです。

本人の年間収入金額が1120万円(所得金額900万円)以下で、配偶者の年収が150万円以下であれば、38万円の配偶者控除を受けることができます。それ以上の収入があると、配偶者控除を受けられる金額が26万円、13万円と段階的に減らされ、収入金額が1220万円(所得金額1000万円)を超えると、配偶者控除は全く受けることはできません。

配偶者の所得により控除額が異なる配偶者特別控除についても同様です。生計維持者の収入金額が、1170万円以下、1220万円以下と段階的に控除額が減り、1220万円を超えると、配偶者特別控除額はゼロになります。現在の制度では、生計維持者に収入に関係なく、配偶者控除、配偶者特別控除を受けることができますので、この点が大きく異なります。

課税対象と社会保険への加入条件は現状通り

配偶者控除を受けられる所得金額の上限は変更になりますが、課税対象となる年収103万円と、社会保険に加入が必要となる106万円は変わりません。いわゆる「103万円の壁」と「106万円の壁」はそのまま残ります。

配偶者控除が受けられるからといって、パート労働などの収入が103万円を超えると所得税が課税されます。また106万円を超えると、厚生年金や健康保険など社会保険への加入が求められます。これまでは、パート労働の場合は106万円を超えても、社会保険への加入は任意のケースもありましたが、2016年以降、年収106万円を超えると、社会保険への加入が必要となりました。企業規模の大きな企業は無条件に、中小の企業でも加入を実施するところが増えてきました。

この金額を多少上回る年収になると、所得税、厚生年金保険料、健康保険料などを負担する必要があるため、手取り収入が減ってしまうケースも出てきます。そのため、38万円の配偶者控除が受けられる150万円に近づけるよう、仕事を増やすことも必要になります。また社会保険料はタダ取りされるものではなく、厚生年金保険料は将来受け取れる年金が増える、健康保険料は病気になったときの治療や休業補償に役立つ、とプラス面を考えることも大切です。

もう一つの壁、扶養対象者から外れる

パートで働く場合、もう一つ「130万円の壁」があります。これは配偶者の年収が130万円を超えると、主たる生計維持者の「扶養家族」から外れてしまうことです。実際には支払い手当や課税対象控除額の減額というマイナス面が生まれます。また、パートの仕事を同じ職場でしている場合は、社会保険料を納めることは、将来の年金増額や病気の際の健康保険での治療として還元されますが、パートを掛け持ちして、年間の収入金額が、結果として130万円を超える場合は、生計維持者の扶養家族から外れる一方で、自分の社会保険に加入できない事態になってしまいます。

現在では多くの事業所が「配偶者手当」「家族手当」といった名目で、給与に上乗せした手当を支給しています。専業主婦の働きを評価してきたこれまでの慣行ですが、最近こうした手当を、廃止したり減額したりする事業所が増えています。こうした手当がなくなれば、扶養から外れることのマイナス面も多少減るかもしれません。

働き方や主たる生計維持者の年収などの条件により、得する人、損する人の違いが生まれてくると思われます。税制をよく知り働き方を選択することも必要になります。いずれにせよ、国会の議決を経て実施されます。

ライターさん募集